●小沢氏「不起訴不当」検察審の判断部分全文


 小沢一郎・前民主党幹事長に対する東京第1検察審査会の議決要旨の判断部分全文は次の通り(敬称略)。

(2010年7月15日21時23分 読売新聞) http://p.tl/IgHu


 【証拠関係の検討】

 (1)Aの供述について

 収支報告書への具体的な記載については、担当秘書であったC、Bらが行っており、これに関する被疑者(小沢前幹事長)の関与及び認識の有無・程度も自分には分からない旨供述しているが、陸山会の会計責任者という立場でありながら、その虚偽記載等の事実が発覚した場合に、最悪の場合、代表者の政治生命が絶たれることもあり得ることも併せ考慮すると、秘書らが勝手に処理したというようなことは考えられないことから、その点についてのAの供述は信用できない。

 (2)Cの供述について

 Cは、陸山会の04年分の収支報告書の不記載等の理由、同収支報告書の不記載等について被疑者に報告して了承を得た旨述べており、この供述の信用性は相当高いものと思われる。

 検察官は、党の代表選挙の時期が本件土地の資産計上等を1年繰り延べた理由にはならないなどとして、動機に関するCの供述の信用性に疑念を呈するが、4億円の原資を隠さなければならないと考えたCが、事実関係が表に出ることを少しでも遅くしようと考えるのは不自然ではなく、特に信用性が損なわれるとは思えない。

 また、検察官は、Cが被疑者に対し、どのような場面で了承を得たのか具体的な供述はなく、それに対する被疑者の応答も「おう、分かった」などというものであるから、被疑者がどこまでCの説明を理解していたのかも定かではないと述べて、共謀の状況に関するCの供述の信用性に疑念を呈するが、被疑者とCの上下関係を考えれば、Cとしては、被疑者が理解していることを確かめながら報告をして了承を求めるはずであり、被疑者の返答もそのことを前提にしたものと考えることができる。

 (3)Bの供述について

 Bは、本件被疑事実である07年分の収支報告書について、「先生に返済しました4億円については収支報告書には載せませんので」と報告したところ、被疑者が「そうか、分かった」と答えて了解したことを供述している。Bの立場も、前述したCの立場と全く同じであり、被疑者が理解していることを確かめながら報告をして了承を求めているはずである。

 (4)被疑者が収支報告書提出前に、C及びBから、その原案を示され、説明を受けていたという事実について

 被疑者は否定するが、C及びBは、収支報告書提出前に被疑者に原案を示して説明した旨供述している。「小沢先生の決裁を得た」という以上、被疑者がある程度は内容を理解していることが前提であると考えられるし、被疑者との間の上下関係を考えると、もし理解も得ないまま「決裁を得た」などと言えば、後日被疑者から叱責(しっせき)を受ける可能性があるので、Bらがある程度詳しく内容を説明していることが十分推認できる。

 (5)銀行からの4億円の借り入れに際し、被疑者が融資申込書や約束手形に自署している事実について

 検察官も指摘するとおり、年約450万円という金利負担を伴う経済的に合理性のないこの借り入れの目的は、Cが供述するように原資隠蔽(いんぺい)以外にあり得ないことは、通常人であれば誰しも考えることである。

 加えて、4億円もの大きな金額の借り入れに際して、手形に自ら署名していることについて、何の説明も受けることなく求められるままに書類に署名した、というのも、いかにも不自然である。検察官は、この事情が収支報告書への不記載とどこまで結びつくかについて疑義があるとしているが、今回のケースでは、被疑者が提供している資金について、その原資を隠蔽するという動機があったことは、Cの供述から明らかであり、そのような理由であえて経済的合理性を欠く行為を行っている点において、被疑者も同じ動機を共有したという根拠にはなりうる。

 (6)被疑者事務所にD社から資金提供があったという事実について

 D社関係者は、D社から被疑者事務所に資金提供をした旨供述するところ、その供述は具体的であり、その本人のみしか知り得ない事情も含まれていて、その信ぴょう性はかなり高いものであると言える。

 この資金提供の事実の存否は、一見すると本件の虚偽記載等とは直接結びつくものではないが、4億円の原資を隠蔽する必要性があったことの根拠に十分なりうるものであり、被疑者がCらとの間で動機を共有していることの裏付けになる事情である。

 (7)07年2月の記者会見等について

 被疑者は、07年2月20日、本件土地購入に関し記者会見を開いて釈明したこと、また、同年5月に自ら現金で4億円の返済を受けていることが認められる。

 被疑者が4億円という大金を直接受領しておきながら、その処理手続き等に何らの関心も持たないということは通常は考えられないことである。被疑者が現金4億円の返済を受けたという07年5月といえば、「事務所費」についてマスコミが取り上げて、釈明の記者会見が行われたり、週刊誌の取材があった時期のすぐ後である。このようなタイミングで、問題となった「事務所費」とほぼ近い4億円の現金の処理について、被疑者が無関心でいられるとは考えられない。

 これらの事情は、被疑者が政治資金収支報告書の記載内容について重大な関心を抱かざるをえないことを示しており、その後に作成提出された07年分の収支報告書については、「秘書に任せていた」というそれまでの弁解が一層不自然なものとなることは明らかである。

 【結論】

 (1)以上のとおり、検察官が嫌疑不十分の理由としてあげる事項については、被疑者との上下関係からみて秘書が独断でなしうるとは考えられない事柄であったり、被疑者の置かれた客観的状況と整合しない無関心を示す事柄であると言わざるをえない。このまま不問に付してしまえば、「秘書に任せていた」と言えば済んでしまうのか、という不満が残り、司法手続きに対する信頼を損なうことにもなりかねない。

 (2)当検察審査会としては、検察官の本件不起訴処分は、上記のような見地から再検討されるべきであると考える。その際、特に次の各点について再捜査を求める。

 ア 本件の動機に重大なかかわりがあると思われるD社からの資金提供について、これを否認するCに対する取り調べを含む、更なる追及をすること。

 イ A、C、B、そして被疑者について、自分の行動を記録しているはずの手帳やメモ等の提出を求めて、それに基づいて事実関係の裏付けをとること。

 ウ 被疑者に対する取り調べは、回数もわずか3回であり、調書の内容も「秘書がそんなことを言っているとは信じられない」で終始している感があるなど、追及不足という印象を免れないので、改めて、詳細な取り調べを行うこと。

 (3)これらの再検討、再捜査を経ない限り、検察官の不起訴処分を支持することは到底不可能であり、本件不起訴を不当と考える次第である。

 【最後に】

 当検察審査会が、本件一連の審査を行ってつくづく感じたことは、政治資金規正法は政治家にとって都合のよい、いわゆる抜け道が多くあるということであった。同法第1条に規定される目的によれば、同法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる」ために、係る政治資金の収支の公開等の規正等の措置を講じて、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与することにあるとされているが、それには、政治家自身が、「公開された内容を知らなかった」などと言って責任を免れることを許さない制度を構築すべきである。それを達成するために、例えば、収支報告書を提出する際、宣誓書には、代表者の署名・押印を必要的記載事項とするなどの規定に改正できないかということである。そうすれば、本件のような会計責任者、同補助者と代表者との共謀の有無について問題となるような事案は少なくなるはずである。

 本件の再検討・再捜査が行われて公開の場で事実関係が論じられること自体が、同法をより実効的なものに発展させていく一助になると確信する。

     ◇

 議決中のAは小沢氏の元公設第1秘書で陸山会元会計責任者・大久保隆規被告、Bは同会元事務担当者の池田光智被告、Cは同会元事務担当者で衆院議員の石川知裕被告、D社は水谷建設



●陸山会事件:小沢氏「不起訴不当」 東京第1検察審査会議決要旨

毎日新聞 2010年7月16日 http://bit.ly/dfdq7k


 小沢前幹事長を「不起訴不当」とした東京第1検察審査会の議決要旨は次の通り。

 【証拠関係の検討】

 (1)元会計責任者、大久保隆規被告の供述

 政治資金収支報告書への具体的記載について小沢氏の関与や認識の有無・程度も分からないと供述するが、虚偽記載が発覚して代表者の政治生命が絶たれることもあることも考慮すると秘書らが勝手に処理するとは考えられず、信用できない。

 (2)元私設秘書、石川知裕被告の供述

 04年分の収支報告書の不記載の理由などを小沢氏に報告して了承を得たと述べており信用性は相当に高い。検察官は、党の代表選の時期を理由に本件土地の資産計上を1年繰り延べたとする石川被告の供述に疑念を呈するが、4億円の原資を隠さなければと考えた石川被告が、事実関係が表に出ることを少しでも遅くしようと考えるのは不自然ではない。また検察官は、石川被告がどのような場面で了承を得たのか具体的供述はなく、小沢氏の応答も「おう、分かった」というもので、どこまで説明を理解していたか定かではないと述べ、共謀に関する石川被告供述の信用性に疑念を呈する。しかし2人の上下関係を考えれば石川被告は小沢氏の理解を確かめながら報告して了承を求めるはずで、小沢氏の返答もそのことを前提にしたものと考えられる。

 (3)元私設秘書、池田光智被告の供述

 07年分の収支報告書について「先生に返済しました4億円については収支報告書には載せません」と報告し、小沢氏が「そうか、分かった」と了解したと供述している。池田被告も小沢氏の理解を確かめながら報告し了承を求めているはずだ。

 (4)小沢氏が収支報告書提出前に説明を受けた事実

 石川、池田両被告は収支報告書提出前に小沢氏に原案を示し説明したと供述している。「小沢先生の決裁を得た」という以上、小沢氏がある程度内容を理解していることが前提と考えられる。理解も得ないまま「決裁を得た」と言えば後日しっせきを受ける可能性があり、池田被告らがある程度詳しく説明したと十分推認できる。

 (5)銀行からの4億円借入に際しての融資申込書や約束手形の自署

 検察官指摘の通り、年約450万円の金利を伴う経済的合理性のない借入の目的は、石川被告が供述するように原資隠ぺい以外あり得ない。(小沢氏が)何の説明も受けることなく、求められるままに署名した、というのも不自然だ。検察官はこの事情が不記載とどこまで結びつくか疑義があるとするが、小沢氏が提供した資金について原資を隠ぺいする動機があったことは石川被告の供述から明らか。あえて経済的合理性を欠く行為を行っている点で、小沢氏も同じ動機を共有したという根拠にはなりうる。

 (6)水谷建設の資金提供

 小沢氏の事務所に資金提供したとの水谷建設関係者の供述は具体的で本人しか知り得ない事情も含まれ、信ぴょう性はかなり高い。本件の虚偽記載とは直接結びつかないが、原資を隠ぺいする必要性があったことの根拠に十分なりうるし、小沢氏が石川被告らと動機を共有していることの裏付けになる事情だ。

 (7)記者会見等について

 小沢氏は07年2月20日、土地購入に関し会見し(直後の)07年5月に4億円の返済を受けている。大金を受領しながら処理手続きに関心も持たないというのは考えられない。

 これらは小沢氏が収支報告書記載内容に重大な関心を抱かざるを得ないことを示し、07年分の収支報告書について「秘書に任せていた」という弁解が一層不自然なものとなることは明らかだ。

 【結論】

 (1)検察官が容疑不十分の理由とする事項は、秘書が独断でできるとは考えられない事柄だったり、小沢氏の客観的状況と整合しない無関心を示す事柄だと言わざるをえない。このまま不問にすれば「秘書に任せていた」と言えば済むのかという不満が残り、司法手続きへの信頼を損なうことにもなりかねない。

 (2)不起訴は再検討されるべきで、特に次の再捜査を求める。

ア 動機に重大なかかわりがあると思われる水谷建設の資金提供について、否認する石川被告への取り調べを含む更なる追及をする。

イ 被告らと小沢氏に手帳やメモなどの提出を求め、事実関係の裏付けをとる。

ウ 小沢氏の取り調べはわずか3回で、調書も「秘書がそんなことを言っているとは信じられない」で終始している感があり、追及不足の印象を免れない。改めて詳細な取り調べを行う。

 (3)これらの再検討、再捜査を経ない限り、不起訴処分を支持することは到底不可能だ。

 【最後に】

 審査でつくづく感じたことは、政治資金規正法は政治家に都合のよい抜け道が多い。政治家が「知らなかった」と責任を免れることを許さない制度を構築すべきだ。収支報告書提出の際、宣誓書に代表者の署名・押印を必要とするなどの規定に改正できないか。再捜査によって公開の場で事実関係が論じられることが、同法を実効的なものに発展させる一助になると確信する。


●陸山会事件:07年分、不起訴不当 検察審「小沢氏再聴取を」

(毎日新聞 2010年7月16日)   http://p.tl/eoEY


 ◇「秘書任せ、不自然」 ゼネコン資金提供も言及

 小沢一郎・民主党前幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る政治資金規正法違反事件で、07年分の政治資金収支報告書の虚偽記載容疑について審査していた東京第1検察審査会は15日、小沢氏を不起訴とした東京地検特捜部の処分に対し「不起訴不当」と議決したと公表した。議決は8日付。審査会は「『秘書に任せていた』との小沢氏の弁解は不自然。不問にすれば司法手続きに対する信頼を損なう」と指摘し、特捜部に小沢氏の再聴取などを求めた。

 事件を巡っては4月に第5審査会が04、05年分の虚偽記載容疑について「起訴相当」と議決しており、二つの審査会が検察の判断を否定した。両年分は特捜部が5月に再び不起訴とし、これを受けた同審査会による第2段階の審査で再び「起訴すべきだ」(起訴議決)と判断されれば小沢氏は強制的に起訴される。同審査会の審査員11人中5人の任期が今月末で切れるため、議決時期は8月以降になる公算が大きい。

 一方、不起訴不当の場合は第2段階の審査はなく、07年分の審査はこれで終了した。特捜部は小沢氏に4度目の聴取を要請することも含めて再捜査を検討するが、新たな証拠を得られる可能性は極めて低く、再び不起訴となる見通し。

 議決によると、土地購入の原資となった4億円を07年に小沢氏に返却した元秘書の池田光智被告は「先生に『4億円は収支報告書に載せません』と報告し『そうか、分かった』と了解を得た」と供述。池田元秘書と前任秘書の衆院議員、石川知裕被告は報告書提出前に「先生の決裁を得た」とも供述していた。

 第1審査会は、こうした供述や小沢氏と秘書の上下関係などから「元秘書は小沢氏に収支報告書の内容をある程度詳しく説明していることが十分推認できる」と判断。中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部が小沢事務所に資金提供したと供述した点にも言及し「信ぴょう性はかなり高い。虚偽記載と直接結びつかないが、4億円を隠ぺいする根拠に十分なりうるもので、小沢氏らが虚偽記載の動機を共有していることの裏付けになる」と指摘した。

 そのうえで、特捜部に(1)水谷建設からの資金提供を更に追及する(2)元秘書と小沢氏の手帳やメモの提出を求めて事実関係の裏付けを取る(3)改めて小沢氏の詳細な取り調べを行う--ことを求め、「これらの再捜査を経ない限り不起訴処分を支持することは到底不可能だ」と結論付けた。

 また、政治資金規正法について「政治家が『知らなかった』と責任を免れることを許さない制度を構築すべきだ」として法改正の必要性を訴えた。【三木幸治、鈴木一生、山本将克】

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 ■解説

 ◇規正法改正強く求める
 小沢前幹事長を「不起訴不当」とした第1審査会の議決からは、審査員が小沢氏と元秘書との共謀を強く疑った様子がうかがえる。第5審査会の「起訴相当」と議決は異なるが「秘書に任せていた」との政治家の弁明は許さないという「市民感覚」を鮮明にし、政治家自身の署名・押印を宣誓書の必要事項とするなど規正法の改正も強く求めている。

 07年分の虚偽記載容疑を担当した第1審査会は、土地購入があった04年分の収支報告書提出前に、小沢氏に了承を得たとする石川議員の供述などを重視し、関与を全面的に否定する小沢氏の弁明を「信用できない」と判断した。04、05年分と07年分を一連の事件としてとらえた結果だ。

 土地購入と同じころに「水谷建設」の元幹部が小沢氏の事務所に資金を提供したとされる点にまで言及し、小沢氏本人の虚偽記載の動機を分析した。この点に触れなかった第5審査会より、さらに踏み込んだ判断を示した面もある。

 ただし、検察側は元秘書らの供述を「具体性に乏しい」と消極的に評価しており、議決は証拠の不十分さを推測で補っているようにも見える。小沢氏本人の直接的な関与を示す明確な証拠がないとされる中、小沢氏を元秘書との共謀に問い、強制起訴すべきなのか。今後の第5審査会の判断が注目される。【大場弘行】

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 ■ことば

 ◇陸山会事件
 小沢一郎・民主党前幹事長の資金管理団体「陸山会」が04年、小沢氏からの借入金4億円で土地を購入しながら同年の政治資金収支報告書に記載せず▽05年に土地代を支出したと虚偽記載し▽07年に4億円を小沢氏に返したのに記載せず--など計20億円超の虚偽記載を問われた政治資金規正法違反事件。東京地検特捜部は元私設秘書の石川知裕衆院議員ら3人を起訴したが小沢氏は不起訴となり、別々に申し立てを受けた東京第1検察審査会が07年分を、第5審査会が04、05年分を審査した。



●小沢氏「不起訴不当」と議決 検察審査会、異なる結論

(共同通信 2010/07/15 17:47) http://p.tl/OOv0
 
 小沢一郎民主党前幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件のうち、2007年報告書分を審査していた東京第1検察審査会は15日、政治資金規正法違反の疑いで告発され、2月に不起訴となった小沢氏について「不起訴不当」とする議決を公表した。

 議決は8日付で、「上下関係からみて秘書が独断でなし得るとは考えられない」と指摘。04~05年分を審査した東京第5検察審査会が4月に出した「起訴相当」とは結論は異なるが、小沢氏のこれまでの説明に対する国民の強い不信が反映されたといえそうだ。

 議決はまた、小沢氏らをあらためて聴取するよう求めたが、検察側は「必要な捜査は終わった」としており、近く不起訴とする見通し。小沢氏起訴の可能性があるのは、2回目の議決を控える04、05年分に絞られた。

 議決は、元秘書の衆院議員石川知裕(37)、池田光智(32)両被告=いずれも規正法違反の罪で起訴=が「報告書の提出前に原案を示して説明し、小沢先生の決裁を得た」と供述した点を重視。

 小沢氏事務所側に「裏献金」を提供したとされる水谷建設関係者の供述については「具体的で信ぴょう性はかなり高い」と判断。



●陸山会事件:小沢氏側「起訴相当」出ず安堵

毎日新聞 2010年7月15日 21時53分 http://p.tl/4HWh

 民主党の小沢一郎前幹事長の資金管理団体を巡る事件で、東京第1検察審査会が07年分の収支報告書の虚偽記載容疑について「不起訴不当」と議決したことで、強制起訴につながる「起訴相当」ではなかったことに小沢氏側からは安堵(あんど)の声が漏れている。ただ、焦点は、4月に東京第5検察審査会が小沢氏の強制起訴につながる「起訴相当」を出した別件。今秋にも結論が出ると見られ、政府・民主党内には推移を見守るムードが広がっている。

 小沢氏に近い高嶋良充参院幹事長は、国会内で記者団に「小沢前幹事長は、一つの問題を大きくクリアされたものと思う」と語り、小沢氏が抱える懸案が軽減したとの認識を示した。小沢グループに所属する衆院議員の一人も「(不起訴不当の議決は)小沢氏に風が吹いている」と歓迎した。

 これに対し、菅直人首相は15日夜、首相官邸で「私の立場であれこれコメントすることは控えたい」と述べるにとどめた。枝野幸男幹事長も記者団に「私から申し上げて圧力のようなとらえ方をしたりするのは良くない」と沈黙を守った。

 野党側は与党を揺さぶる。自民党の大島理森幹事長は「参院で野党全体として過半数をいただいたので、そういう所で協議していく方法もある」と述べ、小沢氏を参院で招致することをほのめかした。

 ただ、与野党が注目するのは、小沢氏が強制起訴されるか否かの結論となる東京第5検察審査会の議決。今秋の結論が有力視されているが、9月の党代表選での小沢氏側の行動に影響するからだ。民主党内には「第5検察審査会の結論が出なければ、独自候補は擁立できない」とする声がある一方、「結論が出ないからこそ、小沢氏本人が出馬する」とさまざまな憶測が飛び交っている。【念佛明奈】



●小沢氏の07年分規正法違反容疑「不起訴不当」 検察審

(朝日新聞 2010年7月15日14時48分)  http://p.tl/Gymv


「不起訴不当」の議決要旨を掲示板に張り出す検察審査会事務局の職員=15日午後2時32分、東京・霞が関、山本亮介写す

「不起訴不当」とした東京第一検察審査会の「議決の要旨」=15日午後、東京都千代田区、山本裕之撮影

 小沢一郎・前民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、東京第一検察審査会は、2007年分の政治資金収支報告書をめぐる小沢氏の政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑を不起訴とした東京地検特捜部の処分について「不起訴不当」と議決し、15日に公表した。議決は8日付。

 今回の議決を受けて特捜部は再捜査するが、不起訴の判断を変えないとみられる。

 小沢氏については、04、05年分の同容疑について別の市民で構成される東京第五検察審査会が先に審査し、4月末に「起訴相当」と議決した。2度目の審査で「起訴すべきだ」とする議決(起訴議決)をすれば、裁判所が指定した弁護士によって強制的に起訴されるが、07年分は1度目が「不起訴不当」にとどまったため、こうした手続きにはならない。

 小沢氏が市民団体により告発されていたのは、陸山会が04年に約3億5千万円の宅地を購入した際に原資となった小沢氏からの借入金4億円を07年に返済した事実を記載せず、登記も05年にずらすなどした一連の容疑。

 04、05年分と07年分に分けて告発があったため、特捜部もそれぞれ判断し、いずれも小沢氏を不起訴とした。審査会への申し立ても07年分は04、05年分より遅かったため、別々の審査会が担当することになった。



●「政治とカネ」に厳しい視線 東京第1検察審、規正法も批判

(日経新聞 2010/7/15 21:15)  http://p.tl/eW3a


 政権与党の実力者を不起訴処分とした東京地検特捜部に対し、市民の代表が再び「ノー」を突きつけた。資金管理団体「陸山会」の2007年分の政治資金収支報告書をめぐる虚偽記入容疑で刑事告発された民主党の小沢一郎前幹事長について、東京第1検察審査会は「不起訴不当」と議決。検察側に小沢氏らの再聴取を求めたうえ、政治資金規正法も強く批判した。政治とカネへの厳しい視線が背景にある。

 「虚偽記入の事実が発覚した場合、小沢氏の政治生命が絶たれることもあり得る。秘書らが勝手に処理したとは考えられない」

 今回の07年分の審査でも、焦点になったのは衆院議員の石川知裕被告(37)ら小沢氏の元秘書3人の供述。第1検察審は議決で、「先生に返済した4億円については収支報告書に載せません」と報告した元秘書に対し小沢氏が「そうか、分かった」と答えたという証言などを取り上げ、「小沢氏との上下関係を考えれば、ある程度詳しく内容を説明したと推認できる」と結論づけた。

 検察側が不起訴としたのは、こうした供述だけでは積極的な関与が認められず、小沢氏の刑事責任を問えないとの判断がある。これに対し、市民らは元秘書の供述を重視し、不起訴は不当と判断したとみられる。

 今回の議決で異例なのは、検察の再捜査のポイントを具体的に列挙したことだ。

 (1)本件の動機に重大なかかわりがあると思われる建設会社からの資金提供について、さらに追及する(2)小沢氏や元秘書に手帳やメモなどの提出を求め事実関係の裏付けを取る(3)小沢氏の聴取はわずか3回で追及不足という印象なので、改めて詳細な取り調べを行う――などを検察側に要求している。

 事件は、西松建設を巡る一連の事件が端緒だった。08年6月の強制捜査以来、約2年。小沢事務所や元秘書の関係先の捜索、通帳など証拠品の分析、小沢氏本人らの聴取などを重ねた検察側は捜査は終えたとの立場を崩していない。ある検察幹部は「捜査が不足している部分があれば再捜査するが、指摘された部分は十分、捜査したのでは」と話す。

 「審査を行ってつくづく感じたことは、政治資金規正法は政治家にとって都合のよい、いわゆる抜け道が多くある」。議決書は最後に、政治資金規正法そのものの問題点を付言した。

 「政治家自身が『公開された内容を知らなかった』と言って責任を免れることを許さない制度を構築すべきだ」とし、収支報告書の提出時に、宣誓書に代表者の署名・押印を必要とする規定に改正すべきだと法改正の具体案まで提示した。

 今年4月に鳩山由紀夫前首相を「不起訴相当」と議決した東京第4検察審査会も同様に法改正に言及しており、後を絶たない「政治とカネ」事件を巡る市民のいら立ちが垣間見えてくる。

 同法は「政治とカネ」を巡る事件が発覚するたび、献金額の制限といった改正が行われてきた。小沢・鳩山両氏の「政治とカネ」が問題化して以降、国会では与野党ともに議論は停滞。企業・団体献金の禁止や、政治家本人の監督責任を強化する法整備については議論が深まっていない。