●首相:八方ふさがり…会えぬ小沢氏、県連も批判、議長交代
毎日新聞 2010年7月15日 10時43分) http://p.tl/oyzA

総評会館の玄関で連合関係者の出迎えを受ける菅直人首相(右)=東京都千代田区で2010年7月14日午後2時16分、武市公孝撮影 続投に向けた環境を整えようと動く菅直人首相。14日に会ったのは、内閣特別顧問を兼務する稲盛和夫日航会長と連合の古賀伸明会長だった。いずれも民主党の小沢一郎前幹事長とパイプがある人物だ。

 「大変重い選挙を連合のみなさんにさせることになり、申し訳なかった」

 午後、連合本部に足を運んだ首相は、自らの消費税発言が混乱を招いたことを古賀氏に陳謝し、他党との連立について「そんなに簡単ではない」と弱気を見せた。

 これに先立ち、首相は「大至急会いたい」と稲盛氏を呼び出し、「小沢さんと会える日時が決まっていない」と漏らした。14日夕、首相は記者団に、小沢氏と会えたらおわびをしたい、との考えを示している。稲盛、古賀両氏との会談には、反執行部的な言動を隠さない小沢氏に、「反省」が伝わることを期待する意図もあったようだ。

 それでも、小沢氏への秋波は首相の片思いにとどまっている。民主党の松木謙公国対筆頭副委員長は14日のBS11の収録で、9月の党代表選について「(菅首相と)戦いたい。小沢氏に出てもらいたい」と語った。首相周辺はこの日夜、「小沢さんにひよったら支持率が下がる。ひよってはいけない」と述べ、小沢氏との関係修復を図ろうとする首相の姿勢を懸念した。

 そうした中、民主党執行部は14日、地方組織の「ガス抜き」を狙って党本部に各都道府県連代表を呼び、意見聴取を始めた。

 しかし、執行部批判は初日から噴出した。枝野幸男幹事長、安住淳選対委員長と向き合った、小沢氏に近い石川県連の一川保夫代表は「(首相が小沢氏に)静かにしとれと言い、同時に民主党に期待していた人も静かになってしまった」と党執行部の「脱小沢」方針を強烈に皮肉った。

 高知県連の武内則男代表からは「首相の消費税発言で非常に苦労した」と詰問され、安住氏が「統一的な事前の準備がないまま選挙戦に突入してしまった」と謝る場面もあった。会談後、武内氏は記者団に「(執行部は)自浄能力を含めてしっかりとけじめをつけていただきたい」と息巻いた。

 参院選では首相の消費税発言が「1人区」を直撃した。地方の不満は直接首相に向かう。14日の党政調役員会では、副会長の平野達男参院議員(岩手選挙区)が「マニフェストの修正が信任されたのか」と突き上げ、政調でも「参院選大敗」を総括することが決まった。

 政権の弱体ぶりは参院議長人事にも表れた。民主党は、江田五月参院議長を交代させる。6月の通常国会で菅首相の問責決議案などを処理せず閉会した江田氏に野党の不満が募っているためだ。が、あの手この手の野党への連携呼びかけはまだ功を奏していない。【野口武則、影山哲也】

 

◇ソマリア派遣 なし崩し延長
 選挙総括と野党連携模索に追われる政府・民主党。その陰で安保問題の重要な決定が立て続けに行われた。

 「民主党の立場が変化したと受け取られないようにすべきだ」。14日、民主党政策調査会の会合。23日に期限切れとなるアフリカ・ソマリア沖での海上自衛隊による海賊対策の活動1年延長問題の審査ではこんな声も出たが、反対意見はなく了承。昨年6月に成立した海賊対処法審議を巡る自民党との対決姿勢は姿を消していた。

 同法は、武器使用基準を緩和して接近する海賊船への危害射撃を可能とする内容。野党だった民主党は「海上保安庁の活動を主体とすべきだ」と主張。修正協議も決裂し、反対に回っていた。山口壮政調副会長は終了後、海保の活用について「派遣できる船がなく難しい」と指摘。当時の民主党案の不備を認めた。

 民主党は昨年8月の衆院選直前に容認に転じていた。米国を含む民間船に対する海賊の攻撃が多発する中、「原則論」にこだわれば国際的な非難を浴びるのは明らか。政権交代後の同10月の部隊交代時には「海賊対処の重要性は揺るぎない」と、なし崩し的に旧自公政権の方針を追認。方針転換に対する明確な説明はいまだにない。

 日本政府がスーダンに陸上自衛隊ヘリを派遣せず--。13日、国連スーダン派遣団(UNMIS)はホームページにAFP通信の短信記事を掲載した。「大変残念だ」。外務省幹部は14日、落胆の表情を浮かべた。

 任務は、スーダン南部の独立を問う来年1月の住民投票の際、投票箱や選挙監視団を輸送・移送する内容。住民投票は「豊富な天然資源を持つ南部と、北部の内戦を終結させた05年和平合意の支柱」とされる。

 国連からの打診に加え、ダルフール問題への批判を強める米国も派遣を期待。民主党は「積極的な国際貢献」を掲げ、外務省は「スーダンに国際的な注目が集まっており、日本の貢献をアピールできる」と派遣に前向きだったが、菅政権は13日、見送りを決めた。防衛省が準備期間不足や多額の費用などを理由に反対。治安状況から「物理的な妨害活動」なども想定し、「安全地帯」間の輸送であっても、不測の事態を懸念した結果だった。

 野党・自民党は「十分な武器使用ができないまま、ヘリが不時着したらどうするのか」(参院議員)と国会で追及する構えを見せていた。防衛省関係者は「民主党が参院選で負けた瞬間、派遣はなくなった」と語った。

 参院選大敗で「ねじれ国会」に陥る中、海賊対策とスーダンPKOでの対応からは、安保問題で自民党との対立は避けたいとの思惑が見え隠れし、安保論議は後退感がにじむ。【吉永康朗、大貫智子】




●首相、国家戦略室の役割縮小へ 司令塔から提言機関に

(共同通信2010/07/15 20:42)     http://p.tl/FCDO

 

菅直人首相は15日、国家戦略室の役割から府省間の政策調整を外し、首相に政策提言や情報提供を行うブレーン機能に特化させる方針を固めた。政策面で首相を支援する態勢の強化が目的だが、政権運営の司令塔と位置付けてきた首相直属機関の役割縮小は、政治主導の後退につながる懸念もある。

 この方針に沿い、2011年度予算編成の調整は仙谷由人官房長官と野田佳彦財務相、玄葉光一郎民主党政調会長の3人に任され、荒井聡国家戦略担当相は協議メンバーから外れた。

 新しい戦略室は、英内閣の首相助言機関「ポリシーユニット」がモデル。民間登用も含めた約40人のスタッフが、首相指示に従い、少人数の「ユニット」を形成して提言を策定する。外交や安全保障分野も担う方向だ。

 国家戦略室を「局」に格上げする政治主導確立関連法案が参院選大敗により成立が困難な状況になったことも、戦略室の在り方見直しの背景にあるとみられる。政府は同法案修正も検討する。