早期解散なら自民惨敗 (日刊ゲンダイ2010/7/26)
カネも票も不安だらけ

参院選で勝利した自民党は、早速、次期衆院選に向け、公認の決まっていない98の空白区の候補者を公募で決める方針を打ち出した。早期解散も求めている。だが、谷垣執行部は内心ヒヤヒヤだ。参院選の結果を冷静に分析すると、むしろ党勢衰退がハッキリしてきたからだ。
自民党を改選第1党に押し上げたのは、選挙区で39議席獲得したことが大きい。特に1人区は21勝8敗と大勝した。しかし、得票数の合計は1949万票で、民主党の2275万票より326万票も少なかった。民主党に大惨敗した3年前と比べても、自民党の得票数は89万票増えただけ。前回より得票数を減らした選挙区は、埼玉、千葉など15都府県にも上っている。
さらに自民党執行部に衝撃を与えたのは、衆院選の議席予測だ。読売新聞のシミュレーションによれば、参院選の得票を衆院選の小選挙区に落とし込むと、ナント民主265議席、自民148議席となり、民主党が過半数(241議席)を楽々クリアするというのだ。
特に300の小選挙区については、民主党が3分の2近い197議席を獲得し、自民党は97議席。北海道、岩手、東京、長野、静岡、愛知、滋賀、京都、兵庫、奈良、岡山、高知、大分の13都道府県で民主党が議席を独占するという結果になった。
「自民党にはカネの不安も追い打ちをかけます。参院選で議席が増えたとはいえ、直前の離党者を差し引くと議員数は政党交付金の算定基準日(今年1月1日)と同じ。得票率が減ったことで、交付金は1億円以上減らされることになりました。野党では献金が増えるわけもありません。銀行からの借入残高が100億円超あり、大幅な追加融資も期待薄です」(自民党関係者)
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「統一地方選が来年に控えているため、地方議員が自分の選挙のように運動したことで自民党の議席が伸びただけ。これを今の自民党の実力と考えると間違えます。そのうえ、数で勝利したため、執行部刷新が難しくなりました。9月の人事で谷垣総裁が三役全員を本当に交代させられるのかどうか」
早期解散で奈落の底に突き落とされるのは自民党だ。