政界と暴力団の腐れ縁こそ問題 (日刊ゲンダイ2010/7/26)

今更「暴力団退治」をいうなかれ


野球賭博に端を発した相撲世界と暴力団との癒着構図が、次から次へと表面化。これを受け、日本相撲協会の組織改革を進める独立委員会が、暴力団排除対策に取り組み、メディアも大々的に報じている。政府も「国技といわれる相撲界に、暴力団が付け入っているのを許してはならない」(中井洽国家公安委員長)と、暴力団排除への取り組みをアピール。「マル暴退治」キャンペーンが繰り広げられている。
それ自体にケチをつけるつもりはないが、クールな有権者、識者からすれば「何を今更」というのがホンネだろう。ついでに言えば、「暴力団との癒着は相撲だけじゃないだろう。政界、財界、警察権力はどうなんだ」といった冷めた声も聞かれる。相撲界の問題は氷山の一角でしかないというのである。
実際、権力構造そのものが、ヤクザや暴力団組織と長年にわたってくっついてきたのは周知の事実である。
「敗戦直後の闇市時代の治安維持で、警察当局が地回りのヤクザの力を借りたのは有名な話です。戦後政治の舞台裏では、大物フィクサーが政界とヤクザ世界の仲介役を務め、資金工作にあたったりした。60年安保の際にも、体制維持のためにフィクサーが暗躍したといわれています。象徴的なのは、竹下(元首相)ほめ殺し事件をめぐり、腹心の金丸(元副総裁)が経済人を介して暴力団トップに、活動団体との仲介を頼んだ一件でしょう。これが功を奏したのか、ほめ殺しはやみ、竹下は総理になったが、その過程でマル暴の介在があったのです」(政界関係者)
地方レベルでも政治・行政とマル暴との癒着関係は日常的だ。
「いちばん分かりやすいのが、公共事業と建設業者と暴力団の三角関係です。平成21年に、政府の犯罪対策閣僚会議で“あらゆる公共事業等からの暴力団排除”の推進を確認しました。つまり、いまだに暴力団の関与がなくなっていないことの裏返し。選挙協力と公共事業関与がリンクしているのは常識です。

大阪では、マル暴系企業からの自民党支部への政治献金が問題化したこともあります」(前出の関係者)
こうした構造的な問題にメスを入れないで、相撲協会のことばかり騒いでもナンセンスだ。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「戦後60年間以上、この国では政官財それぞれが、ヤクザ組織を都合よく利用して権力を保持してきました。警察当局のゆるい対策の中で、保守勢力・旧体制の防衛組織として使ってきた。その見返りに仕事やカネを回してきたのでしょう。その根本にメスを入れないで、相撲協会の一件で騒いでいるのは国民向けのポーズでしかない。本当の問題解決にはつながりません」
元凶=政界とマル暴の腐れ縁に手をつけないで、いくらキレイ事を言おうが何の説得力もない。