千葉法相が立ち会った死刑執行の一部始終  (日刊ゲンダイ 2010/7/29)

刑務官が押すボタンは3つ

どういう心境の変化があったのか。死刑廃止論者の千葉景子法相が、死刑囚2人の刑を執行した。
きのう(28日)、緊急記者会見を開いた千葉は「自らが命令した執行でございますので、きちっと見届けることも責任だと考え、本日の執行に立ち会ってまいりました」と語り、報道陣を仰天させた。
戦前から行刑密行主義を貫いている日本では、死刑執行の実態について、ほとんど情報公開されていない。関係者以外で刑場に入ったことがあるのは、国会議員の視察団くらいだ。

「絞首刑」などの著書があり、死刑執行に詳しいジャーナリストの青木理氏が言う。
「先進国で死刑制度があるのは日本とアメリカの一部の州だけですが、アメリカではジャーナリストや被害者の家族らが執行に立ち会うことができる。日本の死刑は、家族の立ち会いも認められず、徹底した秘密主義の下で行われています。法律上、死刑執行には検察官と拘置所長(または代理人)が立ち会わなければなりませんが、そのための専用スペースがある。おそらく千葉法相も、そこで一部始終を見届けたのでしょう」

日本の死刑は絞首刑だ。執行される刑場は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の全国7カ所にある。
「東京拘置所の場合、刑場は、鬼門である丑寅の方角(北東)にあります。刑場の手前の部屋には祭壇があり、死刑囚はそこで宗教的儀式を行った後、目隠しをされて、アコーディオンカーテンで仕切られた奥の部屋へ連行される。床は平らで、いわゆる“13階段”はありません。祭壇部分を含めれば、部屋の広さは15畳以上。刑務官がボタンを押すと足元の床が開き、ロープを首にかけられたまま体が落ちる。執行ボタンは必ず複数の刑務官が同時に押し、誰が当たったか分からないようになっています。東京拘置所の場合は3人。死刑は午前中に執行するのが慣例で、1件につき1時間くらいかかるといわれています」 (青木理氏)

執行に関わる刑務官には、当日朝か前日の夜に知らされる。死刑執行が終わると、その日の勤務は終了。とても通常業務を続けられるような精神状態ではないからだ。

死刑執行に立ち会った千葉は、法務省内に死刑制度の勉強会を設置し、東京拘置所内の刑場をマスコミに公開することを指示したという。もっとも、信念を貫けなかった死刑廃止論者が、、どれだけ勉強会に影響力を発揮できるかは分からない。