どうする菅首相!?米国で盛り上がる在沖海兵隊不要論  (日刊ゲンダイ 2010/7/29)

水面下では裏切り妥協案進行中

ヨレヨレの菅政権にとって、大きな時限爆弾が普天間移設問題だ。鳩山前首相の辞任で決着したわけでなく、8月末までに日米の専門家による検討作業を終え、今秋には最終決着を迫られる。基本方針は辺野古案への逆戻りだが、9月には名護市長選、11月には沖縄県知事選を控えるだけに地元無視の決着を強行すれば、大荒れになる。菅は頭を抱えているだろうが、そんな中、米国では海兵隊の役割を見直す議論が出てきた。日本の大手メディアはほとんど報じていないが、米民主党の重鎮が「沖縄に海兵隊は不要」と言い出したのである。
きっかけは米民主党のバーニー・フランク下院歳出委員長が今月6日にネットに寄稿した論文だ。この中で同氏は、「米国が世界の警察だという見解は冷戦の遺物であり、時代遅れだ。沖縄に海兵隊がいる必要はない」と断じたのだ。
論文は大きな反響を呼び、ウォールストリート・ジャーナル紙は「普天間の県外国外移設を望む沖縄に強力な助っ人が現れた」と報じた。

フランク氏はラジオでもこう言っている。
「1万5000人の在沖縄海兵隊が中国に上陸し何百万もの中国軍と戦うなんて誰も思っていない」
沖縄の海兵隊は東アジアの軍事的緊張の「抑止力」であるという『前提』はあっさり、ひっくり返されたのである。
これを受けて、民主党の斎藤勁衆院議員が今月23日、フランク議員に面会した。会談を取材した琉球新報によると、フランク氏は改めて「沖縄に海兵隊を置かなければならないという先入観にとらわれるべきではない」と語ったという。
だとすれば、今こそ、菅政権は普天間問題の根本的解決に取り組むべきではないか。県外、海外移転は十分、可能なのだ。それなのに今、民主党と米国の間では別の妥協案が話し合われている。
「ズバリ、普天間だけでなく嘉手納基地も返還。その代わりにキャンプシュワブに大きな代替基地を造る。V字滑走路ではなく1本です。しかし、幅や長さを大きくする。鹿児島県種子島沖の馬毛島にも施設を造る。この線で話し合いが進んでいます。米軍は2014年までに完了予定だった在沖縄海兵隊のグアム移転を断念した。時間的余裕ができましたが、日本との決着は急いでいる。これ以上の混乱、先延ばしはたまらないと考えているからでしょう」(米軍関係者)

果たして、この案で沖縄県民が納得するのかどうか。海兵隊不要論が盛り上がっているのに、小手先の妥協案で沖縄に基地を固定化させるのは最悪だ。基地問題の対応が民主党代表選の争点になる可能性もささやかれている。