●菅首相の記者会見要旨 

(共同通信 2010/07/30 19:52) http://p.tl/n_yF


 菅直人首相の記者会見要旨は次の通り。

 【財政再建】参院選の結果は厳しいものだった。唐突と受け止められた私の消費税発言が大きく影響したものと思って反省している。しかし財政再建は誰が首相であろうが、どの政党が政権を担当しようが避けて通れない課題だ。これからもしっかり取り組む。まずは民主党の考え方を政策調査会中心にまとめる。その上で超党派の話し合いの場の可能性があるのか検討したい。

 【議員定数】国会議員が自ら身を切ることが必要だ。衆院定数80、参院定数40を削減する方針に沿って8月中に民主党内の意見をまとめ、12月までに与野党で合意してもらいたい。枝野幸男幹事長と輿石東参院議員会長に30日朝、指示した。

 【国会対応】「ねじれ国会」がスタートした。困難を伴う政策であっても与野党が合意すれば実行可能になると前向きに受け止めたい。長期の経済低迷、膨大な財政赤字、不安な社会保障の現状は1998年の金融危機に勝るとも劣らない国難と言える状況だ。国民のために役立つ政策であれば、真摯に耳を傾け、合意できればしっかり取り組む。

 【衆院解散】野党が反対すれば法案は通らないが、野党も国民のことを考えて行動する。合意できる部分は必ず生まれる。解散は全く考えていない。

 【雇用と成長】予算編成では雇用と成長を重視したい。雇用が拡大し、経済成長に資すれば子育て、広い意味での社会保障の充実につながる。地方の疲弊が言われているが、林業を再生することで雇用拡大につなげたい。

 【代表選】党員の支持をいただければ代表、首相として今日言ったことに取り組みたい。(小沢一郎前幹事長の処遇に関し)代表選後のことまで今の段階でこうしたいと言うのは早すぎる。

 【原爆慰霊式】私は8月6日の広島、9日の長崎の式典に出席する。あいさつに(核なき世界に向けた)中身をぜひ盛り込んでいきたい。



●【菅首相会見詳報】「財政再建にしっかり取り組む」

(産経ニュース 2010.7.30 18:23) http://p.tl/jZRm

 会見の詳報は以下の通り。

冒頭発言

 「参議院選挙が終わりまして、今日から臨時国会が始まりました。この機会に、私の方からこれまでの参議院の結果、さらには政権交代から約1年間を振り返りながら、今後、菅政権として取り組んでいこうとしている、その方向について、国民に皆さんにぜひ、お話を聞いていただきたいと、そういう思いでこの記者会見をセットさせていただきました。まず、先の参議院選挙でご支援をいただいた多くの国民の皆さんに心からお礼を申しあげます。民主党として参議院選挙の結果は、かなり厳しいものでございました。私の唐突として受け止められた消費税発言が、大きく影響したものと思って、反省をしております。しかし、同時に、財政再建という課題は、どなたが総理大臣であろうが、どの政党が政権を担当しようが、避けて通れない大きな課題でありますので、私もこれからも財政再建について、しっかりと取り組んでいきたい。改めてその決意を申し上げておきたいと思います」

 「政権交代から約1年が経過をいたしました。この1年で、日本の政治は大きく変わりました。たとえば、私が14年前、厚生大臣をやったころの閣議は、ほとんどの発言は事前に文書になっていて、各大臣がその文書を読み上げることで閣議、閣僚懇が終了し、30分程度で終わるのが常でありました。しかし、今の閣議は、閣僚同士がかんかんがくがくの議論を交わすこともしばしばあり、時間が1時間を超えることもまれではありません。そしてその中で、実質的な内閣の方針がきまっているわけであります」

「また、各省庁のあり方も大きく変わりました。かつては、1人の大臣の周りに事務次官以下の多くの官僚がその大臣を取り囲んで、すべてのおぜん立てをした上で最終的な判断を大臣にお願いするというかたちでありました。現在の各省庁は、大臣だけでなく、副大臣、政務官という政務三役のチームがその省の運営のリーダーシップをとっているわけであります。その上で、専門的な知識・経験を有する官僚の皆さんとのある意味での協力関係も次第にそれぞれの省庁で定着をしてきております。さらに、私の内閣になって、改めて政調、政策調査会を復活させ、そして政調会長にお願いをした玄葉(光一郎)大臣、玄葉さんに内閣の一員、大臣にもなっていただきました」

 「これは以前から私が構想として温めていたかたちでありまして、このことによって縦割りの役所の政策に対して、国民の声を直接聞く党の意見をもって、それに対して内閣との間での政策調整を行う。党と内閣の間での政策調整を行う、政調会長におこなっていただく。このことが、スタートをしているところでございます。そういった意味で、官房長官に内閣の中での政策調整、党と内閣の間は政調会長、その上に総理大臣である私が位置することによって、最終的な政策判断は私の責任でおこなわせていただく。そういう体制がすでに動き出しているところでございます」

 「また、国家戦略室については、総理に直接、意見具申をするシンクタンクとしての機能を、強化していただきました。これは、各省庁が総理大臣にいろいろな意見や情報をあげてくるときにはどうしてもその役所がやりたいことに沿った情報で、それに矛盾する情報はなかなか上がってきません。そういったことに対して、縦割りの役所とは違う立場から、総理大臣として知っておくべきこと、考えなければならないことを国家戦略室にしっかりと収集し、総理に伝達していただく。より重要な仕事をお願いをしていると、このように考えております」

 「さて、いよいよ本格的な予算編成の時期にさしかかってまいりました。昨年は9月の政権交代、12月の予算編成でありましたので、大変、時間的に制約がありましたが、今回はそういう意味では初めての本格的予算編成といっても、民主党にとっては、そういえると思います。まずこの予算編成でやらなければならないことは無駄の削減、その実行であります。この間、国民注視の下で行われた事業仕分けが大きな効果を発揮をしておりますが、さらに特別会計を含む事業仕分けにしっかりと取り組んでいただきたいと。このように思っております。加えて、国会議員自身が身を切ることも必要だと思います。衆議院の定数を80、参議院の定数を40削減をするという、この方針に沿って、8月中に党内の意見を取りまとめてほしい。そして、12月までには与野党で合意を図ってもらいたい。きょう朝、枝野幹事長と参議院の会長、輿石さんにそのことを指示をさせていただきました」

 「そして、予算編成では雇用と成長を重視をしていきたいと思います。先日、都内で事業所が行っている保育園を視察をしてまいりました。会社勤めの方が、会社のそばにある保育園に預けられるのは大変、ありがたいけれども、本当は地域の中にそういうものがあって、会社が遅くなっても、最後まで預かってもらえる所があれば、本当はそのほうが望ましい。こういう意見をお母さん方から聞きました。また、働いておられる保育士さんからはパートのような形で短い時間でも働きたいんだけれども、どうしても長時間の勤務だけの採用では、働ける人が少なくなる。このような声も聞きました」

 「こういうニーズをしっかりとまとめて制度化すれば、働いているお母さんにとっても、2人、3人という子供を育てながら仕事ができますし、また、多くの資格をもって、働いておられない、保育士の皆さんにも雇用の機会が拡大します。つまりは雇用が拡大し、経済の成長にも資すると同時に、子育て、広い意味での社会保障の充実にもつながってくるわけであります。同時に若い人たちの雇用の拡大、また、介護や医療の分野のイノベーション、そして環境の問題、こういった分野にも雇用の機会を多く見いだすことができると思います。さらには今、大きなスピードで発展しているアジアの国々の成長を、インフラの工事などのお手伝いなどを含めてですね、日本の成長につなげるための政策努力を、全力をあげてやっていきたい、このように考えているところであります」

 「さらには地方の疲弊というものがいわれております。私は林業を再生することで、地方における雇用の拡大につなげていきたい。この数年間、林業の現場を数多く見てまいりました。今、日本の国土の7割は山に覆われておりますけれども、実は日本で使われている材木の8割までもが、外国からの輸入である。この現実を、ご存じの方はそう多くはないんではないでしょうか。なぜ、こんなことになっているのか、それは山の中にハーベスターといった機械を入れるための作業道がないために、私の見たドイツに比べて効率が10分の1から20分の1という、そういう効率しか、林業が、効率が上がっていないからであります」

 「こういった地域に、作業道を造ることは、地方において少なくなっている公共事業に、ある意味では変わる事業転換にもつながりますし、また、林業が再生されれば、直接的な雇用だけではなく、そこで伐採された材木を加工するといった、そういう仕事も発生して、地方に、地域に雇用が生まれることになるわけであります。こういった中で、今回の予算編成では、元気な日本を復活する特別枠というものを設けることにいたしました」

 「そして、同時に、政策コンテストも行うことにいたしました。つまりは、国民の皆さんにいろいろな提案のある政策を提示をして、どの政策が最も国民の皆さんにとって望ましいと思われますかと、そういったかたちでの国民に開かれた政策決定、予算決定を、トライしてみたい。このように考えているところであります」


「新しい日本の建設に全力」

「さて、いよいよ今日から始まりました国会、参議院における与野党逆転、いわゆる『ねじれ国会』としてスタートしました。私はこの『ねじれ国会』というのをマイナスとしてばかりとらえるのではなくて、与野党が合意をしなければ、法案が通らない、政策が実行できないということは、逆に言えば、与野党が合意する政策は、かなり困難を伴う政策であっても、その実行が可能になると前向きに受け止めたいと思っております」

 「1998年、当時、自民党が参議院で過半数を失い、ねじれ国会となりました。そのときには、長銀、日債銀が破綻(はたん)寸前の金融国会といわれたときであります。当時の野党であった民主党はそうした事態にあたって、銀行の一時国有化を含む、金融再生法を提案をいたしました。それに対して、当時の小渕(恵三)総理はそれを丸飲みする、その形で法案を成立させ、日本発金融恐慌をストップさせることができたわけであります。当時、私は民主党の代表でありました。そうした国難においては、政局よりも国民のまさに生活こそが重視されなければならない、こういう思いで政局を重視するのではなく、そうした国難を回避することに念頭、それを頭に入れて行動したつもりであります」

「どうか、野党のみなさんにもお願いをしたいと思います。今、日本が置かれている長期の経済の低迷、そして膨大な財政赤字、そして不安な社会保障の現状、いずれもそうして金融危機に勝るとも劣らない大変な国難とも言える状況であります。どうか野党のみなさんにも、国民のために役立つ政策であれば、私たちも真摯(しんし)に耳を傾け謙虚にお話を聞いて、そして合意ができたものはしっかりと取り組んでいきたいとこのように考えているところであります」

 「最後に、総理大臣に就任した最初の記者会見で『最小不幸社会』という言葉を申し上げ、政治の役割はそこにあるということを申し上げました。つまり、幸福には個人個人いろいろなかたちがあるから、『これがあなたの幸福ですよ』と押しつけることを政治家が行うべきでない。しかし、不幸になる原因、貧困とか、あるいは暴力とかそういうものから人々を守っていくこと、そのことが政治の役目であろうと、このことを申し上げたことであります。近年、多くの人々が、家族や地域や、場合によっては職場の仲間といったそういうつながりが薄れて、孤立化し、幸せを感じることができない生活を送っておられます。強い人たちだけが自由だと、そういう社会であってはなりません。そういった意味で私は、すべての人々が居場所がある、出番のある社会を目指していきたい、このように考えております」

 「そして、20年にもわたる日本の経済を含む低迷、閉塞(へいそく)感、これを打ち破るため、私自身自分の持っているすべての力を発揮して、新しい日本の建設のために全力を挙げてまいりたいとこのように考えております。どうか、国民の皆さんのご理解とご支援を心からお願い申し上げ、記者会見冒頭のあいさつとさせていただきます。どうも、ご静聴ありがとうございました」


「解散は考えていない」

■衆院解散は考えていない

 --昨日の民主党両院議員総会で代表選への出馬意向を示したが、何を掲げて再選を訴えるのか。再選した場合は内閣改造党、役員人事を行う考えはあるか

 「今、冒頭申し上げたこの内閣として取り組んでいきたい、そのことをですね、実行するためには9月においても党員のみなさんの支持をいただければですね、代表としてあるいは総理として今日申し上げたこと取り組んでいきたい、このように思っております。まあ人事などについてはまだ、今、国会が始まったばかりでありまして、この国会で全力を挙げて、私たちのやるべきことを国民のみなさんに伝え、そしてそれの理解をいただくことに専念をしてまずはまいりたいと思います」

 --国会運営で具体的にどのように野党の協力を取りつける考えか。消費税引き上げに向けて解散し、国民の真意を問うこともあり得ると話していた。解散や国会が膠着(こうちゃく)した場合の自身の進退はどうするのか

 「まず、『ねじれ国会』への対応は先ほども申し上げましたけれども、やはり丁寧な国会での審議、あるいは議論がまず大前提だと思っております。その中で、野党のみなさんがすべて反対されればもちろん法案は通らないわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように野党のみなさんもやはり、国民のみなさんのことを考えて行動されると思いますので、私は合意できる部分は必ず生まれてくる、このように思っております。まあ、解散といったことについてはまったく考えておりません」

--「ねじれ国会」の対応について、子ども手当や農家の戸別所得補償といった野党側との対決法案はどう対応するのか

 「基本的には今申し上げたことと同じです。ええ、子ども手当について、これから1万3000円の上乗せのところをどういう形で行うかという議論をしなければなりませんが、まあ、例えばこの法案は成立の時点では、公明党のみなさんにも賛成をいただいている。そういった経緯も含めながらですね、他の野党のみなさんの中で、どういう形であれば、ある意味で前向きな結論が出て賛成をいただけるのか、まあ一つ一つの案件ごとに丁寧に説明をし、議論をしていきたいとこう思っています」

  

■ルース米大使の出席歓迎

 --ニコニコ動画です。国民から質問がきております。お答えいただけますでしょうか

 「どうぞあなたの質問として、あの」

 --はい、ありがとうございます。広島市で8月6日に開かれる原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)にルース駐日米大使が出席する見通しだ。こうした機会を通して首相ご自身が核なき世界に向けたメッセージを発信する考えはあるか

 「6日の広島、9日の長崎の式典にも私も出席を予定いたしております。ルース米大使が出席をされることは、私は歓迎を致しております。日本国民の二度と核による被害をもたらさないでほしいという思いをですね、受け止めていただく大変いい機会になるとこう思っております。またその中で私からもあいさつをすることになっておりまして、今おっしゃったような中身についてもですね、ぜひ盛り込んでいきたいとこのように考えております」