●7.11参院選座談会第1弾 「なぜ菅政権はかくも失墜したのか」


・長谷川幸洋(東京新聞論説委員)
・高橋洋一(嘉悦大学教授)
・郷原信郎(弁護士)
・山崎元(経済評論家)
・岩瀬大輔岩瀬大輔(ライフネット生命保険副社長)


永田町ディープスロート
(現代ビジネス 2010年07月14日)  http://p.tl/QaRt


 7月11日、参議院選挙の投開票日の午後8時。長谷川幸洋(東京新聞論説委員)、高橋洋一(嘉悦大学教授)、郷原信郎(弁護士)、岩瀬大輔(ライフネット生命保険副社長)、山崎元(経済評論家)の5人のメンバーが集まり、開票速報を見ながら、民主党政権の敗因から日本の明日まで議論を交わした。     

司会:瀬尾傑(現代ビジネス編集長)

瀬尾 まもなく7月11日午後8時、参院選の投票が締め切られようとしています。この選挙の注目点はどこか、長谷川さんにまず伺います。


高橋洋一(嘉悦大学教授)長谷川 当初は、与党民主党が単独過半数を得られるかどうか。それが無理なら、国民新党との連立で過半数を得られるかどうかでした。

 しかし、いずれも無理な情勢が伝えられています。では、民主党政権は、この選挙の結果を受けてどうするつもりなのか、どれだけ持続可能なのかという点です。

高橋 歴史を見ると、成熟した民主主義への過程には必ず、多数の少数政党が登場します。少数政党ができては消えて、プロセスが進むわけです。どこが消えてどこが残るか、これからのプロセスが楽しみです。

山崎 なるほど、「たちあがれ日本」が「立ち枯れ日本」になってしまうかも知れないと(笑)。ちょっと伺いたいのですが、メディアは独自に出口調査などの事前調査を行っていますね。これは、各党の陣営に事前に漏れるものですか?

長谷川 漏れているでしょう。

山崎 それは良くないしょう。選挙結果に影響がでるのですから。

長谷川 ぶっちゃけますと、記者は普段、政党には取材に協力してもらっています。ですから、ごますりのためにそういうことをするんでしょう。

山崎 すると、「出足が悪いようだから電話攻勢をかけよう」とかやるわけですか。

長谷川 そこまではやらないですね。でも、官邸にいれば状況は刻々と入ってきますね。

高橋 出口調査と言っても、全体感はわかっても、この投票所ではどんな状況かというような、細かなところまではわからないんです。人が足らないですし。それに、最近は期日前投票が増えていますが、これについては調査できません。したがって、何時の時点でどうで、それが何時にどう変わったという話にはなりません。

岩瀬 あ、午後8時になりましたよ。

郷原 (テレビを見ながら)民主党の50議席割れが確実になった模様だと、どの局も報じてますね。

高橋 これは過半数割れるね。

山崎 東京選挙区は民主党が2議席とりましたね。早いなあ。


■最後のギャンブルだった菅直人の広告


長谷川 今日(11日)の朝刊、ご覧になりましたか。民主党が広告を出していましたね。「菅直人です。率直にお話しします」で始まり、「明日にでも消費税が上がるのではないかという唐突な印象をあたえてしまったかもしれません。私の説明不足でご心配をおかけしたことを、率直にお詫びします」と。

岩瀬 そんな広告、前例があるんですか。

長谷川 異例なことです。これは各種調査の結果が思わしくなく、状況は相当悪いと思って、急遽、出すことを決めたんでしょう。

高橋 最後のギャンブルに出たんですね。

山崎 じり貧のギャンブルはあまり当たらない(笑)

高橋 民主党を応援してきた人に、「やっぱり菅さんはいい人だ」と思わせる以上の意味はないですね。

――しばしテレビに見入る。

長谷川 NHKでは、民主党の獲得議席数は最大でも51と言っていますね。これでは、国民新党との与党連立でも、過半数割れは明らかです。こうなると国民新党には、連立にいる意味がなくなりますね。郵政改革法案をこの臨時国会で成立させることができなくなったんですから。

高橋 その改革法案を、提出するかしないかがまず注目です。出してみて成立しなければ、完全にアウトですから。そう考えると、出さない。

 しかし、出すという選択肢もある。民主党は、国民新党ではなく、自民党につっこむのです。自民党の中での賛成派にたきつけて自民党をぐちゃぐちゃにできれば、政界再編が始まります。ただ、つっこんでやれるとは思えない。だから出さないでしょうね。

長谷川 国民新党の亀井静香代表から見ると、郵政改革法案を通すために連立にいるわけです。法案成立の見通しが立たなくなった今、連立の蜜の味は相当薄まっているでしょう。


高橋 亀井さんから見るとそうでしょう。しかし、郵政以外に軸があったらどうですか。例えば消費税を軸にするとわかりやすい。国民新党は消費税率を上げることに反対していますよね。菅直人さんとは真逆ですから。


■「強行的な菅政権と連立をくもうという政党はない」


瀬尾 いまインタビューをお願いしていた自民党の菅義偉党本部選挙対策副委員長から電話がかかっています。まず長谷川さんどうぞ。

長谷川 菅さん、自民党は健闘しているようですね。手応えはいかがですか。

菅 第1党の可能性が出てきました。すると、次の国会はねじれ国会です。与党に過半数を与えないという目標がクリアできて良かったと思います。

長谷川 菅政権は、参院本会議も予算委員会も開かずに、選挙戦を迎えることを選びましたね。

菅 菅政権の考える安全保障を、国民の皆様に示すチャンスであったにもかかわらず、それをやらずに選挙に臨みました。この姿勢に国民が厳しい態度をとったのではないですか。

長谷川 菅政権は相当厳しい状況に追い込まれたと思います。今後は連立の組み替えが1つの焦点になりますが、自民党の一部に声をかけることも考えられませんか。

菅 強行的な菅政権と連立を組もうという政党はないでしょう。非常に強行的ですよね。国民は、安全保障や社会保障について、話し合って欲しいと思っているわけですから、もっと話し合いが必要です。

高橋 今回のこの結果は、自民党にとってはハッピーな結果ですか?

菅 与党に過半数を与えず、郵政改革法案の通過・成立の阻止ができたのは良かったと思っています。

高橋 自民党は、経済戦略もマニフェストに書いていますね。

菅 そうです。経済戦略については、民主党も、みんなの党も、考えがかけ離れているわけではありませんから、積極的に話し合いをしていくべきです。

高橋 政界再編は、経済が良くなってからでしょうか。

菅 私たちは責任を持つ野党を目指していますから、すべて反対する野党とは違います。経済成長についてはみなが掲げていて、国民の皆様も望んでいることですから、最も必要な話し合いだと思っています。

高橋 それをできるだけ早くやってもらえれば、この選挙の意味にあります。ぜひやっていただきたいです。


■必要ならば話し合う用意はある


瀬尾 私からもひとつ伺います。これで、自民党は谷垣禎一総裁の下で国会を戦っていくということですか。

菅 そうなると思います。

長谷川 今度の臨時国会は完全にねじれていますね。

 民主党は、衆議院では過半数は持っているけれど、3分の2は持っていない。事実上、法案や予算を成立させる担保がないまま、政権運営をしていかなくてはならないわけです。

 これ、年内にも、やっていけなくなるのではないですか? 連立組み替えをせざるを得ないと思います。

菅 そのあたりは、菅政権の出方次第です。

 たとえば、子ども手当の問題1つとっても、海外にいる日本人の子どもには支給されず、国内にいる外国人の子どもには支給されるという、誰が見てもおかしいことが強行採決の末に決められました。もし民主党側に歩み寄る気持ちがあり、強行的ではない態度をとれるのであれば、我々は必要な物は話し合う用意があります。

長谷川 菅政権は、マニュフェストの全面撤回も行っていますね。

菅 そこまでやらないと乗り切れないと判断したのでしょう。

長谷川 党利党略のない民主党の旗頭は、唯一、マニフェストでした。しかし、それすらなくしては、いったい民主党政権とは何なのかという話になります。

菅 破綻しているんです。普天間基地問題でも、予算でも、きちっとできるだけの裏付けのない、無責任なマニフェストだったということですね。

――インタビューはここで終了。

山崎 菅さんは、まだまだ喜びを抑えているように聞こえました(笑)。


今の話にもありましたが、民主党は、マニフェストを掲げていた時と、今と、どれだけ同じ党なのか謎めいて見えます。それほど変質していると感じます。

 たとえば評判の悪い子ども手当はどうするのでしょうか。私自身は、子ども手当は政策としては悪いと思っていません。

 現金支給というのは、官僚にうまみがない政策です。官僚にしてみればあれは叩きたいでしょう。メディアも叩いていますが。こう見ると、ずっと官僚のペースで来てしまっているんです。

 民主党政権のスタートを振り返ってみてもそうですが、脱税問題の鳩山さん、西松問題の小沢さん、ともに脛に傷を持った状態で与党になって、官僚に頭が上がらなかったから、気づいたらここにたどり着いていたのかなと思います。


■なぜ官僚に操られるのか


郷原 財務省の官僚は、菅政権が消費税問題をぶち上げても、この選挙で勝つと思っていたんでしょうか。

高橋 官僚からみれば、民主党が勝つ必要はなかったですよ。ただ、消費税増税の議論がちょっと前に進んだことで彼らは十分なんです。その結果、菅さんがいなくなってもいい。菅さんは官僚に毎回毎回いいように使われていますよ。私も忠告してきたのですが、見事にやられている。

岩瀬 なんでそんなに簡単にコントロールされてしまうんですか。


高橋 政治家はいろいろなところでいろいろなことを話さないとなりません。意外と手駒は持っていないんですよ。すると、官僚などに言われたことを、外ですぐに口にするんです。

山崎 それはあたかも自分の意見であるかのように?

高橋 そうです。それをまたマスコミが「勇気ある誠実な発言だ」などとはやし立てるでしょう。マスコミも、官僚からみるとコントロールしやすいです。いちばん簡単なのは、社説です。

 社説は3、4人の論説委員が書いていますから、彼らに吹き込めばいいんです。簡単です。長谷川さんが社説を書く東京新聞は、違うかもしれませんが(笑)。

郷原 民主党は、議席数では自民党を下回りそうですが、しかし、比例では自民を上回りそうです。これは、地方で負けているということでしょう。地方は経済がとりわけ厳しいのに、こんなときに消費税の話ですからね。

山崎 小沢さんは、そこをわかっていましたね。だから選挙戦の途中から菅さん批判を始めたのだろうと思います。地方を回っていて、民主党は勝てないと感じたのではないですか。


■ローマ朦朧記者会見事件の逆パターン


長谷川 菅さんが経済をわかっていないのは有名な話です。この話は以前から、周辺にいる人物の間では出ていましたね。「菅は経済はアウトだ」と。

 菅さんは、副大臣兼財務大臣時代も、財務省の大臣室に入らずに、官邸の副大臣室にいた。だから財務官僚は、レクチャーのためにわざわざ官邸へ行く必要がありました。『政治主導』でよかったのかもしれませんが、それも12月ごろまでの話です。

 今年1月、参院本会議で菅さんは、林芳正さんの消費性向と乗数効果についての質問に答えられず、官僚から助言を受けざるを得なくなりました。林さんは質問をしながら「この人、経済のことを何もわかっていないな」と思ったそうですよ。

高橋 官僚は林さんの質問を、事前に分かっていたはずですよ。答弁の前に官僚は大臣に対してレクチャーをします。そこで官僚は、菅さんは経済がわからないと気がついた。わからないならもう一度レクチャーをするのが普通です。それをしないで、おそらく自民党の側に「菅はわかっていない」としゃべったのでしょう。

長谷川 まあ、そこには証拠がありませんが、しかし、官僚が政権の力になろうとせず、「ここをつけ」と自民党に振りつけたという話は十分あり得ますね。

高橋 林さんはお父さんが元財務大臣で親しい官僚も多いですからね。官僚が直接林さんに言わなくても、林さんの近くの人に言えば、当然耳には入ります。

長谷川 答弁で立ち往生して、プライドの高い菅さんは傷ついて、その反動で、今は完全に紙を読むパターンになりましたね。

高橋 そうです。それから、2月のG7での姿が象徴的でしたが、菅さんは英語が出来ないんですね。ほかの出席者は全員英語ができるのに、です。しかしそこで話し合われたことを、記者に向かって話さないとならない。そこでまた、財務省頼みになって、官僚に言われたまましゃべっているんです。「会議はこうでした」と言われたらそのままです。

長谷川 中川昭一さんと逆パターンですよね。

岩瀬 ローマのG7のとき会見で朦朧状態だった財務大臣ですね。

郷原 結局、辞任に追い込まれました。


■増税発言が支持されたから長期金利が下がった?!


瀬尾 あの事件では後に、同行していた財務官僚と会見直前にワインを飲んでいたことが、後から明らかになります。中川さんの飲酒癖は有名ですから、普通、官僚は止めますよね。それを一緒になって飲んでいた。改革派の中川大臣は、官僚にはめられたのではないという見方も根強いのです。

長谷川 あのときは突き放したのが、今度は寄りかかってきたからそれを利用してカタにはめようとしたんでしょう。

高橋 ギリシャの問題がいい例です。これまで何度も現代ビジネスに書きましたが、ギリシャと日本とは全然違いますよ。なのに、きっとそういう説明を官僚から受けたのでしょう、あれ以来、菅さんはギリシャの話をよくしますよね。でも、ギリシャの問題は日本には関係ありませんよ。

山崎 ギリシャ問題が起きて、日本は円高になって金利が下がりましたね。

高橋 ところがそれは、菅さんは自分が消費税増税し、経済再建について話した成果だと思っている。それでマーケットから信任を得たから、長期金利が下がっているなんて言っている。こんなのプロから見るととんでもない発言ですよ。ねえ岩瀬さん。

岩瀬 (苦笑)。

高橋  いま長期金利が下がっているのは、米国、中国の先行き景気懸念があり、日本も円高で外需がやられて、二番底の懸念が出ているからです。その証拠に、米国の長期金利と日本の長期金利は同じように下がっています。菅さんは経済がわからないから、官僚に騙されているんですよ。

山崎 悪い証券マンが、無知な人を騙しているようなものですね(笑)。


■日本の競争力にとってプラスか、マイナスか


瀬尾 今回の参加者の30代代表である岩瀬さんにお伺いしたいのですが、若い世代から見て、民主党政権にとって厳しいこの選挙結果をどう思いますか。

岩瀬 わからないのは、この結果、生活や経済がどうなるのかということです。郵政の問題など、個別にはわかりやすいのですが、全体として、民主党のままでいいのか。もちろん自民党がだめだから代わってもらったというのはわかるんですが、国際社会における日本の競争力を見たときに、プラスマイナスでどうなっているんでしょうか。

山崎 民主党政権とは言っても、実際は自民党の別派閥が政権をとっているようなものですから、どっちになっても同じという不毛感はありますね。

高橋 マジョリティを持っている政党がないので、組み合わせを考える楽しみはありますよ。参院で過半数を取る足し算をどうするかという話です。

 今回は、みんなの党が面白いポジションにいます。今、10議席を確保できそうだという情報が流れていますが、すると改選なしの分と合わせて11議席で、これで、法案を提出できるようになります。新しい政界再編のパターンが生まれる可能性があります。

岩瀬 どんな法案が最初に出てくるでしょうか。

高橋 選挙では公務員法改正案を打ち出していました。郵政問題の対案も出るでしょう。

郷原 郵政と言えばね、法案も大事ですが、あの体制では競争に耐えられませんよ。私は日本郵政ガバナンス検証委員会の委員長をしてますが、内情はぐちゃぐちゃですから。機能していません。ゆうパックの遅配問題だって、なるべくしてなった。

 こういうことを考えるにつけても思うことは、政権交代とは何だったのかということです。大変空しいです。

高橋 民主主義というのは、うまくいかないのが前提ですからね。残尿感があって不満タラタラでいくものなんです(笑)。

郷原 そうかもしれませんが、しかしここまで何もできないというのはいかがなのか。




●7.11参院選座談会第2弾「長妻昭、渡辺喜美を直撃!菅政権はどうなる」
http://p.tl/emx3


長谷川 いま菅直人首相が問われているのは、いったい民主党政権とは何か、ということです。

 これは、言葉では「脱・官僚依存」を言ってきた政権です。しかし、できていない。

 では自民党政権ではどうだったかと言うと、小泉政権以前は、政治をやっていたのは官僚でした。政治家が政策目標を持っていても、日程管理も工程管理も内閣主計局がやっていたんです。

 もちろん政治家が政治を取り戻すのは結構なことです。しかし、何分不慣れです。不慣れなので、政治を取り戻したいんだけれど、どんな政治を取り戻したいのかが、民主党政権にはないんですよ。

 本当の意味で、政治家が政治を取り戻すには、まだ2、3年、時間がかかるでしょう。

郷原 官僚からの脱却とは言うけれど、官僚の代わりになるような存在を作れなかったわけですよね。

高橋 自民党政権が官僚依存の政権だったのは確かです。

 鳩山さんは当初、「政権を取った直後に、局長以上の官僚にはいったん辞表を提出していただくという荒技を行わなければならない」と言っていた。自民党政権のときとは違う外務省、防衛省のメンバーで、普天間問題を何とかしようと考えた。ところがそれができずに、普天間の問題もああなった。

 鳩山さんは「お願いすればやってもらえると思った」というけれど、そんなものじゃないです。官僚依存をなくそうと思えばできたし、そうすれば解決したかもしれない問題だったのに、しなかったんです。

岩瀬 なぜですか。あれだけ脱官僚と行っていたのに、なぜできなかたんですか?

高橋 お金か人事でしかものを変えられません。その人事を手放してしまったんだから、うまくいかなかなったんです。

郷原 政治と金の問題も、ボディブローのように効いたんじゃないですか。

山崎 脱税での逮捕も鳩山さんの頭の中にはあったんじゃないでしょうか。

郷原 しかし、あれを脱税で立件するのは相当難しいですよ。だって、個人の金と政治の金は明らかに別に管理していますから。それなのに、騒がれて相続税を払ってしまったから問題になったんです。


■長妻大臣にナマ電話インタビュー


瀬尾 いま長妻昭厚生労働大臣と電話がつながりました。山崎さん、どうぞ。

山崎 民主党にとってはあまりめでたくない選挙結果になりつつありますが、敗因は何ですか。

長妻 まだ結論は出ていませんが、与党で50議席を超えるのが難しい状況になってきました。改選議席で第1党になり、参議院で法案を通過させられる体制を作らないとと思って頑張ってきましたが。

山崎 子ども手当のことを伺います。私はいい政策だと思っていますが、満額支給は断念したんですね?

長妻 そうですね。2万6000円の満額支給は難しいとお詫びをし、国民の皆さんに説明をしているところです。

山崎 しかし、財源がないから支給できないというのは議論としておかしい気がします。ほかの支出と子ども手当とどっちが大事かという話もなされていません。「満額支給は難しい」というのは、官僚に乗せられているのではないですか。

長妻 日本は、アメリカの次に、子どもにかける予算の少ない国です。子どもがいなくなるということは、社会保障の担い手がいなくなるということですし、内閣府が行ったアンケートにも、少子化対策を求める声は多数寄せられています。子ども手当だけでなく、今後は保育所の数を増やすことも、5ヵ年計画でやっていきます。

山崎 年金についてはどうしますか? そろそろ法案、という話だったかと思います。

長妻 年金改革7原則というものを提案し、国民の皆さまからそれについてご意見を伺っているところです。近く、厚労省で国民の皆さまの声を直接伺うイベントも開きます。この問題については丁寧に、超党派で議論していきます。それを経て国会の法案を提出するスケジュールです。

山崎 年金問題は、昨年の衆院選最大の関心事でしたよね。

長妻 以来、20万人分の記録が戻ってきています。しかし、物事が進んだ結果として、直面する問題の難易度が上がっていることも確かです。野党時代から主張をしていた通りに紙台帳の照合作業を進めましたが、まだ8割の人たちが、ご自身の年金記録がおかしいことに気づいていない状態です。国家の信頼回復のために、引き続き努力を続けます。


■与党は実績を示して!


長谷川 今回はなかなか厳しい結果になりそうですが、この後、党内は大変じゃないですか。

長妻 与党として、改革の方向性は間違っていなかったと思っています。しかし実際問題として、参院で法案が通らないのは困りますので、よりさらに丁寧に、野党とも、枠組みや構造を考えつつ、菅総理を中心に議論をしなくてはならないと思っています。

長谷川 菅さんが突然消費税の話を持ち出しましたが、改革路線の実績を示せないと、これは国民を困惑させるだけではないですか。

長妻 改革という点では、厚労省の中でも独自の仕分けを進め、無駄をなくしています。

郷原 年金業務監視委員会委員長の立場から一言。紙台帳の照合は大変ですが、しっかりやっていきましょう。しかし、どれだけのコストがかかるのかという情報公開はどうなっていますか。

長妻 これだけかかりますがいいでしょうか、と国民の皆様に問うて、やっていきたいです。

高橋 子ども手当についてですが、これは、文科省の義務教育就学児医療費助成制度の予算を組み替えれば、実現できますよね。そこを諦められるとガッカリします。

長妻 文科省、厚労省といった縦割りでない取り組みを進めたいと思っています。

高橋 そうしないと、これまでのマニフェストは全部嘘だったということになってしまう。ぜひ与党は実績を示してください。

長妻 会計だけでなく、幼稚園と保育園が混在している問題にも取り組みたいと思っています。

高橋 ぜひ閣僚委員会を活用して、大臣レベルでものごとを進めて下さい。外から見える印象も、それでずいぶん違いますから。

瀬尾 最後にひとこと。改選議席数が50を割り込むことが確定的になってきました。党首の菅さん、選挙を取り仕切った枝野幹事長の責任問題についてはいかがですか。

長妻 発足してまだ1ヵ月ちょっとの体制ですから、そういうことはないでしょう。

瀬尾 ありがとうございました(電話を切る)。

長谷川 現役閣僚が、総理と幹事長に「責任がある」とは言えないでしょうね(笑)。


■「取り調べの可視化」をなぜ引っ込めたのか


山崎 今回、民主党はマニフェストから「取り調べの可視化」を削除しましたね。これを引っ込めた意味はどこにあるんでしょう。

郷原 検察に対して弱腰になっているんでしょう。政権交代以降、政治と金の動きの問題で、いろいろやられていますからね。

 それに、法務大臣を、あんな、何もできない人にしたでしょう。法務三役についてもそうです。民主党としては自ら、手の出しようがない状況に追い込んだんです。

山崎 そのあたりを改革できる人材はいませんか?

郷原 いませんね。人材以前に、方向性を打ち出せていませんよね。

山崎 ちょっと話が戻りますが、小沢さんの問題があったから、民主党としては手が出せなくなったんですか?

郷原 鳩山さんの問題もありましたからね。

長谷川 政権が成立した時点で、検察には弱みを握られていたということですよ。それが政権の性格を決めたんです。

郷原 検察に「できる」と思わせてしまったんですよ。

 先ほど鳩山さんの話はしましたが、小沢さんの政治資金規正法の問題も、国側から罪に問えるような内容ではないにも関わらず、物事を大きくしたんです。

 これはまさに、戦前の統帥権の干犯問題と同じです。「統帥権を犯しただろう」というレッテルの下に、なんでもやってしまっているんです。

長谷川 なるほど、それはわかりやすい。

高橋 結局、マスコミが騒ぎ立てるからそうなるんです。


■「民主党の崩壊は始まった」」


瀬尾 みんなの党の渡辺喜美代表と電話がつながりました。

長谷川 今回の選挙では健闘されていますが、手応えはどうですか?

渡辺 民主党と自民党しか選択肢がないのは不幸だと訴え、第3の選択肢を提示できた。それがよかったんじゃないでしょうか。

長谷川 すでに連立与党の過半数割れは確実な情勢です。与党から助け船を求められる可能性がありますが、対応はどうしますか。

渡辺 連立はあり得ません。なぜなら、アジェンダが違いますから。しかし、与党に限らず、他党がみんなの党のプランを丸呑みするのであれば、そのアジェンダの範囲で、やれることはあるでしょう。

長谷川 公務員制度改革について伺います。民主党は、連合や自治労がバックにいるので、この点で菅政権と手を結ぶのは難しそうですね。

渡辺 難しいかそうでないかはさておいて、法案は次から次へと出していきますよ。手を結ぶのは、それが丸呑みされることが条件です。この間民主党はみんなの党のことを全面否定していましたが、こういう態度はぜひ改めてもらって、そのうえで、一緒にやれる部分はやっていきたいです。

長谷川 民主党はこれからの国会を乗り越えられないようにも見えますが。

渡辺 選挙中に党内抗争が勃発するというのはまさにそうでしょう。3年前の参院選で自民党の崩壊が始まったのと同じように、今回の選挙では、民主党の崩壊が始まったのではないですか。

高橋 今回の結果は想定の範囲内ですか?

渡辺 議員立法による法案提出をするには、11人必要です。今、非改選に一人いるので、10議席とれれば、それが可能になります。予想されている8から9議席に、プラス1、2としたいです。

高橋 各党との連携にしても、これまでのように密室でごしょごしょやるのではなく、表に出して、国民に見えやすい形でお願いします。そうすれば、他党と一緒の法案提出でも、わかりやすいですから。それと、法案によっては、通過のハードルの高い物と低い物があります。低い物は経済成長対策だと思いますが。

渡辺 みんなの党の経済成長対策は、官僚依存がありません。民主案と自民案は、経産省の官僚に都合のいい案なので、よく似ていますね。


■30代が残りの人生を過ごせる国に


高橋 デフレ脱却のための具体的な話などは、真っ先に進めて欲しいですね。そういったハードルの低い物をやりつつ、硬軟織り交ぜてやって欲しいです。国民から見ると、経済そっちのけで政局をやられても、しらけますので。

渡辺 デフレ脱却法案は、いいタイミングで出していきます。

岩瀬 私たち30代は、残り50年の人生をこの国で過ごします。その間、世界との競争にさらされますが、日本には、人や金の流れを進んで作れる国であって欲しいと思っています。そのあたりのお考えはいかがですか。

渡辺 そのためには、開国が必要です。しがらみがあっては開国できません。しがらみとは、農協や医師会や、既得権益を持つ業界団体です。自民党がもともとは持っていた物でしたが、民主党政権もそれを引き継いでいます。

 みんなの党は、開国し、国の成長を促し、若者に将来展望を描いてもらえるアジェンダを出していきたいと思っています。日本の若い男の子が草食では、国際社会で食べられてしまいますからね(笑)。

岩瀬 肉食系のみんなの党に、期待しています。

渡辺 ありがとうございます。

 すみません。テレビの生中継が入るのでまた、後ほどかけ直します。