●堺・新特捜部長が就任会見。大型経済事件で「特捜部らしい事件」を手がけることへの意欲をのぞかせる《東京地検定例会見》


(東洋経済オンライン 2010/07/06 09:52)   http://bit.ly/9aRxyA

 東京地方検察庁は7月5日、堺徹特捜部長(=写真=)の就任会見を開催した。6月10日から雑誌やフリーランスに公開を開始した定例記者会見の第5回となる。

     テーマ
 1回目 裁判員裁判制度の振り返り(6月10日)
 2回目 鈴木和宏検事正の就任会見(6月18日)
 3回目 振り込め詐欺(6月24日)
 4回目 ヤミ金事件の併料(7月1日)
 5回目 堺徹特捜部長の就任会見(7月5日)

 堺徹特別捜査部長の略歴は以下のとおり。過去に3度、計7年5カ月間、東京地検特捜部に籍を置いている。

 1984年4月 札幌地検検事
   96年4月 東京地検特捜部検事(1度目・2年間)
   98年4月 旭川地検次席検事
 2000年4月 東京地検特捜部検事(2度目・4年間)
   04年4月 東京地検総務部副部長
   05年1月 大阪地検刑事部副部長
   06年4月 東京高検検事(最高検察庁事務取扱、裁判員制度等準備検討会)
   07年4月 東京地検特捜部副部長(3度目・1年5カ月)
   08年9月 東京地検交通部長
   10年1月 東京地検公安部長
   12年7月5日 東京地検特捜部長
  
記者会見での質疑応答は以下のとおり。

 ――捜査の可視化について。(供述調書の証拠採用が大阪地裁で却下された)大阪地検特捜部の郵便不正事件(の誤捜査)は可視化をしていれば防げた。弁護士が録音・録画をするようにと求めた場合や被疑者が録音・録画機を取り調べに持ち込んだ場合はどうする。

 「可視化に関しては法務省で研究・検討がされている。そちらのほうで良い研究・検討がなされて良い結果が出ることを期待している。大阪地検の事案については具体的に関与したわけではない。同じようなことがあった場合についてどうか、ということであるが、捜査によって異なる。その場その場で適正に判断していきたい。(記録の要請については)捜査はまさにケースバイケース。適正に対処していきたい」

 ――適正とは。

 「適切に対処していきたいということ」

 ――大阪地検特捜部の郵便不正事件の件は今後の捜査にどう影響が出るか。捜査の可視化は、望んでいるのか、いないのか。

 「コメントする立場になく、私がコメントするのはおかしなこと」 

 ――捜査の可視化は現場の裁量に委ねるということ?

 「その場その場で判断するということ。具体的な事件もなしにどうだと言うことはできない」

 ――特捜部長としてどのような事件を手がけていきたいか。

 「一言で言えば特捜部らしい事件をやれればよい。特捜部の役割は政官財に潜む不正を暴くことと言われているが、それは規範として間違っていないが、大型の経済事件や脱税事件についても適正に摘発していきたい」

 ――「冤罪製造機関」など特捜部の捜査に対する批判については。小沢一郎氏に対する捜査についても批判がある。特捜部批判は前からあったものという認識か、それとも批判が高まっているという認識か。

 「関与していない事件にコメントするのはどうかなと思う。私自身については7年5カ月特捜部に勤務し、冤罪をつくる捜査をしたことはない。冤罪をつくる捜査は正しいことではない、それは自明のことである」

 ――検察審査会の制度が出来るなど、東京地検特捜部副部長時代とは時代が変わったという認識か。
 
 「審査会法が改正されて、審査会の権限が強化された。検察審査は審査会でおやりになること。捜査のハードルを低くするとかいうことは考えていない」

 ――若者は東京地検特捜部に肯定的な関心を示している一方、自分の目で確認したい願望を持っている。記者会見のネット中継を認めてほしい。

 「私がコメントするというのは立場が違うかなと思う。この場でのコメントは差し控える。そういう要望があるという認識は持つ」

 ――冤罪事件をつくらないようにする工夫は。

 「検察になって26年余だが、冤罪事件をつくらないということでやってきた。証拠の吟味をきちんとすることが大事。適切な捜査を今後とも心がけて行きたい」

 ――特捜部長に就任した現在の心境は。

 「重い責任を負った。過去3回、特捜部に勤務し、地味な事件もやったし、社会の耳目を集める事件もやったが、(部長就任で)特捜部らしい事件を手がけるチャンスを得たのかなと思う。このチャンスを生かせたらいい。ただ何が何でもやるぞ、というのではなく、やれることを粛々とやっていきたい」

 ――特捜部に期待されている役割は変化しているのではないか。

 「難しい質問だ。大きな変化はあったのかというとそれほど大きくはないのかなと。96年のような事件があれば特捜部が適正に捜査することは期待されるのかなと。今ならやらない、とかそういうのは、私の関与した事件ではないのかなと」

――7年5カ月の特捜部勤務で心に残る事件は。

 「1つ、2つと絞るのは難しいが、大きかったなと言うのは、内偵から起訴まで関与した(住友商事の)銅取引の巨額損失事件。96年の事件で5カ月くらい関与した。他には野村証券の総会屋への利益供与事件。これは4大証券に波及した。これは何と言いますか、日本の会社の置かれている環境と言いますか、捜査をして事実を知り、自分自身衝撃を受けたが、国民も衝撃を受けたのではないか」

 ――どの点に衝撃を受けたのか。

 「総会屋との関係断絶が叫ばれていたけれど、総会屋との付き合いを続けていた。内偵の初期に、証券取引等監視委員会が見つけて、監視委員の一員として関与した。途中で抜けたが、実際に事件に関与したヒトは苦労しながら、嫌な思いをしながらも総会屋との関係を切れなかったことに衝撃を受けた。(事件が明るみになった後)、だんだん総会屋との関係は、他社も良くなっていったのではないか」

 ――捜査の着手段階や終結段階でのメディアへの今後の情報提供については。

 「地検でルールを作ってやっている。適正に対処されることを期待する」

 ――組織の長としての抱負は。

 「真実を解明するのが一番大事な仕事。妥協せず、知恵を絞りながらやってもらいたい。部下がよく動けるように、意見を言いやすい、風通しのよいようにしたい」

 ――会見の30分前など直前の連絡が多い。起訴案件など事前に日程が分かっている場合は1日前とかにしてほしい。

 「どこまで要望に対処できるか分からないが、そういう要望があることは認識していきたい」




●東京地検が記者クラブ外の雑誌記者・フリーライターに定例記者会見を初公開【東京地検定例会見】

(東洋経済オンライン 2010/06/11 12:15)   http://bit.ly/bXNxKX

 6月10日。東京地方検察庁がこれまで全国紙などの記者クラブに限っていた定例記者会見(毎週木曜日)を初めて「公開」した。会見に応じたのは大鶴基成次席検事と片岡弘総務部長と稲川龍也特別公判部長の3人。

 「公開」とはいっても事前登録制で、登録は報道機関1社3人まで。しかも参加は原則1社1人という「条件付き公開」だ。15社35人が応募し全社全員が事前登録を認められたが、第1回に参加したのは東洋経済を含む10社11人だけだった。

 フリーランスに至っては「十分な活動実績・実態を有する者」が条件で、今回13人が応募したが、5人が実績を認められなかった。8人の事前登録者のうち今回参加したのは半分の4人。

 参加したフリーの記者4人のうち江川紹子氏からは、「3カ月の間に実績がなければ、というのはハードルが高すぎる」との指摘があり、片岡総務部長は、「他省庁を参考にしたが、それが絶対唯一でもない。意見として承るし、検討する」と応じた。

 同じくフリーランスの畠山理仁(はたけやま・みちよし)氏からは、「なぜ録音をしてはダメなのか。正確を期するために録音をできないのならば、要旨をホームページで公開する、地検で文字起こしをするなどは考えられないか」と疑問が呈された。

 片岡総務部長は「要旨の配布を本日は考えていないが、数字の確認にはお答えできるようにしていきたい。言ってはいけない固有名詞を言ってしまったりということをおそれている」と答えた。

会見風景の写真撮影を認められていないことについて、別のフリーランスの記者から、「首相会見でも撮影や録音が認められている」との指摘があったが、片岡総務部長は、「東京地検はあくまで捜査機関で地検関係者や参考人が通行している。何かの拍子で写真に入ってしまう不測の事態もありうる。従来からカメラは入れていない。同時中継・配信や録音を認めていないのは、具体的な(被疑者や被害者の)名前が出ることもありうるから」と説明した。

 質疑応答前の説明では稲川特別公判部長が裁判員裁判制度を振り返り、「検察官の裁判員へのプレゼン能力が大事と思い、訓練した。アンケートや裁判員へのインタビューでは『比較的分かりやすい』という評価を得た一方、判決後に『分かりにくかった』という声もあった。」

 また、「課題としては、これまでは容疑を認めている事件ばかりだったが、6月、7月、9月と本格的な否認事件が増えてくる。これまでのわかりやすさの追求と同時に、(被疑者が容疑を否認している理由を)的確に説明していけるだろうか、ということがある。公判前整理の長期化しているという指摘もあるが、こちらは少しずつ良くなっている」との旨を解説していた。



「陸山会事件への検察審査会の『不起訴不当』議決については内容を十分に検討し、適切に対処したい」《東京地検定例会見》

(東洋経済オンライン 2010/07/16 11:22)  http://bit.ly/cjAVmx

 東京地方検察庁は7月15日、定例記者会見を開いた。会見に応じたのは大鶴基成次席検事。今回の定例会見で配られた資料やリリースの要旨は以下のとおり。

 陸山会に係る政治資金規正法違反事件に関する東京第一検察審査会議決について

「本日、議決書の送付を受けた東京第一検察審査会の議決については、その内容を十分に検討し、適切に対処したい。」

 野球賭博をめぐる大関琴光喜に対する恐喝事件の処理について

 「表記事件につき、当庁は、本日、下記の者を恐喝の事実により東京地方裁判所に公判請求した。被告人 古市満朝(ふるいちみつとも)38歳 無職(元力士)。被告人は、琴光喜こと田宮啓司(当事33歳)から口止め料名目で現金を恐喝しようと考え、平成22年1月25日ころ、大阪府内から電話をかけ、同人の床山を介し、前記田宮らが野球賭博に関与していることをマスコミや警察に知らせる旨申し向けて金員を要求し、もしこの要求に応じなければ同人の名誉、財産等に危害を与えかねない気勢を示して同人を怖がらせ、よって、同月26日午後7時過ぎころ、千葉県内において、前記床山を介して前記田宮から現金350万円の交付を受けてこれを喝取したものである。」 
 表1 裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数
 
 強盗致傷           37 
 殺人             19
 現住建造物等放火        8
 強姦致死傷           5
 傷害致死            9
 強制わいせつ致死傷       4
 強盗強姦            2
 強盗致死(強盗殺人)      2
 偽造通貨行使          8
 通貨偽造            0
 集団強姦致死傷         0
 危険運転致死          0
 保護責任者遺棄致死       1
 その他刑法犯         13
 覚せい剤取締法違反      10  
 麻薬特例法(略称)違反     1
 爆発物取締罰則違反       0
 鉄砲刀剣類所持等取締法違反   0
 その他特別法犯         0
 合計            119

 表2 2010年7月1日~14日に起訴した裁判員裁判対象事件

   起訴日 罪名
 ①7月2日 強盗致傷
 ②7月6日 強制わいせつ致傷
 ③7月9日 傷害致死

表3 2010年7月1日~14日に判決言い渡しのあった裁判員裁判対象事件と判決内容

 言い渡し日 起訴罪名        主文
 7月 1日 強盗致傷        懲役2年、執行猶予4年※窃盗傷害での判決 
    同上 殺人          懲役8年
    同上 傷害致死        懲役6年
 7月 2日 強盗殺人等       無期懲役
    同上 強盗致傷等       懲役6年、没収
 7月 7日 殺人等         懲役15年
 7月 8日 現住建造物等放火未遂等 懲役3年、執行猶予3年保護観察付き
    同上 強盗致傷        懲役10年
    同上 現住建造物等放火等   懲役1年6月※窃盗有罪、放火は無罪
 7月 9日 殺人未遂        懲役3年、執行猶予5年
 7月14日 通貨偽造、同行使    懲役3年、執行猶予5年
    同上 覚せい剤取締法違反等  懲役15年、罰金800万円、没収

 表4 2010年7月15日~月末までの裁判員裁判の公判予定

 審理開始予定日 事件名      起訴日
   7月20日 強盗致傷等    09年9月4日~10年3月5日(計4回)
   7月21日 傷害致死     10年2月3日 
      同上 殺人未遂等    09年8月10日
   7月23日 強盗致傷     10年3月29日
   7月26日 強盗致傷、強姦等 09年11月13日
   7月27日 現住建造物等放火 09年8月25日
      同上 強盗致傷     10年3月26日
      同上 強盗致傷等    10年3月18日、5月12日
      同上 殺人未遂等    09年10月15日 
   7月28日 強盗致傷等    10年4月14日 

 質疑応答は以下のとおり。

――起訴したのにまだ裁判が始まっていないケースで一番古いのは。

大鶴 去年9月のがある。

――「不起訴不当」とした陸山会事件の検察審査会の議決書に「再捜査がなされないと納得がいかない」と書かれている。

大鶴 必要な捜査があればしていきたい。

――大相撲の恐喝は1億円ではなかったか。

大鶴 警視庁で捜査されていると思うので検察として申し上げられることはない。

――「名誉、財産等に危害を加えかねない気勢」とは。

大鶴 (手を振り上げて)こうしながら脅したりすること。分かりにくい表現かも知れないが、恐喝事件の公判請求ではこんな書き方をするんですよ。『危害を加えかねない』とは『名誉や財産が傷つきかねない』ということ。

――暴力団の名前を挙げることが恐喝? 実際に暴力団の名前を挙げて脅した?

大鶴 必ずしも暴力団の名前を出すことに限らないが、具体的なことは申し上げられない。

――検察審査会から「ゼネコンからのカネを石川知裕被告からうけっとたのではないか」との指摘もあった。このことへの評価は。

大鶴 全体としてどういう趣旨で述べられているかを十分検討し、必要な操作があれば行う。

――検察審査会は再捜査、特に小沢一郎氏への再調査を強く求めている。このことを意識して再捜査を行うのか。

大鶴 その指摘を十分検討したうえでなお不十分であるということならば再捜査を行う。

――調書がわずか3回というのは不十分との指摘もある。

大鶴 回数が少ないから不十分とは考えない。

――議決書には「政治資金規正法に都合のいい抜け道がある」という指摘もある。

大鶴 検察がコメントすべきことではないと思うのでコメントしない。

――2007年分の収支報告書だけではなく04、05年の収支報告書も再捜査を検討すべきとの指摘もなされている。

大鶴 04、05年の報告書があって07年の報告書があるからこそ議決書でも触れられている。04、05年の事件の捜査は終えているので再捜査をすることはない。

――小沢氏に手帳やメモの提出を求めるべきとの記述もある。

大鶴 この議決について指摘されていることについて十分検討する。

――04、05年分については(強制起訴の可能性がある)「起訴相当」とされたが、07年分については(強制起訴の可能性のない)「不起訴不当」とされた。

大鶴 コメントは書いてあるとおり。審査会の議決については、その内容を十分に検討し、適切に対処したい。

――なぜ今回は、フリーランスの記者はエレベーターでの地階の会見場入場となったのか。地階のコンビニでお茶を買うことすら許されなかった。

大鶴 試行錯誤しながらやっている。今後も試行錯誤しながらやっていく。

 東京地検は6月10日から雑誌やフリーランスにも定例会見を公開している。今月の定例会見はこれが最終回で、次回は8月だが具体的な日時は未定。

     テーマ
 1回目 裁判員裁判制度の振り返り(6月10日)
 2回目 鈴木和宏検事正の就任会見(6月18日)
 3回目 振り込め詐欺(6月24日)
 4回目 ヤミ金事件の併料(7月1日)
 5回目 境徹特捜部長の就任会見(7月5日)
 6回目 陸山会に係る政治資金規正法違反事件に関する東京第一検察審査会議決について、野球賭博をめぐる大関琴光喜に対する恐喝事件の処理について、裁判員裁判対象事件罪名別起訴件数(7月15日)