海江田 「菅首相の対抗馬」は仮の姿 「本命は都知事選出馬」に焦る猪瀬

(日刊ゲンダイ2010/8/4)

海江田万里衆院財務金融委員長(61)がきのう(3日)、国会議員50人超を集めて勉強会を開いた。9月14日の代表選への布石とみられているが、本人は記者団に「憶測にコメントする立場にない」とケムに巻いた。海江田は鳩山グループに属している。ただ、同じグループの小沢鋭仁環境相も勉強会を発足させてやる気マンマンだ。グループの結束は乱れているものの、海江田の出馬意思は固そうだ。
「海江田さんは勝ち負けにこだわっていないでしょう。とにかく出ることに意義があるのです。本命は、ずばり、来年4月の都知事選です。代表選に勝って首相になる可能性もゼロではないが、大臣未経験ではハードルが高い。身の丈を考えれば、首相よりも都知事です。現在は民主党都連のトップ(会長職務代行、会長ポストは空席)だから、候補者選定をリードできるのも強み。9月の代表選で存在感をアピールできれば、たとえ負けてもすんなりと都知事選にチャレンジできると踏んでいるはずです」(政界事情通)
海江田は衆院5期のベテランだが、選挙に弱く、郵政選挙で落選も経験している。そのため、“出世レース”でも後れを取り、すっかり過去の人になってしまった。
次のステップを考えるなら、もう一度、顔も名前も売らなければならない。それが代表選出馬だ。都知事選への地ならしは着々と進んでいる。

そんな動きに気が気じゃないのが、東京都の石原知事が後継含みで引っぱってきた猪瀬直樹副知事だろう。
きのうは東京メトロと都営地下鉄の経営統合問題について話し合う初めての協議に出席し、「メトロは都の税金も投入された公共的存在」と国側を説得。「今を逃したら経営統合のチャンスはない」とぶち上げ、久々にテレビに顔が映っていた。
「実績を残そうと焦っているのです。現状では、猪瀬副知事を都知事選候補に担いでくれる政党は見当たりません。石原知事の後継として自公の支援を得られれば万々歳でしょうが、“あいつだけはダメ”との声が多い。エラソーな話し方で言うことを聞かないから嫌われているらしいのです。となると、最後の頼みは無党派層。それにはアピールできる手柄が必要ですからね。必死なんでしょう」(都議会関係者)
威張る都知事は石原だけで十分だ。

天下りの“抜け道”と批判の多い官僚の現役出向について、「公務員が定年まで働けるような環境にしなければならない。それが独立行政法人への現役出向。人事交流で天下りではない」(玄葉公務員制度改革相)なんて屁理屈を平然と言うのだから、もうア然だ。


◇政権維持と保身しか頭にない菅首相

菅首相もひどかった。初日の低姿勢が批判されると、きのうは一転して「イラ菅」に逆戻り。しかし、答弁の中身もやる気もなく、その場しのぎだから、ただキレているだけにしか見えないのだ。九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法・政治)が言う。
「本格的な論戦を期待していましたが、ガッカリです。首相は当たり障りのない答弁に終始して、やりたいことも、やるべきこともロクに言えない状態になっていた。頭の中にあるのは、政権を維持すること、保身だけなのでしょう。前門の虎、後門の狼じゃないが、9月の代表選に向けて党内の顔色をうかがわなければならないし、ねじれ国会だから野党にも強く出られない。完全に腰砕けになっているのです。強い経済、強い財政、強い社会保障をうたいながら具体的なプランは言わない。『1兆円を上回る』特別枠についても、何に使うのか説明がない。ボンヤリした話ばかりで、まさに総論あって各論なし。これでは何のための国会か分かりません。税金のムダ遣いですよ」
本当だ。国会を開くだけでも1日3億円からの巨額経費がかかるのである。こんな茶番を見せられる国民はたまらない。

◇まるで子供のケンカみたいな与野党の国会論戦

野党も野党だ。強引に予算委員会開催を要求したのに、まったくの迫力不足。菅首相を追い詰めるでもなく、連立組み替えに向けて政策合意を詰めるでもなく、言いっ放しと尻切れ追及ばかりだった。
自民党の谷垣総裁自ら「少しパンチ不足だったかな」なんて頭をかいているのだからイヤになってくる。
きのうの質問でズッコケたのは自民党の平沢勝栄議員。イの一番に「首相、時間がないので端的に答えてください」と言って切り出した質問は、4年も前の首相のテレビ発言についてだった。
「菅首相は当時、『テレビの影響で1億総白痴化が進んでいる』と言っていた。『だから郵政選挙で自民党が勝ったんだ』と言った。今もその認識は変わらないか」