[経産省]人事案流出騒動 背景に菅政権の「窓際失業」対策

(日刊ゲンダイ2010/8/5)
うるさ型追い出しのイザコザも

定例人事が気が気でないのは、サラリーマンも役人も同じ。“生煮え”の人事案が外部に漏れれば一大事だが、経産省で調整過程の人事資料が他省庁にまで流出していた。経産省幹部は「異動変更を知った職員の士気が低下しかねない」と、アタフタしている。
「7月末に正式発令された人事と比べると、局長級2人のほか、部長級、課長級の合計10人以上が変更になったことが分かる資料です。また、他府省との交流人事も複数差し替わっていました」(経産省関係者)
なぜ、大事な人事資料が漏洩したのか。実は、経産省内では7月の幹部人事を巡り、ちょっとしたイザコザがあった。
50代のキャリア官僚が、現役の身分のままの民間企業への出向打診を断ると、事務次官から「今の民主党政権では君の居場所はない」と、暗にクビを宣告されたことが発覚。一部マスコミが報じる騒ぎとなったのだ。
「この官僚は、大臣官房付の古賀茂明氏(54)です。08年7月から09年12月まで、国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官を務め、霞が関では珍しい天下り批判の急先鋒でした。本人は現役出向という形を変えた天下りに我慢できなかったはず。現在は独自に再就職活動をしているそうです」(霞が関事情通)
古賀氏は6月末に経済誌「エコノミスト」に「現役官僚が斬る『公務員改革』 消費税大増税の前にリストラを」という論文を実名で寄稿。民主党政権の「天下り根絶」の後退ぶりを批判していた。古賀氏への出向打診は、うるさ型の官僚を追い払う意図もあったようだ。
「古賀氏でなくとも、中堅・若手官僚は菅政権の人事計画にカンカンです。『天下り根絶』とは名ばかりで、現役出向の形で抜け道までつくった壮大な窓際官僚の失業対策。幹部官僚は“勝ち逃げ”できても、そのツケはいずれ中堅・若手が負うハメになります。経産省に限らず、霞が関全体に世代間格差への不満が渦巻いているのです」(ある経済官僚)
人事案流出の背景には、菅政権の中途半端な改革姿勢があるようだ。