日本経済危機 この秋深刻な「菅不況」に突入する  (日刊ゲンダイ 2010/8/5)


中国、米国の景気減速で円高・株安進行

「円高傾向はあるが、業績は回復基調にある」――。4―6月期の連結業績で2116億円の営業黒字を計上したトヨタの伊地知隆彦専務は、きのう(4日)の会見で今後の収益拡大に自信たっぷりだった。
好調なのはトヨタだけじゃない。自動車大手8社の4―6月期連結で、三菱自動車を除く7社が、新興国を中心に販売が伸び、本業のもうけを示す営業損益が黒字になったのだ。
日興コーディアル証券のまとめによると、東証1部上場企業で7月30日までに4―6月期決算を発表した522社の経常利益は4兆2833億円で、前年同期の約4・2倍に膨れ上がり、リーマン・ショック直前の水準に回復した。
久しぶりに明るいニュースだが、手放しで喜んではいられない。
「今回の決算で好調が目立ったのは自動車と電機です。アジアをはじめとする新興国向けの輸出に支えられた。加えてエコカー補助金、エコポイント制度が消費を促し、前倒し効果をもたらしたのです。しかし、エコカー補助金は9月末で終了しますから、10月以降に反動が来るのは必至。家電業界も同じで、下期の見通しには不透明感が漂っています」(経済ジャーナリスト)
不安材料はまだまだある。頼みの米国や中国の景気減速見通しが強まってきているのだ。東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏がこう警告する。
「日本経済にとって頼みの綱の中国経済に変調が見られます。増え続けてきた輸入が落ちてきているうえ、生産も鉄鋼は供給過剰から減産に転じてきているのです。不動産バブル規制から株価が下がり、地方政府は借金で身動きが取れなくなっている。中国の国内需要が落ち込めば、日本の輸出関連産業にとっては大打撃です」
米国経済も赤信号がともり始めた。4―6月期のGDP成長率は2・4%と1―3月期の3・7%から低下。住宅市場は冷え込んだままだし、雇用情勢も依然厳しい。

◇株価下落 9000円割れも

「米景気循環調査研究所(ECRI)が発表する景気先行指数は、この春をピークに急落しています。指数が大きく下落したケースは過去に10回あるが、うち7回は景気後退に突入しています。米景気の降水確率(2番底リスク)は7割とみていい。景気が落ち込む中、米当局はドル安を歓迎するスタンスになるだろうから、円高は止まらない。日本経済は中国経済の変調と米国経済の落ち込み、円高の進行で、輸出がダウンし、株価も大きく下がる。9000円割れもあるでしょう。ところが、菅政権は財務官僚の言いなりで、何一つ効果的な景気対策を打ち出せないでいます。このままいくと10月以降、日本経済は深刻な菅不況・官不況に見舞われますよ」(斎藤満氏=前出)
企業業績が悪化すれば、雇用環境は一段と悪化する。景気回復どころか、再び出口の見えないトンネルに突入しかねない情勢になってきた。