日本と酷似「EUの大甘な資産査定」はいつか来た道

[経済ニュース 先読み深読み]
(日刊ゲンダイ2010/8/6)
ギリシャの財政問題に端を発した欧州の金融危機への懸念は、域内銀行に対するストレステスト(資産査定)を経て、ひとまず収束したかに見える。ただ、日本の金融恐慌を取材した筆者にとって、欧州金融当局の安全宣言は絵空事にしか映らない。
そもそもギリシャの財政悪化が同国国債への不信感に発展、これが南欧から欧州全体に伝播(でんぱ)したのに、「ユーロ圏政府のデフォルトはあり得ない」(欧州中央銀行)として、資産査定の基準から当該国債の項目を除外してしまったからだ。「日本車のエンジンは安全なので、車検ではエンジンはチェックしなくてもよろしい」と言っているようなものだ。
かつて「大手銀行はつぶれない」と声高に宣言し、その後泥沼の不況に陥った日本と、欧州の姿が重なり合う。大手邦銀が経営危機に陥った際、日本政府の宣言をあざ笑うように海外投機筋が経営体力の弱った個別行株式を叩き売った。現在、投機筋が国際的な監視体制強化の下でガチガチに縛られているため、日本で起こったような個別攻撃が欧州金融市場で即座に起こるような環境にはない。ただ、エンジンをチェックしない車検をドライバーが信用しないのと同じように、懸念の根源だった国債を外した査定は全く意味をなさない。
投機筋のように荒っぽい動きをする向きだけでなく、長期資金を保守的に運用する内外の機関投資家も同地域への投資を手控えるきっかけとなってしまうだろう。甘い資産査定を機に投資や資金流入が途絶えてしまえば、金融危機が経済危機に発展し、同域内の銀行の不良債権をさらに増加させる悪循環につながる。
欧州経済は、かつて日本が歩んだ泥沼の20年の入り口に立っている。