参院自民 夏の陣 負け戦承知で谷川秀善挑む 当選5回中曽根弘文の野望
(日刊ゲンダイ 2010/8/7)

狙いは参院議長

参院自民党で「夏の乱」が勃発した。これまで無投票で決まってきた議員会長選に、中曽根弘文・前外相(64=伊吹派、当選5回)が立候補を表明。谷川秀善・参院幹事長(76=町村派、当選3回)との一騎打ちとなったのだ。投開票は11日。
今回の会長選びは、参院副議長となった尾辻秀久・前議員会長の後任を決めるもの。当初は町村、額賀、古賀3派の調整で谷川の昇格が固まりかかった。「世代交代を進めたくない森喜朗や古賀誠らロートル組が裏で絵を描いたのは間違いない」(自民党関係者)とみられている。これに対して、世代交代や党内改革を進めたい中堅・若手が反発し、中曽根を担ぎ出したのだ。

「中曽根を口説いたのは山本一太・元外務副大臣や丸山和也参院議員ら無派閥の中堅・若手です。これまでの参院自民は“幹雄ハウス”といわれたほどで、青木幹雄・元参院議員会長の影響力が絶大でした。そのドンの引退で重しが取れた。派閥連合の動きで無投票で谷川になったら、参院自民の古臭いイメージは変わらない。そこで改革勢力であることをアピールしたい山本らが、当選5回の中曽根を引っ張り出したのです」(前出の自民党関係者)
とはいえ、谷川優位の情勢は動かない。「ダブルスコアだよ」(ベテラン秘書)という声も聞こえてくる。それでも中曽根本人は意欲満々だった。5日、党本部で行った緊急記者会見で「私自身、5期目の当選をさせていただいた。(議員になって)24年になるが、その経験を生かして、身を捨てて、新しい時代にふさわしい参院自民党づくりの先頭に立っていきたい」と決意表明したのである。

負け戦と分かっていながら出馬要請を引き受けた中曽根の狙いは何か。政治評論家の浅川博忠氏はこうみる。
「これまで科技庁長官、文相、外相と何度も閣僚経験のある中曽根さんの最終的な狙いは参院議長。5年間も首相を務め大勲位となった父親(中曽根康弘元首相)に少しでも近づきたいのです。そのためには登竜門となる参院議員会長をやっておかねばならない。今回は負けたとしても、高齢で失言の多い谷川さんがいつコケるかもしれない。そうなれば出馬実績がモノをいい、次を狙える。そんな思惑があって、山本氏らの要請を引き受けたのでしょう」
改革というきれいごとの裏に、それぞれの打算、思惑が隠されている。

政治家なんて、しょせんそんなものだ。