バカ息子逮捕でバレた 森喜朗は永田町でひとりぼっち

(日刊ゲンダイ2010/8/10)

小沢や亀井はもちろん 自民党議員にも相手にされない

かつてのキングメーカーも、落ちぶれたものである。元首相の後継と目された長男が、酒気帯び運転で事故を起こし逮捕されたのだ。普通なら永田町は大騒ぎである。親父の進退が問われる事態に発展してもおかしくなかった。それが今回は、「あ、そう」という感じなのである。
捕まった森祐喜は45歳。妻と子がいるオッサンだ。父・喜朗の責任まで問うのはどうか、となるのも分からないではない。「人格が違う」と言えばそれまでだ。

事故発生のタイミングも幸いした。臨時国会は閉会し、政界は夏休み同然の状態である。森本人も、大好きなラグビーの盛んなニュージーランドに出かけていた。国会で追及されたり、メディアに追い掛け回されることはない。
それでも、森が依然として政界で力を持っていれば、ワーワーと突っつかれたはずである。いくら自民党が下野しているとはいえ、小泉、安倍、福田、麻生と4代にわたる自民党政権の後見人を気取った“大物”だ。息子の不祥事は大スキャンダルである。「森さんは、もう表舞台から消えた人です。力の源泉だった派閥は形骸化し、“盟友”だった青木幹雄元参院議員会長も引退した。議員会館にも顔を出さないし、森さんを頼る政治家は皆無です。11日の参院議員会長選挙では、町村派の谷川秀善参院幹事長が敗れる波乱まで予想されている。力の衰えは隠せません」(自民党事情通)

昨年夏の衆院選、森は子分をほったらかしで地元に張り付き、恥も外聞もなく、自分の選挙に没頭した。
自分の子どもより年齢が若い田中美絵子候補(当時33)を「あの女の子には仕事ができませんよ」と嘲(あざけ)り、カメラを向けるマスコミを「撮るな」と恫喝。それでも4500票差近くまで追い上げられ、田中の比例復活当選を許した。
「あれで森の政治生命は終わったのです。選挙に弱い政治家は、自分のことに手いっぱいで周りが見えなくなる。実際、谷垣体制で森の出番はなくなった。小沢と亀井が仕掛ける政界再編では自民党側のキーマンのひとりといわれますが、行動を共にする議員は少ないでしょう。大きなことはできませんよ」(政界関係者)
息子の逮捕で寂しい現実があらわになるとは、何とも皮肉である。