【沖縄と官房機密費(下)】証言は時代のけじめ 佐藤優のウチナー評論<133>


渡瀬夏彦の「沖縄 チムワサワサ 日記」  2010年08月08日  http://p.tl/musH


 8月4日、衆議院本会議で鈴木宗男外務委員長(新党大地代表)に対する永年在職二十五年の表彰が行われた。この席のスピーチで鈴木氏は、「同僚議員の皆さん、時代のけじめをつけることは、国策捜査によって行うのではなく、国民によって選ばれたわれわれ国会議員が、政治主導によって行うべきではないでしょうか」と呼びかけた。7月21日のテレビ番組で鈴木氏が、1998年の沖縄知事選挙において、自民党が推す稲嶺恵一氏(元知事)の陣営に内閣官房機密費(報償費)から3億円が渡されたと証言したのも、「時代のけじめ」をつけるためなのだと筆者は見ている。それでは、この問題に関する筆者と鈴木氏の踏み込んだやりとりについて記す。

 

佐藤「内閣官房機密費は年額12億円でしょう。3億円は額が大きすぎませんか」


鈴木「小渕(恵三首相)さんは『外務省枠があるから、足りなければそれを使え』と言っていた。当時、外務省から裏で20億円の外交機密費(報償費)が官邸に上納されていたからね。3億円なら出せる」

 外交機密費は、首相の外交活動のために用いるという口実で外務省から首相官邸に秘密裏に上納されていたはずだ。沖縄は外国ではない。沖縄での民意を、機密費を用いて、当時の自民党政権に都合のよい方に誘導するなどということは、民主主義の原則からしてあってはならないことだ。さらに鈴木氏と筆者のやりとりについて記す。

 

佐藤「稲嶺さんは、TBSのテレビ番組で、『お金にはまったくタッチしていないし、そのようなことはまったく知らない』とコメントしています。真相はどうなんですか」

 

鈴木「佐藤さん、稲嶺さんがそんなことを言っていると天国にいる小渕さんが知ったら悲しむよ。もちろん稲嶺さんは候補者だから、直接カネには触っていないはずだ。ただし、(首相)官邸から物心両面の支援を受けたことを稲嶺さんは知っている」

 

佐藤「物心の物とは、カネのことですか」

 

鈴木「そうだ。だから、知事に当選した後、稲嶺さんは、首相官邸にやってきて、小渕総理にお礼を言ったんだ。あのとき、よかれと思って、沖縄に機密費を流した。しかし、機密費は選挙のために使うカネではない。権力の中枢にいて、私は感覚が麻痺していた。反省している」

 

筆者は鈴木氏の反省の弁を額面通りに受け止めている。そして今、鈴木氏はリスクを負って真実を証言し、「時代のけじめ」をつけようとしているのだ。(作家・元外務省主任分析官)