現職官僚、機密費巡り出廷へ 情報収集の一端明かす方向

(asahi.com 2010年8月13日6時41分) http://bit.ly/9t1wLc


 大阪地裁で審理中の内閣官房報償費(官房機密費)の使途公開訴訟で、その使い道を知る内閣総務官が機密費を投じた情報収集活動の一端を明かすことが関係者への取材でわかった。機密費をめぐって担当官僚が法廷に立つのは異例。原告側は「機密費への国民の疑念が深まる中、国が一定の説明は避けて通れないと判断したのだろう」とみている。

 証言するのは2006年から内閣総務官を務める千代幹也(ちしろ・みきや)氏(57)で、首相官邸に保管される機密費の管理や出納簿作成などを担当している。大阪市の市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーが機密費の使い道を公開するよう国に求めた訴訟で、地裁が13日に千代氏を証人として法廷に呼ぶことを決めた。

 関係者によると、千代氏は事前に地裁に提出した陳述書に基づき、証言の冒頭で機密費の性格と重要性を強調。他国の利害が複雑に絡む問題やテロに関して「生きた情報を得ることが不可欠」とし、こうした情報を提供した人物のことが公になると内閣が信頼感を失い、国益が損なわれるなどと主張するという。

 そのうえで千代氏は機密費の種類について(1)官房長官が自ら管理し、政府に協力した人物に直接手渡す政策推進費(2)情報提供者への謝礼や政府協力者との会合に使われる調査情報対策費(3)政府協力者の活動を支援する活動関係費――があると説明。政策推進費については「官房長官の『高度な政策的判断』によって機動的に使う必要がある」として、領収書をもらわないケースが生じることを明らかにするという。

 政府高官が協力者らと密会する場所についても言及。秘密が保たれるように、長時間かけて店側と信頼関係を築く▽入り口が複数ある店を選ぶ――といった対応をとっていることを述べるとみられる。他国の関係者らへの贈答品の内容、価格も業者と相談しながら決めていることや、ハイヤーの中などで政府協力者から重要な情報を聞き出すことがあるために信頼できる特定の運転手に送迎を頼んでいる現状も明かすという。

 千代氏は朝日新聞の取材に対し、内閣総務官室を通じて「コメントは差し控えたい」としている。(阪本輝昭)