検察審査会に翻弄される「特捜部」

(リベラルタイム 2010年8月13日) http://bit.ly/9cSjKq
  
 小沢一郎民主党前幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書への虚偽記載事件で、東京第一検察審査会は七月八日、二〇〇七年分について不起訴とした東京地検特捜部の処分について「不起訴不当」と議決した。
 一方で、東京第五検察審査会は〇四年、〇五年分の容疑について、四月に「起訴相当」とし、この議決にかかわった全員が交代となる八月以降に、二度目の議決をする方針だ。東京地検特捜部は、〇七年分については再び不起訴とする方向で再捜査を進める一方で、〇四年、〇五年分は「強制起訴」となることに備えて、公判資料の準備に入っている。
 同一線上にある事件で、不起訴と起訴の矛盾した準備を進めざるを得ないことに、現場の検事からは「二重人格のような作業だ」と、溜め息が漏れる。 東京第五検審が再び強制起訴の議決を出した場合、特捜OBの「ヤメ検弁護士」が検事役になる可能性が高く、小沢氏側の主任弁護士も「ヤメ検」が務める公算が高い。そのため、検察は公判資料作成にも神経を使っている。「公判で捜査の不備を指摘されたら、堪らない」(特捜関係者)からだ。
 小沢氏の事件について、特捜部はもともと「有罪・無罪の確率は五分五分」という見方で、起訴に積極意見だった。しかし、最高検や東京高検が「小沢氏が明確に関与した証拠が薄い」としてこれを認めず、嫌疑不十分で不起訴となった経緯がある。このため、不起訴へ向けた再捜査と、起訴に備えた公判準備が同時に進むことに「この事件の本質を表している」(検察幹部)という見方もある。
 現場からは「過去の事件の後始末で、夏休みが潰れるのは空しい」という声が漏れている。

リベラルタイム9月号「confidential」