[官房機密費問題]現役官僚が証言拒否した本当の理由

(日刊ゲンダイ2010/8/17)

"身内"にもバラまかれていたのか
政府の“裏金”「官房機密費」を知り尽くした現役官僚の法廷証言は案の定というか、拍子抜けだった。肝心な部分は一切答えず、従来の「公表すれば国益を損なう」という答弁に終始したからだ。「おトボケ」「隠蔽」は官僚のオハコとはいえ、なぜここまで証言拒否の姿勢を貫いたのか。
13日に大阪地裁の証言台に立った千代幹也内閣総務官(57)。安倍晋三官房長官時代の06年7月以来、7人の長官を補佐してきた「金庫番」だ。
「そもそも千代総務官が法廷で強調したように『国益』のために機密費が使われていたら訴訟は起きていません。自民党政権下でスーツ代や餞別(せんべつ)などデタラメな使い方をしていたことが分かったから『公開しろ』となったのです。千代総務官も国家公務員なら、詳細を明らかにする方が『国益』にかなっているはずですよ」(民主党関係者)
今の親分の仙谷官房長官から「言うな」と厳命されていたのかは不明だが、千代総務官はなぜかたくなに証言を拒んだのか。“本音”を探るヒントは共産党が02年に公表した機密費の内部資料にある。
これを見ると、90年代初めの出納簿には「官房長官室手当」「秘書官室手当」名目で毎月110万~120万円のカネの記載がある。当時の内閣参事官室主席参事官が離任した際は背広と30万円の餞別が支出されているほか、旧総理府(現内閣府)の課長や室長クラスの離任にも30万~50万円の餞別が支払われているのである。
「官房長官を補佐する現場の官僚にも『ヤミ給与』的なカネとして機密費が使われていたのですよ。少なくともこうした慣習が長く続いていた可能性は否めない。千代総務官が固く口を閉ざしたのも、身内(官僚)を守るためだったのではないか」(事情通)
今でも現場の官僚が機密費を受け取るケースがあるのか。内閣府に確認すると「答えられません」(担当の会計課)という。
機密費問題の闇は深い。