98年知事選に機密費 稲嶺陣営へ 鈴木氏「3億円投入」

(琉球新報 2010年8月18日)  http://bit.ly/959XMR



【東京】鈴木宗男衆院議員は18日までに本紙取材に対し、大田昌秀元知事と稲嶺恵一前知事との事実上の一騎打ちとなった1998年の県知事選挙で、外務省から上納されていた外交機密費を含む官房機密費から3億円が政府側から稲嶺陣営側に渡っていたと証言した。
当時の小渕恵三首相は鈴木氏に「沖縄は金がかかる」と沖縄側からの要求を示唆、金額は当時の官房長官秘書官にも再確認した。一方で機密費を管理していた当時の官房長官だった野中広務氏は選挙への機密費投入を一切否定した。

 鈴木氏は当時、野中官房長官の下で官房副長官を務めていた。機密費が選挙に使用されたことについて鈴木氏は「機密費は選挙に使うべきではない国民の税金が原資。使う場合は公が中心で選挙は私の部分だ。自民党時代の悪(あ)しき慣例だ」と自戒を込めて話し、11月の県知事選挙に再び機密費が使用されることのないよう警鐘を鳴らした。

 鈴木氏の証言について、野中氏側は「鈴木氏は官房長官ではない。当時の(機密費支出の)責任者の自分がその事実はないと言っているので、どちらを信じてもらうかだ」とあくまで知事選への機密費提供の事実はないと強調した。その上で野中氏の事務所からの資金5百万円の提供があったと説明した。

 機密費投入の理由について鈴木氏は「当時も今も、沖縄が特別な位置付けとされているのではないか」と述べ、普天間飛行場の県内移設など、基地問題で政権の方針に沿う候補者の勝利が目的だったと指摘した。
 野中氏は活用される機密費の月額について、最高で7千万円だと説明。一方、鈴木氏は月に2回の資金補充があり、最高1億4千万円あったと話した。(滝本匠)

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聞いたこともない/稲嶺恵一前知事
 稲嶺恵一前知事は琉球新報社の取材に対し、「そのような話は知らない。聞いたこともない」と述べ、選挙資金に官房機密費が拠出されたことは把握していないと説明した。

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<用語>内閣官房報償費(機密費)
 「国の事務または事業を円滑に遂行するため機動的に使用する経費」とされる。国費から支出し、取り扱い責任者の官房長官が政治的判断で支払う。国内外の極秘の情報収集や、海外で邦人が巻き込まれた事件の非公式交渉などのために使うのが主な目的とされるが、政府は使途や支出先を公開していないため、不透明との指摘が出ている。

 ※鈴木宗男氏と野中広務氏の一問一答は本紙2面に掲載しています。