激変代表選 世論も小沢 総理の器は一目瞭然 (日刊ゲンダイ2010/9/4)

民主代表選 2日で決定

─世論は「小沢の政治とカネ」から「菅の愚鈍無能への失望」に急速に変化した
─一目瞭然となった共同記者会見と公開討論会後の全国民の支持不支持

閣議後の記者会見(3日)で、蓮舫行政刷新担当相がこんなことを言い出した。
「(代表選は)議論の方向が政策論になってきた。(菅さんは政治とカネの追及を)そろそろおやめになった方がいい」

これはもう、「勝負あった」のではないか。
蓮舫といえば、菅陣営の人寄せパンダ。公務そっちのけで、菅の応援に走り回っているのは周知の通りだ。そんな“チアリーダー”も菅の執拗な「政治とカネ」批判にはマユをひそめたのである。
代表選は1日に共同記者会見、2日に公開討論会が行われた。国民の多くは政策論争を期待したが、この席で「政治とカネ」批判をエスカレートさせたのが菅だ。「カネまみれの政治文化を変える」「カネと数を重視する政治は古い」「小沢さんにはお金と数の論理が色濃くある」……。
自分が何をやるかよりも、小沢批判をまくし立てた菅は「小沢さんはどんな総理になるのか。予算委員会に座っている小沢さんは想像できない」と言って、健康問題に不安があるかのような“挑発”までした。
これには有権者も呆れたものだが、“身内”の蓮舫も一言、言わずにはいられなかったのだろう。
法大教授の五十嵐仁氏(政治学)は「現職総理なのだから、自分は何をやりたいということを打ち出して欲しかった。逆に言えば、これをやりたいというものがないのでしょう。だから、相手の批判、中傷に終始する」と言っていたが、当たっている。
2日間の会見、討論会で、菅直人という政治家の正体、器、卑しさ、中身のなさなどが、すっかり露呈したのである。

◆反吐が出る菅の品性の卑しさ
「菅さんは正月に小沢邸に行っている。それなのに、いまになって、『政治は数』の小沢流を批判する。もっと言えば、一時はトロイカ体制の受け入れを明言し、小沢さんに頼り、延命しようとした。それなのに、今は手のひら返しで、揚げ足取りです。これじゃあ、誰もついていきませんよ」(民主党中堅議員)
権力のためには誰にでもすり寄る。そのくせ、延命のためには切り捨てる。これが菅の品性だ。菅は普天間問題でも小沢に噛み付いたが、これもとんでもない論法だった。
「沖縄や米国がともに納得する合意を目指す」という小沢に対して、「日米合意を白紙にすると大混乱になる。小沢さんは当時、幹事長で、この合意に責任がある」と言い出したのである。
小沢は「白紙にする」なんて一言も言っていないし、菅だって当時は副総理。普天間迷走の責任者のひとりだ。それなのに、小沢の責任にだけ言及し、「自分は内政や財政をやっていた」とか言うのである。ノンフィクション作家の溝口敦氏は「菅首相を見ていると反吐(へど)が出る」と言う。
「最近は笑みを絶やさないでしょう。本当はイラ菅で、これまでは無愛想だったのに急に笑顔をつくっている。こういうことで大衆をひきつけられると思っているのでしょう。大衆を愚弄していますよ。首相になっても、何をやりたいのかがさっぱり見えず、実際、自民党時代に逆戻りのような政治しかやっていないのにただ笑顔を見せている菅首相には反吐が出ます」
これが識者の見方なのである。

◆反小沢の世論が会見で微妙に変わってきたゾ
一方の小沢はどうか。共同会見、公開討論会、さらに矢継ぎ早のテレビ出演で、確実にポイントを稼いでいる。経済アナリストの菊池英博氏は「菅首相は目が泳いでいる。小沢さんはどっしりしている。どちらに風格があるかは一目瞭然だ」と言ったが、ある女性作家も同調する。
「朴訥(ぼくとつ)としたしゃべり方ですが、小沢さんの口からは具体的に、日本をどうするかが語られている。小沢さんは無愛想で、機嫌が悪いと何も言わないイメージだったから、驚いた。こういう場に出てくると、実に堂々としている。器の大きさを感じました」
と言うのである。
こうなると、反小沢の世論は微妙に変わってきたのではないか。大新聞の世論調査では小沢支持はどこも1割台だが、ネットの調査ではライブドア62・8%、スポニチネット80%、gooニュースネット63・9%と軒並み高支持率だ。ロイター通信のオンライン調査は4日朝9時で、小沢8477票、菅8162票だった。先月30日は両者拮抗だったのが、小沢がリードに転じている。


◆小沢圧勝の雪崩現象もあり得る展開
ジャーナリストでビデオニュース・ドットコム代表の神保哲生氏はこう言う。
「閉塞感がある中で、菅首相への失望、小沢さんへの期待が高まっているのは間違いありません。政治とカネの問題はしぼみ、小沢待望論が台頭しつつある。しかし、だからこそ、小沢さんにはきちんと国家像を語って欲しいと思います」
あまりにも菅がダメだから、急に台頭してきた“小沢ブーム”がちょっと心配になるほどだというのである。菅の頼みは国民世論だが、それが大きく変わりつつある。ヘタしたら、小沢雪崩現象になってもおかしくない。前出の菊池英博氏はこう言った
「菅首相は今からでも遅くないから、代表選を辞退すべきです。共同記者会見を見てそう思いました。語るべき政策、ビジョンがないからです。しかし、菅さんは厚生大臣としては立派な功績を残したように、総理でなければ十分やれる。小沢首相の下で、どこかの国務大臣をやればいいのです」
各メディアの票読みは依然、僅差で小沢リードというものが多い。しかし、この差はドンドン広がっていく。もともと、器が違う小沢と菅だ。勝負はあっという間についたのも当然という気がする。