無能無策の菅のままで本当にいいのか 民主党員はデマに踊らず投票を

(日刊ゲンダイ2010/9/9)

なぜ反小沢を煽るのか大新聞 「政治とカネ」「クリーンでない」は検察のデッチ上げたデマである


「首相にふさわしい菅66%小沢18%」と大々的に流す世論調査に心ある庶民は暗澹たる気分
いい加減、心ある庶民はうんざりしているのではないか。代表選の告示後、小沢一郎は精力的にテレビ出演をこなした。「政界の黒幕」と言われ、普段は仏頂面イメージの小沢本人が雄弁に自らの政策を語る姿に驚いた視聴者も多いだろう。

小沢が掲げる「日本一新」プランについて、もっと突っ込んだ議論を期待して見ていると、決まって司会役のアナウンサー、キャスターが水を差す。紋切り口調でこう議論を遮ってしまうのだ。「ところで『政治とカネ』の問題ですが……」
それじゃあ、逆に司会役に聞きたい。現在、検察審査会で小沢が問われている「政治とカネ」の被疑事実について本当に正確に理解しているのか、と。恐らく、誰ひとりとして満足に答えられないはずだ。
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏も、うんざり組のひとりだ。6日付の毎日新聞コラムで〈またぞろ「政治とカネ」という言葉がそちらこちらで飛び交う、と思うとうんざりしますね〉と、こう書いていた。

〈その言葉を使っている当人が「政治とカネ」の事実関係について正しい知識もなく、ある種のレッテル張りに使っているケースが多くて不愉快だ〉

そもそも、この事件は検察がデッチ上げたデマに近い。
小沢が問われているのは「政治資金規正法」の虚偽記載容疑だ。本来なら、04年分の収支報告書に記載すべきだった土地の購入費約4億円を、翌年の収支報告書に記載をズラした、いわゆる「期ずれ」の問題でしかない。本来なら形式犯として事件にもならず、ましてや、いきなり秘書3人の逮捕なんて、あり得ない展開なのだ。
“小沢の犯罪”を何としてでも摘発したかった検察は、土地購入費に水谷建設からのウラ金が紛れ込んでいると見込み、強制捜査に踏み切った、とみられている。が、検察のアテは外れ、血眼になって捜査しても何も出ず、悲願の小沢逮捕はかなわなかった。それだけ“火のない”事件ということだ。


◇大政翼賛を想起させる異様な光景

改めて鳥越俊太郎氏に聞いた。
「強制捜査後、あたかも小沢氏の地元の胆沢ダム建設をめぐり、小沢サイドに裏金が渡ったかのような報道があふれました。検察は鹿島をはじめ、名だたるゼネコンに一斉捜索を仕掛けましたが、出した結論は『不起訴』。誰に書かされたのかは知りませんが、メディアは結果的にウソを書いていたわけです。その反省のそぶりもみせず、いまだにメディアは小沢氏に『政治とカネ』というレッテルを張る。『なんとなく、ダーティー』というイメージを増長させているのです。中世の魔女狩りや、大政翼賛を思い起こさせる異常な光景です。ハッキリ言って、小沢事件は、メディアが作り出した“虚構”に過ぎません」
検察とメディアには、旧体制の既得権益を排除しようとする小沢を潰す狙いもあった。
その思惑を隠し、ちっぽけな事件を一大疑獄のように騒ぎ立てたのだ。結果は何も出てこなかった。
それなのに、いまだに「政治とカネ」で小沢潰しを続けている。どこまでも執念深く、度し難い連中である。


◇デマから雪だるまに膨らんだダーティーな虚像
そんな小沢嫌いの無反省メディアが「首相にふさわしいのは菅66%、小沢18%」と大々的にタレ流す。
代表選の中盤情勢調査でも、国会議員50人、党員・サポーター票の3分の1の情勢がハッキリしないのに、「菅優勢」と断定的に報じる。狙いは明らかだが、さらに小沢支持議員に対する“脅迫記事”で追い打ちをかけている。
小沢支持を鮮明にした新人議員が地元の党員・サポーターの説得を続けていると、「支持者から突きつけられたのは、次期衆院選での『絶縁状』だった」と書く。国会議員にとって「次の選挙で票は入れない」という有権者の言葉は死刑宣告に等しい。しかも、相手は地盤の弱い新人議員だ。支持者の声を代弁する形を取って、猛烈な圧力をかけているのだ。

「菅・小沢両候補の主張を聞いて、小沢氏の『官僚の壁を破った国民主導の政治を実現させる』という力強い訴えに、中間派議員の多くも心の中では小沢支持に傾いています。しかし、いわゆる『世論』が、それを許そうとしない。小沢支持を表明した議員の事務所には『アンタには二度と投票しない』といった電話やメールが殺到するのです。明日は我が身かと思うと、正直、判断を躊(ちゆう)躇(ちよ)しますよ」(中間派の民主党議員)
そんな小沢憎しの報道に毒され、作り上げられた民意を菅陣営はフル活用。時には菅首相が自ら中間派議員に電話を入れ「民意とかけ離れた結論を民主党が出せば、民主支持が離れてしまう」と説得しているという。大新聞が反小沢を煽り、大メディアが報じる「民意」を菅陣営が利用するという“共存関係”が出来上がっているのだ。


◇気概を込めて次の日本の顔を決めろ
まったく、おかしな話ではないか。検察のデマから始まった小沢の「政治とカネ」の虚像が、メディアを通じて雪だるま式に膨らみ、今や一国のトップを争う代表選を左右しているのである。これが民主国家のありさまか。九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)もこう嘆く。
「いったい、この国のメディアは政治をどうしたいのか。
どちらの候補が、政権交代に有権者がかけた願いをかなえてくれるのか。代表選をめぐる報道を見ても、多くの有権者が抱える疑問に答えようとしていません。伝わってくるのは、小沢嫌いの感情と、小沢VS.反小沢派の票読み分析のみ。国民の視線と完全にズレています。どちらの候補が世間受けするのか。このままでは、この国の首相を決める代表選が単なる人気投票に矮小化してしまいます。日本のトップを決める民主党議員はメディアや世論に流されず、政治家の気概を込めて投票すべきです」

残念ながら、国民の大半は代表選の投票権を持っていない。民主党の党員・サポーターは、次の日本の顔を決める重要な資格を持っているのだ。無能無策の菅政権続投で本当にいいのか。無責任極まりないメディアのデマゴーグに惑わされてはダメだ。今こそ「世論調査政治」に翻弄されず、自らの判断で貴重な一票を投じるべきである。