●厚労省文書偽造事件の判決要旨 

(共同通信 2010/09/10 21:35) http://p.tl/FJcR


 大阪地裁が10日、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた厚生労働省の村木厚子元局長に言い渡した判決要旨は次の通り。

 【争点】

 厚労省が、郵便料金の割引を受けることができる障害者団体とする証明書を、実体のない「凜の会」に発行したことについて、村木元局長が実行役とされる元係長上村勉被告に指示したかどうかが争われた。凜の会設立者倉沢邦夫被告が石井一衆院議員に証明書発行の口添えを依頼したのか、石井議員の依頼を受けた村木元局長の元上司が、便宜を図るよう指示したのかも争点となった。

 【争点に対する判断】

 倉沢被告が、石井議員に口利きを依頼するため議員事務所に2004年2月25日、アポイントを取ったことは信用性が高いとみられるが、実際に石井議員と面談した事実は、客観的証拠に反し、信用できない。

 2月25日以前に倉沢被告が石井議員に面談した可能性は完全には否定されないものの、事実と認定できるものではない。

 村木元局長の元上司が石井議員に対し、担当が村木元局長であることや公的証明書を発行する方向で処理するよう指示したとの点も、信用性が高いとはいえない。

 村木元局長の元部下が、倉沢被告が来庁した場合の対応を指示されたこと、凜の会の関係者が来ると告げられたことに関する供述も、完全に信をおけるものではない。

 捜査機関は倉沢被告を逮捕した時点で、倉沢被告の手帳を押収、公的証明書が作成されたことを認識していた。石井議員の名前を出して厚労省に働き掛けたことや石井議員へ倉沢被告が口利きの依頼をしたこと、凜の会の案件が元上司から村木元局長、元部下に下ろされたとする供述調書はすべて、不正の認識を有した後に作成された。

 捜査の出発点の一つとして、倉沢被告の手帳の2月25日の欄に、「13・00 石井」の記載があるが、記載の日時に倉沢被告と石井議員が面談した可能性は(ゴルフをしていたという)ゴルフ場からの回答で否定されており、倉沢被告が石井議員と面談していた事実を認定せしめる証拠とはならない。

 2月25日に倉沢被告と面談がないという石井議員の証言は信用でき、それ以外の日時にも倉沢被告から依頼がなかったとの証言も、ただちに信用性が排斥される事情もみられない。

 【共謀の認定】

 検察官主張事実のうち、元上司の村木元局長に対する指示、元局長の上村被告らに対する指示など、元局長と関係者とのやりとりはいずれも認定できない。さらに本件が石井議員から要請され、証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったとの事実も認定できず、元局長において犯行の動機があったと言えない。

 さらに上村被告が虚偽の稟議書を独断で作成していることなど元局長が犯行を行うことが不自然であることや、元局長の指示もなく上村被告が独断で証明書を作成しても不自然ではないことを示す事情もみられることから、上村被告が元局長の指示で証明書を作成した事実は認められない。そのほか証拠上認められる事実を総合しても元局長が上村被告らと虚偽の証明書を作成し「凜の会」側に交付するとの共謀があったと認定できない。




●【郵便不正】石井一議員「検察必要か問題提起した」
(産経ニュース 2010.9.10 21:10)  http://p.tl/VLVZ


 「一体この事件は何だったのかと言いたい。検察の存在が必要かどうか社会に問題提起した事件だ」。村木厚子元局長の無罪判決を受けて会見した石井一参院議員(76)は顔を紅潮させ、語気を強めた。

 石井議員は判決について「無罪になったのは当然」とし、「“議員案件”として私がかかわった事実がないと証明され、非常に気分がすっきりした」と感想を述べた。その上で「事実と違うことを認めるよう強要する捜査手法はおかしい。犯罪を製造しているようなものだ」と検察を批判した。

 一方、報道についても「マスコミは検察捜査の検証をするだけでなく、自らの報道の検証もすべきだ」と話した。



●【郵便不正】「強引な取り調べ明らかに」 日弁連会長が検察を批判
(産経ニュース 2010.9.10 19:20) http://p.tl/TVbJ


 厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)に大阪地裁が10日、無罪判決を言い渡したことを受けて、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は談話を発表。「検察官の強引な取り調べにより、あらかじめ描いたストーリーに沿った内容の供述調書に押印させるという違法な捜査が明らかになった」と検察側の手法を批判した。

 また、宇都宮会長は村木被告の逮捕・勾留(こうりゅう)が続いたことに関し「長期間休職をせざるを得ない状況に追い込まれ、回復できない損害を被った」とし、無罪主張の容疑者、被告に対する勾留・保釈の運用を改めるよう求めた。さらに、取り調べ全過程の録音・録画の必要性を指摘した。




●唇かむ大阪地検検事「何もコメントできない」
(読売新聞 2010年9月10日22時49分) http://p.tl/t1Pz


 予想された結果だったとはいえ、大阪地検幹部らは捜査を否定する無罪判決に悔しさを隠せなかった。


 同地検の大島忠郁次席検事は8日の定例記者会見で、「主要な供述調書の証拠請求が却下されたものの、有罪を導くだけの証拠も採用されている」と語っていた。しかし、この日の判決はその望みを完全に打ち砕いた。

 判決後、同地検では小林敬検事正ら幹部が内容を精査。検事正室の明かりは、退庁時間を過ぎてもともり続けた。途中で一度退室した小林検事正は報道陣に対し、「何もコメントできない。控訴については判決文を読んで検討したい」と硬い表情で話した。

 捜査に携わった検事は「階段を上るような捜査の過程で村木被告が浮かんだ。取り調べが不当とは思わないが、裁判所に否定された以上、捜査に甘い点があったのか……」と唇をかんだ。ある検察幹部は「無罪は予想されたが、主張が全面的に否定されたことは残念」と顔をしかめた。