小沢一郎は勝ったのか負けたのか  (日刊ゲンダイ 2010/9/14)

今度の代表選の結果で、小沢一郎の政治生命がオシマイになると思ったら大間違いだ。小沢が失ったものはほとんどないし、むしろ得たものの方が大きかった。これがプロの評価だ。

まず、菅の仮面をひっぱがし無能の素顔を浮き彫りにしたこと。この功績は大きいし、TVに出まくったことで小沢のイメージも一新された。「これまではどちらかというと、隠れる、潜るイメージだったのが、マイクを持って街頭に立った。テレビに出て政策を語った。多くの人が小沢氏の“意外な一面”に驚いたのではないでしょうか。代表選に出たことで、小沢氏はポスト菅の最有力候補に躍り出たと思います」(野上忠興氏=前出)
政局を読むことにかけては天才的な戦略家、小沢のことだ。もちろん、菅が早晩、行き詰まることは読んでいる。前出の浅川博忠氏は「今度の代表選は第1幕に過ぎない」と、こう言うのだ。
「小沢さんは幹事長を辞任した時に、地元岩手へのビデオレターで『自分自身が先頭に立って頑張ってまいりたい』と挨拶した。その意味が代表選出馬であり、それをステップにした天下取りなのです。裏を返せば、小沢一郎という政治家は、それくらい先を読んで動く。しかも、今後の小沢さんにはいくつもの逆転カードがあるのです」
小沢の巻き返し、第2幕は、人事での揺さぶりだろう。これだけ代表選で国会議員票を集めたのだ。もちろん、菅は無視できない。小沢排除の急先鋒、仙谷官房長官や枝野幹事長の交代を求め、代わりに自分の息がかかった人材の登用を求める。政治ジャーナリストの泉宏氏は「その場合、原口一博幹事長だろう」と言う。

◆小沢反撃の第3幕が政界再編の大仕掛け
菅がそれをのまなければ、お手並み拝見を決め込む。これが第3幕だ。部分連合とかホザいている菅だが、野党に人脈がない以上、ねじれ国会は乗り切れない。それを見越して、小沢は動く。
「おそらく、菅政権は予算編成でつまずき、通常国会の冒頭で処理するはずの補正予算も財源問題で悶絶する。しかし、自民党幹部はいま、解散はイヤだという。そうなると、予算成立と引き換えに、来年春の統一地方選とダブルという展開になるかもしれません」(政界関係者)
その場合、無能の菅で選挙を戦えるのか。当然、そういう議論になる。代表交代となれば、今度は両院議員総会で採決になる。国会議員票だけで決まる。もちろん、小沢一郎だ。
しかし、菅が政権にしがみつく可能性もある。その場合、小沢は党を飛び出し、政界再編を仕掛ける。いずれにしたって、小沢は何だってできるのである。
「自民党や公明党にパイプがある小沢氏が50人を引き連れ、離党すれば、政界再編になる。小沢新党が新政権のイニシアチブを握る可能性も十分です」(浅川博忠氏=前出)
こういうときこそ、小沢一郎という政治家は本領を発揮する。真の勝者は誰になるのか。少なくとも、菅でないのは確かである。