円高進行野放しで企業は海外脱出、国内空洞化で失業者があふれる

(日刊ゲンダイ2010/9/15)

菅再選が決まった直後、東京外為市場では15年3カ月ぶりの水準となる1ドル=83円09銭まで円高が進んだ。「菅政権では口先介入しかできないと、足元を見られた」(市場関係者)のが原因。その後も為替の基調は変わらず、円相場は82円台に突入した。経済オンチ、無策の菅政権の続投で、円高はますます進む。過去最高値の79円を突破するとの見方まで出ているほどだ。
これはヤバイ。ただでさえ国際競争力の落ちている自動車や家電など輸出メーカーがこぞって生産拠点を海外の新興国に移転する動きに拍車がかかる。
「たとえば自動車です。10月以降はエコカー補助金の打ち切りで、大手各社は大幅減産を打ち出しています。そこへ円高の追い打ちですからたまらない。スズキは静岡県内で計画していた工場建設を断念、タイ日産の社長は“小型車は円高の日本で造る時代ではない”と発言した。日本メーカーのブランド力が低下する中で、勝ち残るには低コストしかない。そこで海外移転が進み、国内の空洞化が一段と加速する。その結果、雇用崩壊が深刻化するのです」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)
空洞化は大企業の下請け、孫請けの部品メーカーなどを直撃する。その大半は中小・零細だ。6月に都内の金属プレス加工会社「ヤマイチ」(資本金3800万円、従業員113人)が民事再生法を申請した。主要取引先のキヤノン・グループが中国に工場を移転し、取引が減り、最終的に資金繰りが逼迫した。負債は8億9000万円だった。こうした悲劇が全国各地で繰り広げられることになる。
「その結果、5%台で高止まりしている失業率がグンと跳ね上がる。さらに超氷河期の大学新卒の就職状況も一段と悪化。15歳から24歳までの若者の失業率は今の10%をはるかに上回ることになります。昭和初期の小津安二郎の映画『大学は出たけれど』の再来です」(経済ジャーナリスト)
「1に雇用、2に雇用、3に雇用」と口先だけの菅政権が続く限り、雇用環境は確実に悪化する。