また無罪判決 デッチ上げ操作は検察の“お家芸”か

(日刊ゲンダイ2010/9/17)

取り調べの全面可視化はどうなったのか
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また検察のデタラメ捜査が否定された。北九州市の北九州八幡東病院を舞台にした「つめ切り」事件の控訴審判決で、福岡高裁はきのう(16日)、傷害罪に問われた元看護課長、上田里美被告(44)に逆転無罪を言い渡した。無罪判決は、つい先日も大阪地裁で虚偽有印公文書作成・行使罪に問われた村木厚子・元厚労省局長(54)に出たばかり。検察は冤罪被害者を何人出せば気がすむのか。
注目されたのは、福岡高裁が、上田被告の供述について「捜査官の意図する内容になるよう押しつけられたか、誘導された疑いがあり信用できない」と認定したことだ。
「法廷証言を重視し、供述調書を却下したのは、村木元局長の裁判と同じ構図です。ズサンな検察の取り調べ手法を裁判所が厳しく指摘したのです」(司法記者)
検察が取調室で容疑者をギュウギュウ締め上げ、筋書きに沿った供述をさせる――。全国の検察で、こうした取り調べが日常的に行われてきたことは間違いない。取り調べの全面可視化が一刻も早く求められているのだが、今どうなっているのか。
「民主党は09年のマニフェストには全面可視化を掲げていましたが、菅首相になった参院選のマニフェストにはなぜか盛り込まれていません。千葉法相は当初、実現に前向きな意向を示していたが、発言内容はどんどん後退。ついには『現実的な検討をする』とヤル気が消えた。今年6月には法務省が『全事件可視化の必要性は疑わしく、現実性にも欠ける』と“反対姿勢”を鮮明にする中間報告もまとめている。政府として本気で可視化に取り組む気があるのか疑問です」(法曹界関係者)
大阪・枚方談合事件で「拷問」同然の取り調べを受け、可視化導入を訴えている小堀隆恒・枚方市顧問はこう言う。
「法務省の中間報告では『費用がかかる』などと書いてあったが、1台10万円ほどのカメラを設置しても数億~数十億円。1兆~2兆円かかる話ではありません。可視化の方向に流れつつあるとは思いますが、まだ時間がかかりそうな感想です」
こうしてモタモタしている間にも、冤罪被害者が出ている可能性だってあるのだ。検察の暴走を未然に防ぐためにも、新たな法相は早く可視化に取り組むべきである。