インタビュー:小沢氏勝利なら年内解散の可能性=民主・石井氏

(asahi.com 2010年9月7日21時25分) http://bit.ly/drB5Vd

[東京 7日 ロイター] 民主党代表選で菅直人首相の選挙対策本部長代理を務める石井一参議院議員は7日、ロイターのインタビューに応じ、選挙情勢について、僅差ながらも勝算の可能性を見通した。

 14日の投開票日まで残り1週間の情勢をみないとわからないとしながらも、国民世論とかい離した小沢一郎前幹事長が勝利すれば、政治とカネの問題で国会は立ち往生し、年内衆院解散・総選挙になると述べ、民主党政権の失墜につながる危機感を示した。

 現職首相と党内最大勢力のトップの全面対決は、選挙後の党内分裂のリスクが懸念されるが、石井氏は、党内分裂の事態には至らないと強調。菅首相には、再スタートでは、大幅な内閣改造と党人事の刷新を進言していることを明らかにした。

  <菅首相が僅差で勝利の公算>

 代表選はポイント制で、国会議員は1人2ポイントずつ持つ。地方議員は投票総数を100ポイントに換算し、各候補の得票数に応じて振り分ける。党員・サポーター票は300ポイント。衆院の300小選挙区ごとに集計し、各選挙区で最も得票が多い候補が1ポイントずつ獲得する。国会議員、地方議員、党員・サポーターの合計1200ポイント強の過半数を獲得した候補が当選する。

 中盤の選挙情勢について石井氏は、国会議員票は小沢氏と「イーブン」とする一方、地方議員と党員・サポーター票は「6対4で菅首相に有利」と見通し、全体では「50ポイント、100ポイントくらい離し、多少の差で勝てるのではないか」と見通した。ただ、14日の投開票日まで残り1週間の情勢をみないとわからないと慎重姿勢も崩していない。

  <選挙後の党内分裂はない>

 民主党両雄の全面対決で、選挙後の党内分裂の懸念も指摘される。菅首相の勝利が僅差であれば、安定的な政権運営も危惧されるが、石井氏は、選挙後の党内情勢に関しては、小選挙区制では「政党から出ていくことには相当勇気がいることだ」とし「党が割れたり、ガタガタすることはない」と強調。党内分裂の事態には至らず、選挙後は「一致結束した態勢ができる」と語った。

 そのうえで、石井氏は、政策面で菅首相と小沢氏に大きな違いはなく「ほとんど一緒。アクセントやニュアンスの違いだけだ」と指摘し、「手法は多少違うが、選挙が終われば、同じ政党で政権を維持していくために挙党態勢ができる」と見通した。

  <菅首相には、大幅な内閣改造と党人事刷新を進言>

 菅首相(民主党代表)再選の場合の内閣改造については、鳩山前首相の居抜き内閣を刷新し、「再スタートする時には、内閣と党人事は大幅に入れ替えるべき」と進言していることを明らかにした。「(菅首相も)かなりやるだろう」と見通したが、「脱小沢」の象徴として菅政権で抜擢された仙谷由人官房長官と枝野幸男民主党幹事長の処遇については不明とした。

 野田佳彦財務相については、円高対策などで財務省の言いなりになっていると批判的だが、同相の続投の可能性については立場ではないとして明言を避けた。

  <官僚組織解体では小沢氏に力量>

 菅首相と小沢氏の違いは、政治の手法と強調。菅首相は代表選の公開討論で「カネと数を重視する政治こそ古い」と指摘し、小沢氏を「資金的な強さ、仲間の数の多さ、カネと数の原理が色濃くあるのは私だけが感じていることではない」と真っ向から批判した。それについて石井氏は「そういう面もある」と述べ、「それは、今の新しい民主党の文化──カネ中心ではなく、数中心でもなく、クリーンな若い斬新な風通しのよい政党を目指している──」ことと逆行すると批判した。

 一方で、小沢氏の力量については「公務員の(総人件費)2割カットや、官僚組織を解体するという点では、小沢氏のほうが手腕を発揮するかもしれない」と評価した。

  <小沢氏首班なら、年内衆院解散の可能性>

 しかし石井氏は、政治とカネの問題で小沢氏が国会での説明を逃げ回ったことを問題視し、それが国民世論となって跳ね返っていると指摘する。世論調査での次期首相待望論が、菅首相続投の6割強に対して小沢氏が2割弱であることをを挙げ、「永田町の世論と国民の世論とが、かい離している。そのかい離を無視して、小沢氏を選んだら、解散に追い込まれ、たちどころに民主党内閣は吹き飛ぶ。その結果、(衆院での)300議席は100議席になる」と危機感を示し、民主党政権の失墜につながる小沢氏の選択はあり得ないと強調。

 小沢氏が勝利すれば、マニフェストや消費税、円高の議論の前に、政治とカネの問題で国会は入口で立ち往生し、「年内に解散総選挙になる」とけん制した。

 「剛腕」小沢氏なら、ねじれ国会を連立の模索で打開するとの見方もあるが、石井氏は「野党は応じない」と指摘。「みんなの党の渡辺代表は小沢氏とだけは組まないと明言している。公明党が政治とカネの問題をかかえる小沢氏と一緒になるとはまず考えられない。自民党のなかでも森喜朗元首相や古賀誠氏など力を持っていない」と実現性に疑問を呈し、小沢氏ならねじれ国会を乗り越えられるとの見方を「幻想だ」と切り捨てた。

 続けて石井氏は、小沢氏について、「オリンピックに出るのに予選で落ちている。オリンピック選手になるためには、もう一回予選してもらわないといけない。1年か1年半かみそぎをするか、国会で説明するか、それ抜きに、一挙にオリンピック選手だと出てくるところに無理がある」とはねつけた。

 (ロイターニュース 吉川裕子記者 リンダ・シーグ記者)