ああ菅直人、君に何の志がありや


週刊現代 永田町ディープスロート
(現代ビジネス 2010年09月17日) http://bit.ly/ajFXcU


ポストで釣るわ、スキャンダルは流すわ、過去の栄光にすがるわ

「カネの次は下ネタか。あいつらはただの左翼じゃない。連合赤軍だ。仮にも同じ党の仲間を次々にリンチして殺そうとしている。こっちは大人だから黙っているけど、向こうがその気なら代表選後の挙党態勢なんて無理に決まっている」(小沢支持の中堅代議士)

 小沢陣営が怒っている。仙谷由人官房長官や枝野幸男幹事長、小宮山洋子財務委員長らが、代表選前に小沢代表・幹事長時代の組織対策費を調べ上げ、「小沢封じ」を画策したというのは、もはや永田町では知らぬ者はいない。

それに次いで、今度は小沢氏の秘蔵っ娘・青木愛衆院議員が小沢氏と親密な関係にある、いや本当に親密なのは小沢氏の政策秘書で、一緒にホテルにも泊まっていると週刊誌が競って報じたのである。

 これらが菅総理陣営のリークであるという確証はないが、小沢陣営にとっては、このタイミングでスキャンダルが報じられた時点で菅サイドの仕業。そう信じて疑っていない。

 たしかに、菅陣営の最近の動きを見ると、小沢陣営が怒るのも無理はない。

 青木氏と小沢氏の関係について記事が出るらしいという噂が流れると、早速、菅陣営はそれを最大限に利用している。

「うちの議員は早い段階で小沢さん支持を打ち出しているのに、菅さん陣営の同僚議員からは『小沢さんのスキャンダルが出るから、支持を止めたほうがいい』と電話がかかってきた。どちらに入れるか決めかねている議員のところは、もっと露骨な働きかけがあると聞いています」(小沢支持派の議員秘書)

 この秘書が言うとおり、代表選が終盤になるにつれ、陣営や菅氏のやり方はまさになりふり構わず。

 橋本勉衆院議員(当選1回)が語る。

「菅さんからは2回、携帯に電話があり、岡田外相からも電話がありました。長妻厚労相などは、私が留守中にわざわざ地元(大垣市)の自宅まで訪問されたそうです。皆さん、『一緒にやっていきましょう』とおっしゃっていましたが、私は地元の声を聞いて、最後に判断するつもりです」

 そして、相手が簡単になびかないと見るや、ポストで釣ろうとする。ある1年生議員の所には菅氏本人から電話があり、

「今度は政務官の人事まで、私が決めようと思っているから」

 と告げたという。1年生議員に閣僚を約束することはさすがにできないが、要は自分を支持してくれれば政務官にはしてあげますよというメッセージだ。露骨な・利益誘導・型の手法である。

 菅氏があまりに頻繁に電話をかけまくっているので、思わぬ批判も小沢陣営からは上がっている。総理としての公務があるからと伸子夫人が議員会館を回ったり、地方議員に電話をかけたりしていたが、実際は菅氏も公務中に官邸の電話を使ってかけているのではないか、公私混同ではないか、という批判だ。

 菅氏から電話をもらったという1年生議員の一人は、本誌の取材に対して携帯の着信履歴を見せてくれたが、首相動静によれば、着信があった時間には、菅氏は官邸の執務室にいたことになっている。

 しかも、電話では「菅事務所です。総理と代わります」と言って、すぐに菅氏が出たといい、公務中に事務所の人間を官邸に呼んで多数派工作をしていたとなれば、小沢陣営の言う公私混同批判もうなずける。


■政策よりも悪口が得意

 だいたい菅氏は現職の総理なのだから、公務に専念し、堂々と小沢氏の挑戦を受けて立てばよかった。にもかかわらず、執拗なまでに「政治とカネ」で小沢氏を攻撃し、身内の蓮舫行政刷新担当相から「政治とカネの問題から、政策論議に移りましょう」と諫められたほど。

ただ、いかんせん政策論議になると途端に精彩を欠くのが菅氏の常だ。東京・新宿や大阪・梅田での立会演説会でも、菅氏の口から出るのは、市川房枝記念展示室を訪れて市民運動家としての自分の原点を確かめたとか、薬害エイズで官僚の壁を打ち破ったとか、過去の栄光ばかり。

 集まった小沢サポーターからは「昔の自慢話はいい」と厳しい声が飛ぶのも当然で、政策らしい話といえば、お決まりの何の具体性もない「一にも雇用、二にも雇用、三にも雇用」だけ。

 代表選に入って内閣支持率がじわじわと上がっていることに気を良くし、「これまでやってきたことが評価された」と自画自賛している菅氏に、「小沢氏にも入れたくないが、菅総理のままではマズい」と悩む1年生議員の本音をお伝えしておこう。

「毎日、両陣営から電話があって『菅だと国会が回らないぞ』『小沢派はもともとカネに汚い連中なんだ』と悪口ばかり聞かされる。私が聞きたいのは、この国をどうするつもりなのかという理念なんです。円高対策や景気対策がすぐにでも必要なのに、総理が身内の争いにかまけていていいのでしょうか」

 今回の代表選は、最初から最後まで「小沢氏が総理になるのを認めるか否か」が争点で、「菅総理が続投すべきか否か」ではなかった。それは、後者の問いの答えはあまりに自明だったから。菅総理、この問いの答え、わかりますよね。