民主主義崩壊に突き進む独裁が始まった [最高権力者・仙谷由人 危険な正体]

(日刊ゲンダイ2010/9/21)

「小沢潰し」が最大で最終の目的

「小沢が死ぬか、オレが死ぬかだ」
小沢一郎(68)への闘志むき出しで代表選に勝った仙谷由人(64)は、今や最高権力者気取りである。首相再選が決まった14日夜、仙谷は自ら作成した内閣・党役員人事案を菅直人(63)に示し、のむよう迫った。
いくつかのポストについて菅が渋ると、「あとは総理の決めることですが、それ以外に案はありません」と突き放したという。

独裁者という言葉は、小沢でなく、仙谷にこそふさわしい。
「仙谷が最重要視したのは小沢グループの一掃です。そのため、総務相だった原口と農相だった山田の更迭が真っ先に決まった。代表選で菅陣営は『まだ3カ月』と強調した。山田も就任して3カ月です。口蹄疫問題だって完全に終息したわけではありません。それを簡単に切ったのだから、挙党態勢もクソもありませんよ」(民主党関係者)
樽床伸二(51)の国対委員長留任や三井辨雄(67)の厚労相就任も、仙谷が阻止した。小沢に近い議員は徹底的に干す。その執念は蛇のようである。
「小沢支持だった海江田(経財相=61)と大畠(経産相=62)、高木(文科相=64)の入閣だって、狙いは小沢排除です。海江田、大畠の2人が所属する鳩山グループ、高木が所属する旧民社グループを取り込むことで、小沢グループを完全に孤立させるつもりです」(民主党事情通)
仙谷は、外相を続けたがっていた岡田克也(57)を説き伏せ、脱小沢を続けるシンボルとして幹事長に据えた。周囲には「そもそも普天間問題で米国がノーなんだから。外相は代えた方がいいんだよ」と、自らの案を正当化していたという。

憎き小沢を潰すためには、米国だって何だって道具にする。それがこの姑息な男のやり方だ。
一方で、敵の敵は味方ということなのか、霞が関の官僚とはウマが合う。菅が望んだ長妻厚労相の続投も、役人の意向を受けてヒネり潰した。小沢が政治主導の欠如を嘆くのも当然である。
「長妻は7月の人事で子ども手当担当の局長を事実上降格させるなど、省内改革に乗り出していた。これに恐れをなした厚労官僚が仙谷に泣きついた。仙谷は同僚より役人を優先したのです」(霞が関事情通)
政治主導は民主党の金看板である。それを愚直に実践した唯一の大臣を更迭し、力を見せつけたつもりになっているとすれば、勘違いも甚だしい。
「仙谷は典型的な左翼活動家気質の政治家なんです。彼らは、大きい相手に真っ正面からぶつかって闘うことで、自らを大きく見せようとする。仙谷にとって小沢は格好の踏み台なんでしょう。ただ、小沢を倒せば、それで終わりです。彼には理念や信念などありません。その証拠に、仙谷は、人を感動させる演説ができない。言葉で国民を引きつけることができない。熱くなるのは権力闘争に興じているときだけ。理想を掲げ、国民を引っ張る熱意があるとは思えません」(民主党中堅幹部)
国民が熱狂した政権交代から1年。小沢に勝つことだけが生き甲斐、目的の危ない権力亡者が最高の権力を握っている。(敬称略)