●発覚当日スピード逮捕 検察、にじむ危機感 改ざん疑惑

(asahi.com 2010年9月21日23時34分) http://bit.ly/cuFqVo


 郵便不正事件で大阪地検が証拠として押収したフロッピーディスク(FD)が改ざんされた前代未聞の検察不祥事。朝日新聞の報道で疑惑が発覚した21日、最高検による主任検事の逮捕という初めての事態まで一気に進んだ。展開の速さに、問題の深刻さと検察組織の危機感がにじむ。この日2度目の会見に臨んだ最高検幹部は「事実関係を徹底的に捜査し、早急かつ厳正に対処する」と苦渋の表情で説明した。失墜した信頼回復への道は険しい。

 最高検による緊急の記者会見は21日午後9時10分すぎ、東京・霞が関の法務・検察が入る合同庁舎の20階にある最高検大会議室で始まった。検事総長に次ぐナンバー2の伊藤鉄男次長検事のほか、池上政幸刑事部長と刑事部の八木宏幸検事が前に並び、伊丹俊彦総務部長も臨席した。

 詰めかけた約50人の記者やカメラマンを前に、伊藤次長はまず用意した紙を読み上げた。出席した検事らは一様に緊張した面持ち。郵便不正事件の主任検事だった前田恒彦容疑者(43)を逮捕した容疑を読み上げた後、「このような事態に至ったことを重大、深刻に受け止め、事実関係を徹底的に捜査し、早急かつ厳正に対処する」と話した。

 その後、表情を変えず、村木厚生労働省元局長の裁判について、控訴を断念することもあわせて発表した。「上訴権を放棄する。判決を受け入れるべきだと判断した。基本に忠実な捜査を徹底するよう改めて指導に努める」と述べ、「村木元局長にご負担をおかけしたことを申し訳なく思っている」とおわびした。

 質疑では、村木元局長の公判が始まってから最高検で担当した八木検事が補足した。

 記者から繰り返し尋ねられたのは、大阪地検の幹部や同僚、部下の事務官らは全く知らなかったのかという点だ。「他の検事や事務官も知っていたら、罪に問われるのか」などと聞かれ、伊藤次長は「仮定では言えないが、そういうことも含めて徹底的に捜査をする」と力を込めた。約40分の会見で「徹底捜査」という言葉を何度も使い、原因究明と再発防止に検察として全力をあげる姿勢をみせた。

 ただ、特捜部長や副部長らの関与について改めて聞かれた時だけ、「これから捜査をしないと分からない」と一瞬、声が小さくなった。

 前田検事は20日の大阪地検の調べに対して「遊んでいて、誤って書き換えてしまった」と答えたとされる。この点について最高検の認識を問われると、伊藤次長は「証拠隠滅罪は故意犯。我々は過失ではないと考えている」と明確に否定した。

 村木元局長の控訴断念が今回の不祥事と関連があるのかも繰り返し聞かれたが、伊藤次長は「全く関係ない。この問題が起きなくても、控訴はしなかった」と断言した。

 最高検は、朝日新聞の報道でFD改ざん疑惑が発覚した21日午前にも記者会見を開き、証拠隠滅容疑で捜査に着手したことを明らかにした。最高検刑事部の検事を主任として7人の検事で構成するチームを作り、この日のうちに大阪に派遣。前田検事がFDを改ざんした経緯や、組織的な関与の有無などについて調べを進めるとしていた。



●最高検、主任検事を証拠隠滅容疑で逮捕 郵便不正事件

(asahi.com 2010年9月21日21時19分) http://bit.ly/9pU9jr


 郵便割引制度を悪用した偽の証明書発行事件をめぐり、押収品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、最高検は21日夜、大阪地検特捜部でこの事件の主任を務めた前田恒彦検事(43)を、証拠隠滅の容疑で逮捕した。

 朝日新聞が21日朝刊で疑惑を報じたことから、最高検が捜査に乗り出していた。

 朝日新聞が入手した特捜部の捜査報告書などによると、FDは昨年5月、厚生労働省元局長の村木厚子氏(54)=一審・無罪判決=の元部下の上村(かみむら)勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=の自宅から押収された。自称障害者団体が同制度の適用を受けるため、上村被告が2004年6月に発行したとされる偽の証明書の作成日時データなどが入っていた。

 特捜部は証明書の文書の最終更新日時を「04年6月1日午前1時20分06秒」とする捜査報告書を作成。FDは押収の約2カ月後にあたる7月16日付で上村被告側に返却され、村木氏らの公判には証拠提出されなかった。

 朝日新聞が今夏、上村被告の弁護団の承諾を得てFDの記録を確認したところ、最終更新日時が「04年6月8日午後9時10分56秒」になっており、特捜部が捜査報告書に記した最終更新日時と食い違うことが分かった。このため、朝日新聞が大手情報セキュリティー会社(東京)にFDの解析を依頼。本来は「6月1日」であるべき最終更新日時が「6月8日」と書き換えられていた。その書き換えは昨年7月13日午後だったことも判明。この日はFDを上村被告側に返す3日前だった。



●村木厚子氏「検察の組織全体で、背景を含めて検証を」

(asahi.com 2010年9月21日21時42分) http://bit.ly/dhpJ9X


 厚生労働省元局長、村木厚子氏(54)は朝日新聞の取材に対し、前田検事が逮捕されたことに驚くとともに、「彼はお金をもらう目的でこんなことをしてしまったわけではないだろう。検察という組織全体で、背景を含めて検証してほしい」と語った。

 さらに、「一連の捜査や公判で明らかになった、裏付け捜査や取り調べメモの廃棄など様々な問題が、今回の逮捕で隠れてしまってはいけない」とも述べた。

 証拠隠滅疑惑を受け、村木氏はこの日正午過ぎ、東京都内で記者会見を開いた。このとき、「こんなことまであり得るのかと恐ろしい気持ちがした」とも話していた。

 一方、村木氏の共犯として逮捕された厚労省元係長、上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=は、代理人の弁護士を通じ、「公的証明書を偽造した私の立場からは何も言えることはありません」とのコメントを出した。

 上村被告の代理人は「どこまで証拠を集めたのか分からないが、短期間での逮捕は検察の危機感の現れと評価できる」としながらも、「もし証拠が十分に集まっていないのであれば、本当に立証できるのかという不安もある」と言った。

 そのうえで、代理人は「前田検事の容疑は検察側のストーリーに合うように証拠を改ざんしたという内容だ。検察ストーリーに沿うような調書の取り方が問題となったのとよく似ている。弁護士らは今後も証拠の信用性の吟味を十分にしなければならない」と話した。



●前田検事は特捜部のエース、「割り屋」で評判
(読売新聞 2010年9月21日12時55分) http://bit.ly/ckdkwQ


 偽の障害者団体証明書発行事件で、押収したフロッピーディスク(FD)の更新日時記録を改ざんした疑いが持たれている前田恒彦検事(43)が大阪地検特捜部に配属されたのは、2008年4月。


 それ以前には、東京地検特捜部に在籍した06年4月~08年3月、元防衛次官の汚職事件で贈賄側の防衛専門商社元専務を取り調べるなど、事件の「キーマン」となる容疑者を担当することが多かった。

 大阪地検特捜部では、元特捜検事で弁護士だった田中森一受刑者の詐欺事件(08年4月)や音楽プロデューサー・小室哲哉元被告による詐欺事件(同11月)などの捜査で主任検事を務めた。また、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件では、東京地検特捜部に応援として派遣され、逮捕した公設秘書(当時)の取り調べも担当した。

 部内では、検察の描かれた構図通りに容疑者から自供を引き出す「割り屋」として評判を取る特捜部のエース的存在。上司の信頼も厚かったが、一方では、周囲から「取り調べが強引」との評判もあった。



●郵便不正事件:大阪地検の主任検事逮捕 証拠隠滅容疑
(毎日新聞 2010年9月21日 21時58分) http://bit.ly/d9YLNA


厚生労働省の村木厚子元局長(54)に無罪が言い渡された郵便不正事件で、大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)のデータを意図的に改ざんした疑いが強まったとして、最高検は21日、証拠隠滅容疑で前田検事を逮捕した。大阪地検は村木元局長の判決に対する控訴を断念し、上訴権を放棄した。これにより村木元局長の無罪が確定した。

 ◇村木元局長の無罪確定
 前田検事は20日までの大阪地検の調べに「誤ってデータを書き換えた」などと説明したとされる。最高検は21日午前、大阪地検や大阪高検から報告を受けて対応を協議し、本格的な捜査に乗り出すことを確認。在京の検事を大阪に派遣して前田検事本人から事情を聴いた結果、強制捜査が不可欠と判断したとみられる。

 最高検は、東京高検や東京地検の検事を投入して捜査態勢を整えており、前田検事の当時の上司や同僚らからも事情を聴き、組織的な関与がなかったかについても調べる方針。

 FDには、厚労省元係長、上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=が作成した偽証明書のデータが保存されていた。09年5月26日に特捜部が上村被告の自宅から押収した時点では最終更新日時は「04年6月1日午前1時20分」だったが、弁護側が返却されたFDを調べたところ、「6月8日午後9時10分」に書き換えられていたという。

 公判で検察側は、村木元局長が04年6月上旬ごろ、偽証明書の作成を部下だった上村被告に指示したと主張しており、前田検事が検察側の構図に合うようにデータを改ざんした疑いが浮上している。

 村木元局長を無罪とした10日の大阪地裁判決は、改ざん前のFDの更新日時を記した捜査報告書の記載などから「偽証明書は5月31日深夜から6月1日早朝までに作成された」と認定していた。

 ◇村木元局長に謝罪
 21日午後9時過ぎから会見した最高検の伊藤鉄男・次長検事は「重大、深刻に受け止めている。事実関係を徹底的に捜査したうえで、早急厳正に対処する」と話した。そのうえで、無罪判決について「基本に忠実な捜査が不徹底だったと言わざるを得ず、村木元局長にご負担をかけたことを誠に申し訳なく思っています」と述べ、元局長に謝罪した。



●朝鮮総連事件:弁護団、前田検事を偽証容疑で告発へ
(毎日新聞 2010年9月21日 20時09分) http://bit.ly/brCEnA


大阪地検特捜部の前田恒彦検事=大阪市北区で2010年9月10日、三村政司撮影 郵便不正事件で証拠品を改ざんしたとされる大阪地検特捜部の前田恒彦検事(43)について、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を舞台にした詐欺事件の弁護団は21日、「東京地裁の1審公判で虚偽の証言をした」として来月にも偽証容疑で最高検に刑事告発する方針を決めた。

 前田検事は東京地検特捜部に在籍中、元公安調査庁長官の緒方重威(しげたけ)被告(76)=詐欺罪で有罪判決、控訴中=の共犯に問われた元会社社長、満井忠男被告(76)=同=の取り調べを担当。弁護団は捜査段階の供述調書の信用性を争っている。1審判決は、出廷した前田検事の法廷証言の一部について「信用性の肯定は困難」と指摘していた。【伊藤直孝】