菅では無理 小沢に代えろという声 (日刊ゲンダイ2010/9/30)

菅を代表に選んだ重大な罪

出しゃばり女房ともども一挙にのし上がろうとしている意図が疑われている亡国の政治屋を心ある民主党国会議員は傍観していていいのか
権力亡者で自民党政治屋と全く同レベルの成り上がり晋作気取りに、この国はメチャクチャな崖っ縁に立たされている
中国漁船の一件で、菅政権の無能ぶりが満天下にさらされたが、菅がダメなのはアホで無能だからだけではない。
この男は権力亡者の卑しい政治屋なのである。その根拠を挙げていけば限りがないほどだ。
正月に小沢邸で媚びたくせに小沢切りに転じる人間性。代表選がヤバくなると、いったんはトロイカ体制を受け入れ、周囲の猛反対で撤回する軽挙妄動。その卑しさを見透かされ、市川房枝から愛想を尽かされたくせに、代表選で「市川房枝先生の選挙ボランティアから政治活動をスタートさせた」と語る神経……。
人間として最低のエピソードばかりだ。だからこそ、総理になった瞬間、旧友が祝福するどころか、罵(ば)詈(り)雑(ぞう)言(ごん)を浴びせたのである。

さきがけ時代からの付き合いの田中秀征氏は週刊現代(10月2日号)で「彼は権力者になるために、計算通り政治家人生を歩んできた」「菅さんには志でも義理でも、人を動かすほどのものがない」と切り捨てている。40年以上の付き合いである評論家の佐高信さんは本紙に「政治屋失格というより、人間失格」とこう語った。
「政治屋だったら、この局面で小沢氏の力を利用していますよ。しかし、そこだけは頼みたくないという。政治屋にも徹しきれない。何をやりたいのかも分からない。ただ首相になることだけが目的で、利用できる人だけを利用してきた。そういう人です。彼の言動からは総理としての覚悟や責任感が感じられない。クリーンな政治と言うが、クリーンな政治で何をやるのかが見えない。首相になれて目的を果たしたのだから、とっとと辞任すればいいのです」

◇そんなに小沢に頭を下げるのがイヤか
いまだに中国で捕らえられているフジタの社員のことを考えれば、小沢に頭を下げるのは当然なのに、それはしない。世話になった小沢の悪口を言い続け、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に“当て逃げ”した後も、民主党議員に電話をかけまくり、猫なで声で支持を懇願していたのが菅直人だ。
副総理の時には沖縄問題から逃げて鳩山前首相を見殺しにしたが、首相になってからも、あらゆることから逃げている。船長釈放の責任を検察に押し付けたのがいい例だ。
こんな人間失格男が首相でいいのか。やっぱり、小沢にやらせるべきではないか。改めて、民主党の国会議員に問いたいのだ。

◇権力維持のためには誰とでも組む無節操首相
権力亡者、菅がどれだけ危険な政治家か。ひとつの象徴が学会・公明党へのスリ寄りだ。菅は26日、創価学会の池田大作名誉会長が設立した富士美術館を訪れ、展覧会を鑑賞した。菅は学会・公明の政教一致問題を追及してきた過去があるだけに不自然な訪問だった。
さまざまな憶測が飛び交ったものだが、読売新聞はさっそく、「民主、公明政策協議へ」「部分連合模索」と書いた。
これは恐らく、当たっている。政権維持のためには誰とでも組む。この節操のなさが恐ろしいのだ。
民公連合のためには、とりあえず、補正予算案での協力が試金石になる。つまり、公明党の政策も丸のみする。実際、補正の規模は公明党が唱えてきたのと同じレベルだ。財源なんてスッカラカンのはずだったのに、こうなると、財務省は巧妙に財源をひねり出してくる。こうやって、官僚に借りをつくり、政権交代の意義がないがしろにされていくわけだ。
国民が主役の政権交代だったのに、権力亡者による権力亡者のための政治に変わっていく。菅という男は、そこに何のためらいも後ろめたさも感じていない。ここが許し難いのだ。

◇政党名が変わるだけで官僚支配が続く
こんな亡国政治を続けていたら、何のための政権交代だったのかということになる。
すでに菅はマニフェスト順守を訴える小沢を批判し、自民党政治への回帰に舵切りしている。自民党政治イコール官僚主導政治、官僚主導イコール無責任政治だ。国民がノーを突きつけた政治に逆戻りだから、ヒデェ話だ。政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「2、3年たったら政権交代って何だったのかということになりますよ。政党名が変わっただけで、あとは何も変わらない。自公政治が民公政治になるだけで、中身は同じ。官僚が支配する政治ですから、同じになるのは当たり前です。結局、政治家が劣化しているから、こういうことになるのです。民主党の若手議員は政治の動かし方のイロハを知らない。だから、財源がない、マニフェストは無理だと言われると、『ハイ、そうですか』になってしまう。これでは政治は変わらないのです」
だから、小沢一郎でなければダメなのに、自分たちの方が賢いと思っている民主党の頭デッカチ、大バカ議員はそこが分かっちゃいないのだ。
もっとも、いくらバカな民主党議員でもさすがに「菅じゃダメだ」くらいは分かったろう。国民に対する重大な背信であり、判断ミスだ。だとすれば、彼らがやるべきことはただひとつだ。菅の亡国政治をストップさせること。総辞職でも何でもさせて、代表選をやり直せばいいのである。

◇小沢の政治とカネはデッチ上げの作り話
大体、小沢のどこがいけないのか。菅やメディアは「政治とカネ」でバカ騒ぎしたが、この大前提が音を立てて崩れている。「冤罪の検察」がでっち上げた作り話ではないか。それが白日の下にさらされた。逮捕されたイカサマ検事、前田恒彦は小沢の大久保隆規秘書を調べ、調書を作成した張本人なのである。検察の不正が代表選の前に明らかになっていたら、結果はどうなっていたか。5月に露呈すれば、鳩山、小沢コンビのダブル辞任があったかどうか。政治は大きく変わっていたはずなのである。
「前特捜部長が連日、事情聴取される事態になっているのです。検察は正義という大前提が崩れた以上、その大前提に乗っかって、批判、論評するのはおかしなことです。出直し、やり直し、見直しが必要になるのではないでしょうか」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
代表選をやり直すのは当然のことなのである。まして、権力の座にのさばっているのは、「冤罪の検察」をフル活用、小沢を追い詰めた亡国首相だ。

でしゃばりのカミさんとはしゃぎ、無責任な場当たり政治を続けている。ひと昔前の共産主義国家じゃあるまいし、悪夢のような話だ。前出の佐高信氏が言う。
「菅伸子さんは亭主が総理になった瞬間、緊急出版した著書の中で、菅首相が中曽根元首相を参考にしていると書いています。『思想、信条は異にするが』と付け加えていますが、裏を返せば、菅首相に思想、信条がない証拠です。そんな首相が松下未熟塾とも言うべき若い前原外相らと稚拙な政治を続けている。前原外相という人事自体が中国を刺激しているのが分からないのです。仙谷官房長官は自分が策謀家であるかのように錯覚しているし、この内閣の未熟さは怖くなります」

恐ろしいのは国民だって同じだ。民主党の国会議員はこれ以上、亡国政治を傍観することは許されない。