翼賛政治に傾く菅無能政権 何もなしスッカラカン内閣の正体暴露

(日刊ゲンダイ2010/10/1)

これでは政府も国会も与党も野党も何も要らないとアキレた声

―景気対策の補正予算編成は野党案丸呑みという姑息
―内外への難問対処全くなしのお先真っ暗
とどのつまり政府の仕事は、国民から集めた税金をどう使うかに尽きる。だから予算案には、時の首相がどんな国を理想としているのか、政権政党がどんな社会を目指しているのか、ハッキリ表れるものだ。
社会保障を厚くするのか、経済成長を優先するのか、軍事費を膨らませるのか。予算編成に政権の特色が表れるのは間違いない。予算編成は、政権政党が自分たちの理想を実現させるための手段と言ってもいい。
ところが、だ。菅内閣は政府の最大の仕事である予算編成を事実上“放棄”してしまった。前代未聞のことだ。
菅内閣はきょう(1日)から始まった臨時国会に景気対策のための補正予算を提出し、成立させる方針でいる。提出は10月下旬の予定。
ところが、自分たちで補正予算を組まず、自民と公明の野党案を丸のみするつもりなのだ。
「すべて政権維持のためです。参院は過半数割れしている。どんなに頑張って補正予算を組んでも、予算案は成立しても関連法案が通らず、執行できない可能性がある。だったら、最初から野党案を丸のみしてしまえばいいという姑息な発想です。早くも玄葉政調会長が自民、公明に協議を呼びかけている。最終的には政府提出の形になるでしょうが、編成段階から野党の要求を聞いてすべて反映させる方針です。これなら野党は賛成してくれる。しかし、予算編成を野党に頼るなんて、自ら『政権担当能力がない』と認めたようなもの。予算案をつくる力量がないなら即刻、総辞職すべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
野党の予算案を丸のみするなんて、腐敗した自民党政権だってしなかったことだ。

◆「国民生活が第一」の予算編成はどうしたのか
政府にとって一番大事な予算編成を野党に丸投げするなんて、いったい民主党はなんのために政権に就いたのか。これでは昨年夏、国民が政権交代させた意味がないではないか。
「国民生活が第一」を掲げた民主党は、政・官・財で癒着してきた自民党の予算編成を否定し、まったく新しい発想で、民主党らしい予算を組むと約束していたはずだ。なのに、野党案を丸のみしようなんて冗談じゃない。ふざけるにも程がある。
そもそも、国会に予算案を提出する前に、裏で野党と談合し、話をつけるなら、政府も、国会も、与党も、野党も、なにも要らないではないか。国会に提出された法案は、自動的に成立することになる。これでは翼賛政治も同然だ。
「たとえ参院で数が足りなくても、自分たちが最良と信じる法案を提出し、国会審議を通じて野党が受け入れるように説得するのが当たり前です。審議を通じて、国民も与野党のどちらが正しいのか判断が可能になる。日本社会になにが必要なのかも浮き彫りになります。なのに、与野党が事前に協議して翼賛体制のようになってしまえば、政治全体が無責任になり、予算編成も各党が自分の支持団体だけを意識したものになる。結局、一般国民にシワ寄せすることになってしまう。たとえば与野党が事前に“消費税アップ”で合意し、あっという間に成立という事態になりかねません。菅内閣のやっていることはムチャクチャです」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)
予算編成という政権の最も大きな権限を行使しないなら、菅首相はなんのために総理大臣をつづけているのか。

◆オリジナリティーがゼロの唖然
菅内閣がスタートしてから、すでに4カ月。さすがに民主党を応援してきた国民も、このスッカラカン内閣には呆れ果てているのではないか。
菅首相は野党時代、「霞が関なんて大バカですから」と官僚を痛烈に批判し、あれほど「政治主導」を訴えてきたのに、総理に就任した途端、自民党よりヒドイ「官僚主導」に堕している。
来年度本予算の概算要求は「一律10%カット」と、見事なまでに財務官僚の言いなりだった。自民党時代と同じスタイルで進めている。かと思ったら、今度は補正予算を野党に丸投げする始末だ。
それもこれも、菅首相にはトップとして本気でやりたいこともなく、やるべきことを実行する能力もないからだ。
「どんな凡庸な総理大臣でも、ひとつくらいは『これを実現させたい』というテーマがあるものです。ところが、菅首相にはなにもない。振り返ってみれば、これほどオリジナリティーに乏しい政治家も珍しい。キャッチフレーズの『強い経済、強い財政、強い社会保障』は、東大名誉教授の受け売りだし、お得意の『最小不幸社会』はジョン・ロールズのパクリでしょう。『1に雇用、2に雇用』は『1に教育、2に教育』と訴えたブレア元英首相の完全なもじり。政治家として独自の理念、哲学、政策がないなら、せめて実務能力に優れ、やるべきことを確実にこなせれば存在価値があるが、尖閣諸島沖の漁船衝突事件を見ても分かるように、まったく事態に対処できない。その揚げ句が、予算編成まで野党に丸投げなのだから話になりません」(政界関係者)

◆心ある民主党議員は即刻、倒閣に動け!
中身ゼロの愚かなスッカラ菅首相は、官僚の手のひらに乗り、野党の言い分を丸のみしていれば、政権は安泰だと思い込んでいるのだろう。どうせ、官僚や野党を敵に回してまで、総理としてやりたいことがあるわけでもない。
しかし、それで政権が維持できると思ったら大間違いだ。いずれ野党に主導権を握られ、ニッチもサッチもいかなくなるのは目に見えている。
「たしかに野党に妥協していれば当面、窮地をしのげます。しかし、野党に妥協すればするほど、民主党らしさを失っていく。民主党らしさを失えば、国民は一気に離れていく。長い目で見れば、自分で自分のクビを絞めているようなものです。むしろ、たとえ法案が廃案になり、政権がピンチに陥っても、民主党が掲げてきた『国民生活が第一』の理念を貫いた方が、国民の支持を集め、よほど政権は安泰になるというものです。菅首相が最悪なのは、シタタカな自民党が民主党に協力するふりをしながら民主党政権を追い詰めていることに気づかないことです」(五十嵐仁氏=前出)
政権維持しか頭にない男をこれ以上、首相に就けておいてはダメだ。いまからでも遅くはない。民主党への国民の支持をつなぎ留めるためにも、民主党議員は大急ぎで倒閣に動き出すべきだ。