「小沢検審」議決無効の可能性浮上  (日刊ゲンダイ2010/10/7)

指定弁護士は公訴できるのか

読めば読むほど実にデタラメである。小沢をめぐる政治資金規正法違反事件で「起訴相当」議決を出した東京第5検察審査会(検審)が作成した議決書のことだ。専門筋が詳細にチェックしたところ、この議決は「無効」の可能性が浮上しているというのだ。

そもそもこの事件は「政治資金規正法違反」。責任を問われるのは会計責任者で、すでに逮捕、起訴された秘書である。“小沢潰し”を狙った東京地検特捜部は当初、秘書逮捕をきっかけに「水谷建設ウラ献金」で小沢本人の立件をもくろんだものの失敗。仕方なく「共謀」で挙げようとしたが、これもムリだった。小沢が積極的に指示したり、関与を示したりする「客観的な証拠」がゼロで、秘書のあやふやな「供述調書」だけでは立件できないと判断したからだ。
ところが第5検審は、〈(秘書は)小沢氏を尊敬し師と仰いでおり、関与を強めたり、罪に陥れたりするための虚偽供述をするとは考えがたい(要約)〉などと「供述調書」を“金科玉条”扱い。その供述の曖昧部分についても、〈細かな事項や情景が浮かぶような具体的、迫真的な供述がなされている方が、むしろ不作為を感じ、違和感を覚える〉なんて言っているのである。

「この解釈にはタマげました。村木裁判で無罪判決を出した大阪地裁は、『供述内容の具体性、迫真性は後で作り出すことも可能』として、客観的な証拠がない供述は慎重に判断すべき、としたのです。ところが、第5検審の解釈は正反対。客観的証拠もなく、供述に具体性や迫真性もなくていいという論理です。法治国家とは思えない。メチャクチャすぎます」(司法ジャーナリスト)

さらにこの議決書には重大な「欠陥」がある。第5検審の審査対象は、小沢の資金管理団体が04年に購入した不動産を05年の政治資金収支報告書に記載した「虚偽記載」についてだ。1回目の議決もこの点を審査したのだが、今回は、不動産購入の原資となった小沢の資金4億円を記載していなかったことを“勝手”に「犯罪事実」に加えているのである。名城大教授で弁護士の郷原信郎氏がこう言う。
「検察の公訴権独占の例外として、検審議決による強制起訴が認められている趣旨に照らすと、審査対象を逸脱した被疑事実で起訴相当と議決するのはおかしいことです」
あらためてメチャクチャな議決だが、これで小沢を強制起訴できるのか。
「指定弁護士がどう判断するかだが、『起訴はムリ』と判断しても不思議じゃない。仮に起訴しても、小沢の弁護団が黙っていないでしょう。検審議決が手続き要件を満たしていないとして、議決無効で裁判所に公訴棄却を求める。このままスンナリ強制起訴にならないのは確実です」(前出のジャーナリスト)
小沢の強制起訴前に検審の制度見直しの方が先だ。