違法で正当性のない第五検察審査会の議決 平野貞夫「日本一新運動」の原点(21)
(THE JOURNAL:平野貞夫 2010年10月 7日 11:23) http://p.tl/wQIJ


 こんなことが議会民主主義国家で許されてよいのだろうか。

 10月4日午後3時頃、柏市内をバスで移動中に、親しい新聞記者から携帯電話があり、「第五検察審査会で議決があり、あと30分ぐらいで発表されるようだ」との一報が入った。

 午後3時50分頃、自宅のTVは一斉に「第五検察審査会が、小沢氏を政治資金規正法違反(虚偽記載)で起訴議決を公表した」と報道した。これで小沢氏は強制起訴されることが決まった。

 午後4時過ぎ、小沢氏から電話があり、この事態に対する決然とした方針を聞いた。

 「日本の民主主義と国民生活を護るため、全身全霊を挙げて戦う」と、意を決した思いを力強く語ってくれた。

 私は「国家権力が小沢一郎の"日本一新"をあの手この手で妨害してきた最後の峠だ。裁判での無罪は確実なことであり、この峠を越えれば真の"日本一新"が実現する。そのためにはまず小沢グループが、日本の民主政治の危機を理解して団結を固めること。そして日本一新を国民運動として展開していくことです」と伝えた。

■違法で正当性のない第五検察審査会の議決

 公表された「起訴議決」の内容をつぶさに検証してみると、とても許容できるものではない。議決の違法性も含め、こんなことが法治国家で行われるようでは、司法権の独立と正当性など、小指の先ほども存在しないことを自ら証明したに等しい。

 まず、検察が提起したのは「虚偽記載」であり、それ以外の事項である「四億円の原資」について、疑惑があると起訴議決の理由としていることだ。第五検察審査会が審査する権限のない問題を、疑惑ということで起訴議決の理由としていることは、とりもなおさず、この議決そのものが無効であると自ら語っているのだ。

 また、日本一新の会々員である染谷正圀氏が指摘するように、「虚偽記載」は特殊な身分犯であり、記載者そのものの責任が問われるもので、小沢氏の監督責任も含め共犯であるという論理はあり得ない、という主張は第五検察審査会で申立てを受理したことの違法性を立論するもので、専門家の意見を知りたいものだ。

 さらに、第五検察審査会メンバーの平均年令が30.9才であることは、議決の正当性を欠く重要な問題である。全国民から抽選で選ばれるという形式だけで選任してよいものだろうか。わが国では世代間戦争という特殊な社会現象があり、このような片寄った年令構成では議決の正当性を著しく欠くものといえる。

 検察審査会は行政機関であり、このような違法性があり、正当性を欠く議決は無効とする行政訴訟を行うことを私は提起したい。

■マスメディアの論調

 これからの対応を考えるために、5日の中央各紙の論調を読んでみた。朝日--自ら議員辞職の決断を、毎日--小沢は自ら身を引け、読売--小沢氏「起訴」の結論は重い、日経--「小沢政治」に決別の時だ、産経--潔く議員辞職すべきだ、東京--法廷判断を求めた市民、というのが社説の見出しである。

 「議員辞職」を見出しとしたのが3社ある。残り3社のうち、「読売」と「東京」は冷静な論説であることにいささか驚いた。これまでは全社が異口同音に「政界からの小沢排除」をこぞって主張してきたが、この変化を冷静に捉えるべきである。6社一致しての主張は「小沢氏は国会できちんと説明すべきだ」というものだが、これは野党も一致して要求しており、これには対応すべきである。

 私は機会あるごとに繰り返し書いてきたが、小沢一郎という政治家ほど政治資金規正法を厳格に守る人物はいない。あまりにも厳格で、完璧にやるので検察が焼き餅的に手をつけたのが事の始まりだ、とこれは、検察OBが私に語った実話である。それなのに、一年数ヶ月の時間と、推定30億円という税金を使って、検察総動員で捜査した結果が不起訴であった。小沢氏は真実を国会で説明すれば「なんだ、こんなことだったのか」と誤解は解けるはずである。

■議員辞職決議案について

 マスコミだけでなく、与野党からも小沢一郎は議員を辞職すべきだとの意見が出ている。辞めなければ「議員辞職決議案を提出するぞ」と、野党は国会運営とからめて主張し始めた。谷垣自民党総裁がもっとも熱心なようだが、「君はそれでも弁護士か」と言いたい。国民主権を行使した有権者によって選ばれた国会議員を、国会の議決で辞めさせるには、憲法第58条2項の「懲罰の除名」に限定されている。(別記参照)

 検察が不起訴にし、検察審査会が不法不当な判断で強制起訴し、裁判で99.9%無罪と推定(確信)されている小沢一郎に、議員辞職を要求することがどれほど憲法の国民主権に反することか、これを理解しない政治家がいることで、日本の議会民主政治がいかに未熟かがわかるし、ましてや離党問題など論の外でしかない。

 さて、日本一新の会のこれからの活動だが、第五検察審査会の議決の違法性を全国会議員に訴えることから始めたいことから、会員各位のご助力をお願いしたい。

 同時に、出来るだけ多くの国民が理解するよう、ネットや集会などを駆使して説明し、正当な世論づくりを急がねばならない。

【参考資料(日本国憲法)】

〔役員の選任及び議院の自律権〕第58条 略。2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。