超円高が襲う 日本経済破滅シナリオ  (日刊ゲンダイ2010/10/12)

70円台突入目前

15年半ぶりの水準である。先週末に81円72銭まで高騰した円相場。G7の会合を経ても円高の流れは止まらず、東京が休場の中、週明け11日のシドニー外国為替市場で一時、1ドル=81円37銭をつけた。95年4月以来の高値更新だ。70円台は目前。史上最高値の79円75銭も視野に入り始めた。
「15年前につけた70円台は一瞬でしたが、今回は、70円台に突入すれば、それが定着する可能性があります。15年前は、ドル高を志向していた米国の協調介入で、すぐに円安方向に振れました。しかし、今は高い失業率などに苦しむ欧米が、輸出を伸ばすためにドル安・ユーロ安を望んでいるという事情がある。日本の単独介入で得られる効果は、たかが知れている上、財政負担が大きい。為替のコントロールは難しい状況です」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)

1ドル=70円台突入となれば、輸出企業のダメージは計り知れない。例えばトヨタは1ドル円高になるだけで300億円の利益が吹っ飛ぶといわれている。
「輸出企業の想定為替レートは1ドル=90円前後。9月期末に多少の見直しがあったとしても、70円台になるとキツイ。持ちこたえられない企業も出てくる」(市場関係者)
今年8月、経産省が200社を対象に実施した緊急ヒアリングでは、1ドル=85円でヒーヒーの企業が続出だった。
「大手メーカーからのコストダウン要請が、川下に来ている」(化学・バイオ・医薬品)
「国内生産を切り詰めて、海外生産に依存しなければならなくなってきた」(コイル製造)
「国内での生産を維持したくても出来ない状態になっている」(繊維)


◆空洞化に拍車、大量失業、治安悪化

1ドル=85円でこの調子だったのだ。中小企業の7割が減益を懸念。70円台ではどうなってしまうのか。経済ジャーナリストの大山功男氏はこう言う。
「超円高で、デフレが加速。モノが売れても企業は利益が出ない。株価も下がる。家電や自動車の製造業が海外に拠点を移し、国内産業の空洞化は進む一方です。

このシワ寄せはサラリーマンを直撃します。給料は下がり、ボーナスも減額。雇用の悪化も避けられません」
新規採用も抑えられ、これまで以上に就職できない若者があふれる。中高年にはクビ切りの恐怖。競争力のない企業はバタバタ倒れ、高止まりしている失業率は年内に6%を超えるかもしれない。そうなると、治安の悪化も心配だ。知らないうちに日本中のめぼしい資産は中国をはじめとする新興勢力に買い漁られ、のみ込まれてしまう。上司も外国人が当たり前……。

「それもこれも、輸出業に頼りきり、産業構造の転換をはかってこなかったツケ。為替に影響されない付加価値商品を開発するための人材育成も怠ってきた。これから新しい成長産業をつくるといったって、最低でも10年や20年はかかる。今にも襲いかかってくる超円高不況を前に、打つ手はありません」(大山功男氏=前出)
国民生活は、いよいよ奈落の底に突き落とされようとしている。