鈴木宗男 収監を決めた「国家の意思」


本誌編集長が直撃!
(週刊朝日 2010年09月24日号配信掲載) http://p.tl/_Jmx


民主党の代表選が佳境となったこの時期に、最高裁が小沢一郎前幹事長を支援する新党大地の鈴木宗男衆院議員(62)の上告を棄却する決定を下した。鈴木氏は議員を失職、収監される。なぜこのタイミングでの決定なのか、永田町には揣摩憶測が飛び交った。本人はどう受け止めているのか。本誌編集長が直撃した──。


 ──それにしても、驚きました。民主党の代表選への影響はありますか?

「さっそく菅陣営の選対幹部が私の上告棄却を『政治とカネ』にからめて演説で使っていました。私の事件と小沢さんは何の関係もないのにですね。この後すぐに地元の北海道で決起集会があって、私も応援に駆け付ける予定でしたが、それもかなわなくなりました。裁判所の決定に官邸の意思とか意図が働いたかどうかはわかりません。ただ、結果として小沢さんの不利につながっている。やはり、世間の人たちが言っているように、政治的な何かがあったのかなぁと……」

 ──しかし日本には三権分立の原則があって……。

「いや、それは建前としてはですね。例えばいま、天下り批判が激しいですが、最高裁には“ムネオ追い出し”の張本人だった外務省の竹内行夫元事務次官が天下って判事になっています。司法試験に受かったわけでもないのにです。こういう行政と司法がくっついているのは日本くらい。判検交流といって検察官が人事異動で裁判官をやったり、その逆もある。これがなれ合いにならない保証はない」

 ──確かに事実はどうあれ、そうした疑いをもたれること自体が司法不信につながりかねないですね。

「そうです。みなさんから、なぜ、このタイミングだったのかと聞かれますが、私のほうが教えてほしい。私が上告してから決定まで2年6カ月、この期間は事件によってまちまちで最高裁の裁量にまったくまかされている。裁判所に配慮の義務はないと思いますが、なぜ代表選が終わるまで待てなかったのかというところに国民の不信の芽が生まれる可能性はあります」

 ──せっかく大阪地裁がナイスなジャッジをしただけに、そういう雰囲気が生まれるのは残念です。

「私の『心友』の佐藤優さんがこんなことを言っていますね。村木厚子さんの無罪が出て検察批判の声が高まるのを恐れ、先手を打ってやったのではと。そういう見方があるのかもしれません。それから、私が収監されることで、外交機密費の不正使用などへの追及がゆるみ、喜んでいるのは外務官僚たちだとね」

 ──村木さんの主任弁護人の弘中惇一郎さんは鈴木さんの弁護人でもある?

「そうです。それから、足利事件で菅家利和さんの冤罪を晴らした佐藤博史弁護士です。ふたりは私の一審の裁判を見て、これはおかしいから私たちが引き受けましょうと、向こうからやってきてくれたんです。弘中先生に言わせると、私の事件は村木さんの事件とまったく同じ構図だと」

 ──それは?

「つまり、密室で作られた検察の調書によって有罪にされている。その他の証拠はありません。デッチ上げ調書事件だと。しかし私の裁判では、公判での証言より検察の調書のほうが信憑性が高いと判断され、有罪は覆らなかった。ふたりの先生が一審からついてくださっていれば、違う結果だったかもしれません」

 ──冤罪を防ぐには取り調べの可視化ですね。

「やると言っていた千葉景子法相の変節にはガッカリしました。小沢さんが総理になればすぐにでも可視化は実現するでしょうが、菅さんがなってもぜひ、やってほしいと思います」