「郵便不正」もうひとつの“冤罪事件”  (日刊ゲンダイ2010/10/21)

被疑者にされそうになった[民主党]牧義夫議員が激白

─1面デカデカと報じた朝日新聞の罪作り

郵便不正事件の証拠改ざんをスクープした朝日新聞の記事が、今年度の新聞協会賞を追加受賞した。朝日新聞は特集記事を組んで自画自賛するなど大はしゃぎだが、ちょっと待って欲しい。郵便不正事件では、他ならぬ朝日新聞によって濡れ衣を着せられた政治家がいる。民主党の牧義夫議員に話を聞いた。
発端は、09年4月14日の朝日新聞でした。郵便不正事件で制度を悪用していた障害者団体「白山会」に関係して、私が白山会を利するような質問を国会でしていたと1面トップで報じられたのです。
5日後の4月19日には続報が出る。やはり朝日新聞の1面トップで、今度は、私が日本郵便に圧力をかけたかのような報道がなされた。白山会が不正DMの発送を拒否されたが、その後、私の秘書が日本郵便の支社を訪問したら、DM発送が承認されたというのです。

何でそうなるのか。こちらはワケが分かりません。確かに、白山会の守田義国会長とは、国会議員になる前から面識があった。けれど、白山会という団体とは何の関係もないし、議事録を見てもらえば分かりますが、国会質問は特定の団体を利するような趣旨ではない。08年5月の衆院経済産業委員会で、「障害者向けの割引制度が悪徳商法の温床になっている。遺失利益がどれだけあるのか調査すべきではないか」と指摘しただけの話です。たまたまその時に指摘した3団体が直後に承認を取り消されたため、「ライバル団体を批判」などと書かれたのですが、私の質問がきっかけで白山会も結局は承認取り消しになったのだから、利するどころの話じゃない。

秘書が日本郵便の支社を訪れたのも、制度の仕組みを聞きにいっただけで、それも白山会のDMが認められて大量発送された後のことです。どう考えてもつじつまが合わない。だから、最初はノンビリ構えていました。
ところが、新聞の影響力というのは恐ろしいもので、こうも矢継ぎ早に書き立てられると、いやが上にも疑惑の目が向けられてしまう。

郵便不正事件で、大阪地検に聴取された関係者は一様に、「白山会から牧にカネが流れたのか」としつこく聞かれたそうです。大阪地検特捜部は、郵便不正事件を政治家につなげ、何としても大きな事件にしたかったのでしょう。
私が被疑者にされずに済んだのは、守田容疑者が、私が関与したとする検察ストーリーの供述調書にサインをしなかったからに過ぎません。まさに紙一重のところでした。その後、私が親しくしている「日本ビジュアル著作権協会」の関係者に捜査の手が及んだ時は、大阪地検特捜部の執念を感じましたね。違法な献金があるに違いないという見立てで、ビジュアル著作権協会のカネの出入りを徹底的に洗った。ところが不正なカネの流れなんて一切出てこない。すると、「非弁活動容疑」という定義があいまいな別件で関係者を引っ張ろうとしたのです。
一連の報道で、「不正な活動をする政治家」というレッテルを張られてしまい、大変な不利益を被りました。嫌疑をかけられただけで政治活動には著しい支障が生じる。仮に起訴ともなれば、それは政治家としての“死刑宣告”に等しい。

朝日新聞には、一度だけ小さな訂正記事が掲載されましたが、今に至るまで謝罪はありません。