●検察とリーク


弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100121#1264048021


小沢問題について、検察庁からのリークが問題になっていますが、ちょっとコメントしておきたいと思います。なお、いかに述べることは、私が直接見たり聞いたりしたことだけでなく、人づてに聞いたことなど渾然一体となった知識、経験に、そこから引き出せる推定も含めています。


東京地検の場合、特捜部を含め、マスコミに対応できるのは副部長以上ということになっていますが、マスコミ側は、特に大きな事件ではすさまじい取材攻勢をかけますから、副部長よりも下の検事に接触を図ることもあります。それが発覚すれば、検察庁から出入り禁止処分を受けたりしますが、平検事側にも、マスコミと接触することで相互に情報を交換したい、自分がやっていることを認めてもらいたい、平検事なりに世論を有利に誘導したい、といった思惑から、情報をリークするということも、絶対にないとは言い切れません。


副部長以上(ここでは地検だけでなく高検、最高検、法務省を含みます)についても、上記のような思惑で動くということは、やはり絶対にないとは言い切れません。地位が上がるにつれて、単純な思惑ではなく、世論を有利に誘導する、自分たちに追い風が吹くようにするといった思惑で動きやすくなるということも言えるでしょう。


見逃せないのは、高検、最高検、法務省あたりから情報が抜ける場合があるということです。かつての売春汚職の際に、特捜部から上にあげた情報がY売新聞に次々と抜けるということで、リーク元をあぶり出すためガセネタが流された結果、それが紙面に出てしまい、法務省内のリーク元(特捜畑で著名な人物)があぶりだされた、というのは有名な話ですが、従前からのマスコミ関係者との深いつながりから、高検、最高検、法務省あたりから情報が抜けて行く、ということもあり得ます。その場合、必ずしも世論を有利に、といった思惑だけでなく、単に個人的なつながりでサービスするとか、場合によっては特捜部の捜査方針に批判的な人物が、あえて情報を流している(正しいものではなくそうではないものを含め)ということもないわけではありません。


弁護士に転じた後ですが、あるマスコミ関係者と話していて、その人が、検察庁内部の関係者しか持っていないはずの資料を、分厚いファイルとして持っていて、こういうものまで入手しているんだなと思ったことがありますが、検察庁内の誰かが流さないとそういうものがそういう形で存在するはずがありませんから、「リークなどあり得ない」という公式見解、建前論が、いかに空しいものかがわかるでしょう。


追記:

「マスコミは検察の犬」 自民・河野議員が「検察報道」批判

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100122-00000002-jct-soci

河野議員のブログが掲載されたのと同じころ、元検事の落合洋司弁護士も「検察とリーク」と題した記事をブログに投稿。検事時代の経験をもとに、さまざまなルートで検察の捜査情報が流れている実態をつづった。

落合弁護士は、あるマスコミ関係者が「検察庁内部の関係者しか持っていないはずの資料」を分厚いファイルで持っていたというエピソードを紹介し、

「検察庁内の誰かが流さないとそういうものがそういう形で存在するはずがありませんから、『リークなどあり得ない』という公式見解、建前論が、いかに空しいものかがわかるでしょう」

と検察の情報管理の甘さを指摘した。
情報管理の甘さ、という見方もできますが、意図的に流しているわけですから、一種の確信犯で、それだけに危険と言えるような気がします。

保秘がしっかししていると信頼して、関係者が供述しても、右から左に情報がリークされるようでは、捜査にも支障が出かねない、ということも考える必要があるでしょうね。



●検察改革について


平成22年10月20日 弁護士 落合洋司


第1 郵便法違反事件・村木事件で顕在化した問題点

1 見立て、ストーリー先行の捜査。捜査過程において見直し、修正が適切に行われない実態

2 取調べが可視化されていない中、違法・不当な取調べが横行

3 主任検事自らが証拠改ざんという重大な違法行為に手を染めてしまう、「人」の問題

4 立証上、重大な問題点がありながら、報告、決裁において見抜けず起訴してしまうチェック機能の欠如

5 公判係属中に重大な問題点が発覚しながら、適切な対応ができず、犯人隠避にまで手を染め、しかも、有罪へ向けての公判活動を続けるという組織の在り方

第2 改革の方向性(私見)

1 特捜部を廃止し、公安部や特別公判部(裁判員裁判対象事件に対応)と統合して、特別刑事部に再編

← 特捜部在籍中に実績を作りたいという功名心、虚栄心等による無理な立件を防止する。また、特殊知能犯事件ばかり手掛け他の分野の事件に疎い、いびつな検事が出現することを防止する。

2 取調べの可視化を早期に実現

← 単純な可視化実現のみでは、刑事手続の真相解明機能が大きく低下する恐れがあるため、諸外国で導入されている制度を参考に、捜査機関に適切な真相解明手段も与える。

3 高検のチェック機能の強化、現在の「腰掛け」的な人事の見直し

← 事件のチェック機能を強化し、今回のような暴走を防止する。

4 「関西人事」の是正

← 少数による閉鎖的な集団が出現し、対東京のコンプレックスから暴走する、といった弊害を防止する。

5 裁判所による、捜査過程への適切な関与を立法化

← 戦前の刑事訴訟法にあった予審制度、アメリカで行われている大陪審制度のような、捜査に裁判所(及び国民)が関与する制度についても検討すべき

以上