溶解寸前の“烏合政権”(日刊ゲンダイ2010/10/29)


[TPP][国際連帯税][企業献金] 「閣内不一致」続出


菅政権がますますメチャメチャになってきた。閣僚が好き勝手に発言し、ベクトルが逆方向を向いているのに、政府として統一見解をまとめられない。菅首相が参加を表明したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる混乱がその代表例だが、他にも閣内不一致は次から次へと噴出。この内閣は溶解寸前だ。

100%関税撤廃のTPP参加に対して内閣の見解はバラバラだ。鹿野農相は「反対」、大畠経産相は「慎重」、前原外相は「賛成」である。農水省では、きのう(28日)も篠原副大臣が、「大風呂敷を広げていた野党時代の癖は今もあるのではないか」と菅をボロクソに批判した。自動車や電機など輸出業界を抱える経産省は、省としては参加に積極的だが、民主党内の反発を気にした大畠大臣が、26日になって「検討は十分ではない」と慎重姿勢に転じ、“省内不一致”まで露呈している。


ところが、閣内の意思統一ができていないのに、きのう(28日)ハワイでヒラリー・クリントン米国務長官と会談した前原は、「日本政府がTPPへ参加を検討している」と前のめりで説明。ヒラリーは「日本の関心を歓迎し、後押ししたい」と答えたという。会談で前原は、ヒラリーから米国のSL模型をプレゼントされた。前原は大の鉄道オタクだ。それも「好きなのは客車じゃなくてSL」(事情通)というから、浮かれて口が滑っていないか心配だ。
連立を組む国民新党も、さすがに呆れ顔だ。亀井代表はこう苦言を呈した
「どうもこの政権、軽いね。言っていること。政権自体の国民に対する責任感が問われる」


◆言いたい放題でメチャクチャ

閣内不一致は他にもある。「国際連帯税」という新たな税金をめぐっても、前原外相と馬淵国交相の間で火花が散っている。
「『国際連帯税』は、貧困や気候変動といった国際協力のため、国境を超える経済活動に課税する構想です。国際線の航空券に上乗せして徴収する方法が有力で、航空会社は『需要に響く』と反対、国交省も反対しています。しかし、前原さんは国交相から外相に横滑りした途端、今年9月の国際会議で『国際連帯税を検討する』と表明してしまったのです。馬淵さんは『受益と負担の関係が不明確で承知できない』とすかさず反発しました」(霞が関関係者)


企業献金再開でも足並みの乱れが著しい。党側の岡田執行部が再開を発表すると、前原は「国民と違う方向を向いている」と批判。仙谷官房長官は「プラスに動かない」と否定的。一方で菅は「マニフェストに反してはいない」と肯定した。

一体この政権は、何をどうしたいのか? 全くわけがわからない。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は今の醜態の元凶は菅にあるとみる。
「内閣不一致になるのは、結局、菅首相にこの国をどういう形にするのかという国家像がないからです。菅さんは、『最小不幸社会』と言いながら、国民の生活を危うくする消費税やTPPを簡単に口にする。総理に明確な理念がないから、大臣は好き放題に発言してしまう。まとまるわけがありません」

烏合の衆ならぬ、“烏合政権”である。



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