これが尖閣ビデオ拡散の一部始終!悪いのは方針二転三転の菅政権と必ず節目で顔を出した前原だ

(日刊ゲンダイ2010/11/9)


現場の石垣海保職員を犯人扱いするのは酷

本当に悪いのは、現場の「海猿」なのか――。中国漁船衝突事件の映像流出で、石垣海上保安部が、すっかり罪人扱いだ。きのう(8日)国会で仙谷官房長官が、流出映像と石垣海保編集のビデオが同一と認めたのを機に、大マスコミは「複数職員が持ち出し可能」「入管チェックなし」と、石垣海保の情報管理の甘さを叩きだした。しかし、現場職員の大混乱を招いた菅政権の「朝令暮改」の場当たり方針を不問にし、今さら現場の責任を問うなんて、コトの本質を見失っている。



◆「情報管理の徹底指示」一度もなし


9月7日の衝突事件発生以来、菅政権は日本の主張を貫くのか、中国との関係修復を重視するのか、右往左往。コロコロ変わる方針に海保の職員も振り回された。
「事件当初は、当時所管の前原国交相がイケイケで、職員は船長の起訴に向け、対応に追われました。ビデオ公開にも前向きで、事件当日は報道公開の準備も進めていました。その後、官邸から映像公開にストップが入りましたが、より多くの職員が事件の分析・検証にあたるため、気軽に映像をコピーできる状況は続きました。昼休みに職員みんなで映像を見て『おー、スゴイ』と喚声を上げていたほどです」(海上保安庁関係者)
石垣海保が流出映像を編集したのも、この頃だ。今回のような特異事例は今後の捜査に役立つと判断、職員向けの研修教材として編集した。

ところが、9月19日の船長の勾留(こうりゅう)期限延長に中国政府が怒り、次々と対抗措置を打ち出すと、菅内閣は慎重姿勢に転じた。しかし、また変わる。9月24日に仙谷官房長官の主導で船長を釈放すると、今度は「弱腰外交」批判が湧き起こり、外相となった前原大臣が、強硬にビデオ公開を主張し始めたのだ。
「前原大臣のあまりの剣幕に慎重論の仙谷長官まで『国会の決議がビデオ公開の条件』とまで踏み込み、読売新聞も、9月29日付の1面トップで『映像公開へ』と報じました」(官邸事情通)


大々的にビデオ公開が政府方針として伝えられたのだ。「いずれ公開するなら」と、再び海保職員の管理体制も緩んだ。しかし、である。10月4日にブリュッセルのASEM会場の廊下で「立ち話」の日中首脳会談が行われた3日後には一転、公開に応じない方針に傾いたのだ。10月8日の読売1面には「ビデオ非公開」の見出しが躍った。
「その後も国会で公開を求める圧力が高まり、10月15日の参院予算委で馬淵国交相は『ビデオのコピーが海上保安庁内にある』と認めてしまった。この発言まで、ビデオは検察庁が事件の証拠として保管している『原本だけ』で議論が進んでいた。国会議員も自由に見られない映像が、海保職員が好き勝手に見ていたと分かれば、大問題。馬淵大臣は発言の3日後に海上保安庁の鈴木久泰長官に『映像の管理徹底』を指示し、慌てて海保中に出回ったコピーのDVDを廃棄処分しました」(海上保安庁関係者)

これまでの1カ月余り。右往左往の迷走を続けた菅政権が、情報管理の徹底を指示したことは一度もない。菅政権の二転三転に振り回された石垣海保の職員にすれば、「オレたちだけをイケニエにするつもりか」という心境だろう。どう考えても一番悪いのは、短絡思考のノーテンキ大臣・前原なのである。




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