このトップ2人のトンズラを許すな  (日刊ゲンダイ 2010/11/11)


海保騒動よりも重要な[警視庁]テロ情報流出事件と[検察庁]大阪特捜部腐敗事件

尖閣ビデオ流出で、すっかりかすんでしまった警視庁公安部のテロ情報流出事件。こちらは捜査の進展がまったく聞こえてこない。

尖閣ビデオについて、仙谷官房長官は「公務員が故意に流出させたとすれば、明らかに国家公務員法違反だ」とカリカリ。政府の徹底捜査指示で事件は急展開を見せたが、テロ情報流出も構図はまったく同じ。むしろ、尖閣ビデオより深刻で悪質なくらいなのに、警視庁は、よその役所の流出は捜査して、身内の流出事件には消極的だから許せない。


「警視庁は頭を抱えているでしょう。官邸の指示で海保の捜査を担当することになったようですが、ホンネではやりたくなかったかもしれません。尖閣ビデオの流出犯を逮捕する以上は、警視庁の資料流出も犯人が分かれば捕まえるのがスジです。警視庁の文書を流出させたのは内部の人間で、すでに犯人を特定できたという情報もある。しかし、犯人を挙げれば、流出文書が本物だと認めることになる。認めてもいい一部資料についてのみ刑事事件にすることを検討しているという話もありますが、そんな子供だましが通用するはずもない。本音ではウヤムヤに終わらせたいのでしょうが、そうもいかなくなってしまう可能性が強いですから。もっとも、今はAPECの大警備でテンヤワンヤ状態だというから、これを口実に問題を先延ばしする可能性はあります」(ジャーリスト・青木理氏)

時間の経過とともに事件のインパクトが薄れ、世間から忘れ去られるのを待つ。これは警察組織の常套手段だ。臭いものにフタをして、都合の悪い事実は闇に葬る。結局、誰も責任を取らない。この悪しき体質は、検察組織と共通のものだ。

検察庁は、尖閣ビデオ流出騒ぎに「これ幸い」とほくそ笑んでいるに違いない。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で一斉に向けられた批判の矛先が、検察から横にそれた。新聞テレビでヤリ玉に挙げられる機会もめっきり減ったからだ。

「もともと、検察のストーリーでは、大坪前特捜部長らの逮捕・起訴で一件落着。捜査を終了させるつもりでいた。しかし、それで世論の反発が収まらなければ、上級庁や検事総長の責任問題に発展していたかもしれない。世論やマスコミの追及が緩み、とりあえずクビの皮がつながった大林検事総長は胸をなで下ろしていることでしょう」(司法ジャーナリスト)

尖閣ビデオ流出犯逮捕が、結果として2大腐敗組織を助けるとしたらブラックジョーク・陰謀の類いである。




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