●国際テロ文書だけ故意に?…公安情報流出
(読売新聞 2010年11月3日03時11分 ) http://bit.ly/bLf33w


流出した資料には「秘」などのスタンプが押された文書も多数含まれている 警視庁公安部の内部資料とみられる書類100点以上がインターネット上に流出した問題は、何者かが「国際テロ」に絡んだ極秘文書を電子データ化して、意図的に流出させた疑いが浮上している。

 横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)直前に表面化した前代未聞の不祥事に、警察当局には混乱と動揺が広がり、APEC警備への影響を懸念する声も上がっている。

 ◆強まる「故意」説

 千葉県内の大規模団地の一室。ネット上に流出していた資料をもとに部屋の住人を訪ねると、アフリカ出身の30歳代の男性が顔を出した。資料にあった氏名や住所、家族構成はすべて事実で、男性は「なぜ私たち家族の名前が流出しているのか。大使館を通じて抗議させてもらう」と、憤まんやるかたない様子だった。

 流出した資料は、イスラム過激派などによる「国際テロ」対策を担う警視庁公安部外事3課が保管していたとみられる。同課が動向を探っている外国人の台帳のほか、「協力者に育成するまでの心得」といった内偵捜査に関する資料も含まれ、公安警察の“手の内”が暴露される結果にもなった。

 公安部の内規では、業務上の文書のデータはすべて専用コンピューターに保存し、作成に使ったパソコン上の文書やメモは削除するよう義務付けられている。専用コンピューターからデータを引き出すには許可が必要で、同庁が調べた結果、これだけ大量の文書を業務でまとめて引き出した職員はいなかった。

 流出した文書は、国際テロに関するものに限られていた。その大半は、今年5月のゴールデンウイーク中に「PDF」と呼ばれる電子文書に変換されたことが明らかになるなど、同庁の内部調査が進むに従って、何者かがテロ関連文書だけを集め、故意に流した疑いが強まるばかり。

 しかも同庁が流出を察知したのは、先月29日夜に民間企業から通報を受けたことがきっかけで、ネット上の違法情報を監視する同庁のサイバーパトロールが通報を受けるまで今回の問題に全く気づかなかったという「もう一つの課題」も浮き彫りになった。

 ◆APECへの影響

 先進諸国の治安当局や情報機関は、2001年の米9・11同時テロを機に、担当者同士が情報交換する「インテリジェンス・コミュニティー」を強化し、国際テロに関する非公式協議を定期的に行っている。

 日本の場合、こうした情報のやり取りは、都道府県警察の中で唯一、公安部を持つ警視庁や、全国の警備警察を統括する警察庁が担当。情報提供を受けた国は、相手国の同意なしに情報を漏らさない「サードパーティー・ルール」という暗黙の原則を守りながら、海外の治安機関が入手した北朝鮮の動静などについても提供を受けてきた。

 流出した文書の中には、米連邦捜査局(FBI)の要請で首都圏在住の外国人から事情聴取する計画書なども含まれているが、警視庁は「内部資料かどうか調査中」という立場を取り続けている。もし実物だと公式に認めてしまうと、他国の機密情報に関する資料も本物だと公表することになり、日本警察は国際的信用を失墜しかねない。

 現在、全国の警察本部は今月13~14日に横浜市で開催されるAPEC首脳会議に向け、テロ情報の収集を強化しており、その直前になって、各国の情報機関の協力が得られなければ、「我が国のテロ対策は無力になる」(警察庁幹部)恐れすらある。

 その一方、今回の資料を流出させた人物を放置すれば、日本警察は、他の文書が次々に漏れる第2、第3の流出の不安を抱えたまま、テロ対策を続けることになる。ある警察幹部は、「日本の将来の治安さえも揺るがしかねない深刻な事態。対応を誤れば日本のテロ対策が10年以上、遅れる可能性もある」と話した。(社会部 小池武士)




●警視庁外事3課に未接続PC複数 痕跡残さず持ち出し可能 
(共同通信 2010/11/06 17:40)  http://bit.ly/cIbhCt


 警視庁公安部外事3課などが作成したとみられる文書データがインターネット上に流出した問題で、同庁のネットワークシステムに接続されていないパソコンが同課に複数台あることが6日、捜査関係者への取材で分かった。

 捜査関係者によると、仮にこのパソコン内に流出したデータがあった場合、記憶媒体などを使ってシステム上に痕跡を残さずに持ち出すことは可能だという。

 課員らがこれらの未接続パソコンで捜査関係の文書を作成することもあるとされ、警視庁は使用実態の解明を進めるとともに、課員らから聞き取りを行うなどして調べている。

 捜査関係者によると、警視庁は全庁共通のサーバーで一括して文書を管理。パソコンを使用する際は、職員番号とアルファベットを組み合わせたIDを打ち込み、自身で設定したパスワードか指紋認証システムを使ってログインする。担当業務や階級ごとにアクセスできるデータに制限があり、許可なくUSBメモリーなどの記憶媒体を接続すると、情報管理課に通報されることになっている。



●テロ情報流出 経由サーバーは1カ所 7回検索、拡散確認か
(産経新聞 2010.11.10 00:08) http://bit.ly/bxhAUI


 警視庁公安部が作成したとみられる国際テロ捜査資料がインターネット上に掲載された問題で、経由したサーバーはルクセンブルク1カ所のみの可能性が高いことが9日、情報セキュリティー会社の分析で分かった。複数のサーバーを経由した場合に比べ流出源特定が容易になるが、ネットカフェや無線LANを使用されると特定は困難という。

 警視庁はルクセンブルクのサーバーの管理会社などに協力を要請。IPアドレスなどの解析を進める。

 一方、資料がファイル共有ソフト「ウィニー」上に流れた翌日には、流出した圧縮ファイル名が7回にわたって検索されていたことも判明した。いずれも警視庁公安部現職幹部の名前が付いたファイルで、流出させた者が拡散状況を確認した可能性が高い。

 関係者によると、サーバーの支払いにはクレジットカードや金融機関への振り込みが使われたとみられる。流出元特定の手がかりになる可能性もあるが、偽名などが使われると絞り込みは難航するという。



●公安文書流出:発覚1週間 警視庁は内部関与も視野に調査
(毎日新聞 2010年11月7日 9時29分) http://bit.ly/bazjOv


 国際テロに関する警視庁公安部外事3課などの内部資料とみられる文書がインターネット上に流出した問題は6日、発覚から1週間を迎えた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)の直前というタイミングを狙って故意に流出させた疑いがあり、警視庁は身内の関与も視野に調査を進めている。捜査協力者の氏名や住所など、ネット上で広がった個人情報は膨大。4日には沖縄・尖閣諸島沖での漁船衝突事件の映像が流出し、国の情報管理のあり方が改めて問われている。真相解明に向けた警視庁の調査の課題を探った。【村上尊一、伊澤拓也、小泉大士】

 文書はファイル共有ソフト「ウィニー」を通じてネット上に流れた。警視庁は正式には内部資料と認めていないが、流出元の個人データが含まれるといった暴露ウイルス感染時の特徴がないことなどから、意図的な流出との見方を強めている。

 調査の壁は、痕跡を改ざんできる電子データの特徴だ。114本の文書のうち108本が、コンピューターの機種を問わずに閲覧できる「PDF」というファイル形式に変換されている。このため、元データを作成したコンピューターや日時などの手掛かりが少ない。

 ルクセンブルクのサーバーを経由するなど、一見、IT知識を駆使しているようにみえる。しかし、ウィニーの専門家は「ウイルス感染を装いながらも、感染していないことが簡単に分かるなどずさんな点も見え隠れする」と指摘する。

 犯人像として第一に考えられるのが警察関係者だ。警視庁のサーバーは外部からは接続できない。庁舎内で公用パソコンにUSBメモリーなど私用の電子記憶媒体を接続すれば、システムが自動感知する。さらに、公安部のデータは暗号化され、公用パソコン以外での閲覧は困難という。

 文書の種類は多岐にわたり、1カ所に保存されていた可能性は低い。このため警察幹部は「全文書を入手できる立場の職員を絞り込みたい」と話す。公安部長の名字をひらがな表記したファイルもあり、「組織や人事に不満を抱く職員」との憶測もささやかれている。

 一方、捜査員が紛失したUSBメモリーの第三者による悪用や、ハッキングといった外部犯行説も完全には捨てきれない。

 警視庁はルクセンブルクの捜査機関に協力要請し、発信者にたどり着こうとしているが、ある警察幹部は「事件捜査に例えれば、まだ発生直後の鑑識活動の段階」と話す。

 ◇怒る捜査協力者
 国籍、氏名、生年月日、旅券番号、職業、出生地、住所、電話番号、家族、出入国歴、出入りモスク……。

 ある日本人女性に関する文書には細かな個人情報が記されていた。外事3課がアルジェリア人でイスラム教徒の前夫について捜査する過程で協力を求めた際の情報とみられる。

 「何のことか全然分からない」。今は日本人の夫と首都圏で暮らす女性は、情報流出に困惑を隠せない。「(前夫とは)もう関係ない。どこからも何の連絡もなく、非常識にもほどがある」と必死に怒りを抑えて話した。

 114本の文書で、名前だけでなく住所などの個人情報も記載された人は延べ600人以上。テロ関連の捜査対象者や捜査の協力者とみられ、一般人のものも含む多くの個人情報がネット上にさらされた。

 文書にはイスラム教を信仰する外国人についての記述が目立つ。東京都内の北アフリカ料理店は「い集(集合)場所や国際テログループのインフラとしての機能を果たすおそれあり」とされていた。個人情報が並べられ「事件関係者として接触予定」との記述もあった。経営者は「テロとのつながりなどあるはずはなく、文章は想像だ。日本人女性と結婚して子供も家もある。近所付き合いが変わるかもしれないし、子供が学校でいじめられるかもしれない」と心配は尽きない。

 東洋大総合情報学部の島田裕次教授(情報セキュリティー)は「ネットを通じた情報流出で恐ろしいことは拡散の速度だ。これだけ広がると回収は不可能。流出被害を回復する手段すらない」と話す。

 ◇「信頼回復に10年はかかる」と専門家
 「イスラム過激派を刺激し、テロをインバイトする(招く)要因になる。開催目前のAPECの首脳会議は格好の標的だ」。元内閣安全保障室長の佐々淳行さんは流出問題の影響をそう懸念する。

 114本の文書はほぼすべてが国際テロ捜査に関する内容で、協力者のイスラム教徒の個人情報のほか、中東のイスラム国の在日大使館員の口座記録などが含まれている。

 公安関係者が特に問題視するのはモスクのチェックに関する文書だ。出入り者総数や「特異動向」といった詳細な記述が並ぶ。

 イスラム過激派など国際ネットワークをもつテロリスト集団と対峙(たいじ)するには、国内外のイスラムコミュニティーからの幅広い情報収集が不可欠だ。「日本人はすべてのイスラム教徒を敵視しているという誤ったメッセージになりかねない」。捜査関係者はイスラム教徒から協力を得にくくなることを憂慮する。

 「国際テロ対策は一日にしてならず」。ある警察幹部は、情報の蓄積のためには海外の治安・情報機関との連携の重要性を指摘する。こうした「インテリジェンス(情報活動)」は秘密厳守が世界共通のルールだ。公安部は海外の情報機関との情報共有が多く、警察庁警備局と並び「情報機関」といわれる。今回漏れた文書にAPECの警備関連はなかったが、14本には「秘」の印が付いており、海外機関の信頼も損ないかねない。

 関係者の間では「文書が本物かどうかは一目瞭然(りょうぜん)。でも、それを認めたら海外機関から深い情報をもらえなくなる」との危機感が強く、調査を難しくしている。佐々さんは「インテリジェンスの世界は厳しい。一度でも失敗すれば信頼回復に10年はかかる」と話した。



● テロ情報流出疑惑 複数幹部の資料か 故意と判断 刑事事件へ
(産経新聞 2010.11.4 01:56) http://bit.ly/dkjoih

 国際テロを捜査する警視庁公安部外事3課が作成した可能性のある資料がインターネット上に掲載された問題で、掲載された100件以上の資料は作成期間や内容などから、複数の幹部が別々に所有する資料とみられることが3日、捜査関係者への取材で分かった。海外サーバーを利用していることから、警察当局は過失ではなく故意に流出させたとみており、刑事事件に発展する見通しが強まった。

 警視庁は引き続き、内部資料か偽造されたものかの調査を進めるとともに掲載された経緯を調べる。一方、民間セキュリティー会社は、ファイル名の付け方からファイル共有ソフト「ウィニー」の使用に慣れた者ではなく、今回初めて流出させる目的で、ウィニーを使用した疑いがあるとの分析をしている。

 掲載が確認された資料は、海外の捜査協力者への接触のための出張計画や国内イラン人協力者からの情報提供、警視庁外事3課長の通達など少なくとも114件。資料作成期間は平成19年から21年にかけてが多いが、16年や17年に作成されたものも含まれていた。

捜査関係者によると、こうした出張計画や課長通達は捜査員個人が所有していることも考えられるが、異動や職責上の権限、資料の多様性を考慮すれば、6年間に及ぶ114件の機密資料すべてを所有する捜査幹部はいないとの結論に達したという。このため何者かが、流出させる目的で複数の資料を電子データや書類などの形式で、抜き出した疑いが強まっている。

 セキュリティー会社「ネットエージェント」(東京都墨田区)によると、資料はルクセンブルクのサーバーを経由して10月28日夜から翌29日夜にかけて「ウィニー」のネットワーク上に拡散。警視庁も同様の事実を把握しているが、レンタルサーバーの疑いがあり、追跡は難航している。

 同社によると、掲載されていたファイル名はウイルス感染したものに比べ、文字数が少なかった。ウィニーによる感染流出の場合は国内のサーバーを経由することが多いが、今回は海外のサーバーを使用。同社は追跡を逃れるためにあえて海外サーバーを利用したとみている。

 掲載された114件のうち108件は今年5月2日から4日の間にPDFファイルに変換されていた。公安部では資料をPDF形式で保存していないという



●「インテリジェンスは崩壊した」ずさんな情報管理、公安情報流出
(産経新聞 2010.11.5 21:12) http://bit.ly/bJYSno


 ネット掲載された公安部外事3課が作成したとみられるテロ捜査資料は計114件。うち108件が、今年5月2日~4日の大型連休中にPDF形式のファイルに変換され、10月28日夜にウィニーのネットワーク上で閲覧できる状態になった。

 故意の流出であれば、流出元は半年近くデータを暖めていたことになり、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせ、テロ対策を進める公安部を混乱させようとする意図がすけてみえてくる。

 情報セキュリティー会社「ネットエージェント」(東京都墨田区)によれば、資料は5つの圧縮ファイルに分けて公開。現職公安部幹部の名前のほか、「PSP裏マニュアル」「写真集等2010セクシーアイドルヌード」などのファイル名だった。

 ウィニー利用者の関心を引くように多様なジャンルのファイル名をつけたとみられる。ウイルス感染流出を偽装したような形跡もあった。

 流出した資料は公安部の幹部クラスしか本来所有していないものだった。情報が生命線とされる外事・公安警察の総本山とも言うべき警視庁公安部でのずさんな情報管理の実態が明らかになる。

流出した資料は、捜査協力者の名前や住所といった個人情報のほか、海外情報機関との連絡などで、ベールに包まれた公安警察の捜査手法が白日にさらされてしまったのだ。

 「幹部への個人的な恨みなのか、組織による警察への挑戦か分からないが、これまで積み重ねた日本のインテリジェンス(情報活動)はすでに崩壊したと言ってもいい」

 公安部OBは悔しさをにじませる。