[尖閣ビデオ]流出保安官 「お詫び文」のデタラメ

(日刊ゲンダイ2010/11/13)

「騒がせた」と謝罪する一方でマスコミに「騒ぐな」と居直る

◆外野の“応援”に勘違い
いやはや驚いた。呆れた言いぐさである。尖閣映像の流出を自白した神戸海上保安部の海上保安官(43)が、13日未明に自筆文書を報道陣に出した。ところが、〈世間をお騒せした事及び多くの人々に多大なる御迷惑をおかけした事を一番最初に心からお詫び申し上げます〉と謝罪しているのは最初だけ。あとはマスコミの報道姿勢を批判しているのである。

〈私がここに宿泊いたしますのは、貴方たちマスコミのおかげです〉
〈建物を出たならば、さらに多大なる迷惑を多くの人々にかけてしまうからです〉
〈過熱した報道を少しはひかえて下さい〉
石原慎太郎都知事あたりが「なぜ愛国者を捕まえるのか」なんて中国人の「愛国無罪」そっくりの論法で持ち上げたもんだから、何でも許されると勘違いしているのだろうか。「騒がせた」と頭を下げながら、「騒ぐな」と居直るのだから支離滅裂である。

政府が公開を拒んだ映像を一介の保安官が流出させたのである。どんなヤツが何を考えてやったのか。背景や動機を探ろうとする報道陣が殺到し大騒ぎになることぐらい、容易に想像できただろう。学校を出たての新人ならいざ知らず、社会人としても十分に経験を積んできたはずの年齢である。結婚して子供もいるという。それにしては、あまりに世間知らずではないか。 テレビ局の取材に「だれもやってくれないなら、自分でやるしかないと考えた」とか何とかエラソーに話していたが、投稿した映像は、反響の大きさに驚き大慌てで削除している。投稿場所が神戸のインターネットカフェと特定されたときは、明らかに態度がおかしくなり、巡視艇「うらなみ」の船長に問いただされて“自首”したという。

どうやら信念や覚悟を持って流出させたのではなさそうで、なんともしまらない“英雄像”が浮き彫りになってきた。



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