ユーチューブと海上保安庁、自民党時代からベタベタの関係 (日刊ゲンダイ2010/11/15)


自民党はエラソーに騒ぐな

尖閣ビデオをユーチューブに流出させた海上保安官(43)の“処分”が決まらない。映像が「機密」に当たるかどうかで捜査当局がモタついているからだ。しかし、これには笑ってしまう。今回の流出映像よりも、よっぽど「機密」扱いと思える国防情報がタレ流し状態なのだ。


◆公式チャンネルまであって映像流し放題

そもそも、海上保安庁は昔から、沖縄や九州沖で中国や北朝鮮の不審船と対峙する映像をメディアに提供してきた。「撮る」「流す」――が日常の“ルーティンワーク”だから、今回の保安官も映像管理に対する意識が低かったのだ。実際、今回の流出元となった海上保安大の共有フォルダーはアクセス制限がなかったことが判明している。
「自由に映像をやりとりできる環境をほったらかしにしてきて、今回、大騒ぎするのも変です。流出させた海上保安官が所属する第5管区海上保安本部は、以前からユーチューブに公式チャンネルも持っていた。外務省や農林水産省も公式チャンネルを持っているが、5管のように一部署が開設しているケースはマレです。投稿する映像について、誰が『広報』か『機密』かを判断していたのでしょうか。こんな環境なら、“素材”があれば投稿しようと思う職員が出てきても不思議じゃありません」(国交省担当記者)

ヌルイ状況は5管に限らない。ユーチューブに公式チャンネルを持っている陸上自衛隊や海上自衛隊も、情報や独自映像を流し放題だ。例えば、昨年5月に開設された「陸上自衛隊広報チャンネル」。「富士総合火力演習」と題したコンテンツには、普通だったら目にできない陸自が所有する迫撃砲や誘導弾、戦車、装甲車などの主要装備が生々しく登場する。北海道に駐屯する第11旅団の部隊編成を詳しく説明するコンテンツもある。また「海上自衛隊チャンネル」では、護衛艦「きりしま」の弾道ミサイル防衛(BMD)の発射試験の様子が臨場感タップリで紹介されている。
広報活動とはいえ、国防を担う省庁がこぞって「機密」を披露しているような状況なのである。ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう言う。


「省庁がユーチューブ内に公式チャンネルを持つようになったのは08年ごろ。ちょうど自民党政権末期の時からで、手っ取り早い広報手段として広まったようです。ただ、記者会見などを流している省庁はともかく、国防機密を扱う陸自や海自のユーチューブ映像はやや脇が甘いような気がします。海外でも軍隊が陸自と同じような映像を流していますが、限定的です」


自民党政権時代から、映像は撮り放題、見放題だった。そのツケが今回、たまたま噴出したのである。




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