このまま傍観したら大変!菅首相「米中ロ」に土下座 チョロイものだ 自民と同じ民主の無能

(日刊ゲンダイ2010/11/15)

やっぱり小沢一郎の復権がこの国の政治に絶対必要だ

―中国主席を前に紙に書いた文章を読み上げ、胡錦濤は紙も持たずに手を組んで頭を上げて聞いていたシーンが象徴的

―メディアも騒ぎ過ぎ、こんな短時間の首脳会談に一体どんな意味があるのか

まさに、菅首相の外交無力を象徴する光景だった。ようやく実現した13日の日中首脳会談の冒頭のシーン。そのニュース映像を見てズッコケた国民も多かっただろう。
菅は終始、前かがみ気味で手には何やら紙切れを持っていた。ナント、メモに目を落としながら、「首脳会議への出席を心から歓迎する。日中両国は一衣帯水の関係だ」と、あいさつ文を全文読み上げていたのだ。首脳会談の場で、メモを見ながら話す首相など見たことがない。
対する胡錦濤国家主席は堂々としたもの。硬い表情を崩さず、深々と椅子に腰掛け、手を組んでデンと構えていた。もちろん、頭を上げ、メモなど手にしていない。
両国首脳の「格」の違いは歴然。結局、菅は通訳を挟んだ22分間の会談中、尖閣問題など日中間の懸案事項について、何ひとつ議題に乗せられなかった。
日本政府は、両国首脳が面と向かって腰を下ろして話したから「正式会談だ」と言い張り、成果を強調するが、中国はAPEC議長国の日本のメンツを立てた程度の対応に過ぎなかったのだ。


◆上海万博に賛辞を送っただけの首脳会談

「中国側は今回の会談を『正式な会談』とは認めていません。中国外務省は『交談(会見し、言葉を交わした)』と、軽い位置付けです。会談内容を伝える中国側の報道も、胡主席が『中日双方とも、戦略的互恵関係に沿う健全で安定した道を進むことに努力すべきだ』と提言。菅首相は『両国関係の改善をいま一歩進めることを希望する』と全面的に賛同し、上海万博の成功を祝賀したことになっています」(上海在住のジャーナリスト)
用意したメモを読み続け、相手国の国家イベントの成功に賛辞を送っただけの会談に一体何の意味があるのか。
国際問題評論家の山岡清二氏はこう言う。
「政権内からは『会談しただけで成果だ』『今回を逃せば、来年夏の仏G8サミットまで実現の機会がなかった』との声も出ていますが、冗談じゃありません。会談の機会を失うデメリットは中国側も同じ。


菅政権は日中関係のパイプが細く、中国側のホンネが伝わってこないのでしょう。外交は相手国のメンツを立てウラで根回しするのも重要です。菅政権の外交は中国の出方をアレコレ忖度(そんたく)し、『このくらい譲歩すれば平気かな』と手探り状態。こんな弱気では本当の外交とはいえません。ますます中国側をツケ上がらせるだけです」
日本のメディアは「尖閣後、初の正式会談」などと騒いでいるが、お笑いだ。
ただ「会ってもらうだけの会談」に精根を使い果たし、それが報道されることが「仕事」と思っている菅。もうアップアップだ。能力の限界がハッキリした。



◆米国に尻尾を振る自民党以下の土下座外交

だから、直後に行われた日ロ首脳会談は、見るも無残だった。
北方領土に電撃訪問したメドベージェフ大統領を目の前にして、菅首相は「わが国の立場、国民感情からして受け入れられない」と抗議。すると、メドベージェフは「ここは我々の領土だ。ロシア領内のどの地域を訪問するかは私自身が決める」と突っぱね、「感情的な声明や外交的なジェスチャーは逆効果になるのでやめたほうがいい」と、駐ロ大使を4日間だけ帰国させた日本の対応を批判した。形ばかりの抗議をしただけで、2、3倍にしてヤリ返される始末である。
「メドベージェフへの抗議の際、菅首相は『北方領土は日本固有の領土』という決まり文句を封印。ロシア側に付け入るスキを与えたのです。中国と尖閣問題を抱えた日本が、北方領土でロシアとも対立する“二正面作戦”は取れっこない。そうロシア側に値踏みされ、北方領土問題でも菅政権は八方ふさがりになってしまったのです」(山岡清二氏=前出)

領土問題で中ロ両国から攻勢を受ける“イジメられっ子”の菅首相が、泣きついた先は世界の“ガキ大将”の米国だ。

同盟関係の立て直しのため、オバマ大統領との会談では「中国、ロシアとの問題で、米国がサポートしてくれてうれしい。米国、米軍の存在がより重要だという認識を私自身も持った」と、おべっかを使ってロコツにスリ寄った。
鳩山前首相が掲げた「対等な日米同盟」路線をかなぐり捨て、終始ペコペコ。結果、オバマには「来春ワシントンに招待する」ことと引き換えに、それまでにTPP参加や普天間移設を米国が望む形で道筋をつけるよう「宿題」を与えられてしまった。それでいて、菅が強く望んだ、オバマとの「鎌倉・抹茶アイスデート」は拒否されたのだから、世話はない。
元外交官で評論家の天木直人氏はこう嘆く。
「米側にすれば、中国と南シナ海や東シナ海の利権をめぐって、せめぎ合いが続く中、日本を『扱いやすいコマ』としか考えていません。今回の『日米同盟強化』のリップサービスも、中国への牽制の意味合いが強い。そんな思惑含みの米国の態度に、菅首相は全力で尻尾を振って応える。戦略も戦術もない場当たり外交の結果、いよいよ菅政権は米国側にいいように利用されるのです。これでは、自民党時代の対米追従外交に逆戻り。いや、いたずらに日中・日ロ関係を悪化させた以上、自民党時代よりヒドイというべきです」



◆世界中から軽蔑される国になっていいのか

米中ロに土下座するだけの菅政権。APECでのみっともなさを見るにつけ、民主党の選択は大きな間違いだったと、つくづく思わされる。なぜ、9月の代表選で小沢一郎を選ばなかったのか。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。
「検察審査会の議決に踊らされ、小沢嫌いのメディアの口車に乗り、菅首相の『少ししかやっていないから』という消極的な続投理由に乗った、民主党議員の選択は間違いでした。仙谷官房長官は『しなやかで、したたかな柳腰外交』と言っていますが、日中・日ロ関係は自民党時代以上に後退しています。結局、菅・仙谷内閣が中国船衝突事件の初動ミスを認めない限り、日本外交は動きません。しかし、保身に走る彼らは自らのミスを認めようとしない。どこが、しなやかで、したたかなのか。即刻、退場願いたいものです」

小沢は中国とも太いパイプを持つ。最近も日本の外交姿勢について「政府として主張をきちんとしないといけない。世界は自己主張しない人間を軽蔑する」と言っていた。正論だ。小沢が表舞台に復権すれば、停滞する日本外交に一本芯を通し、事態打開に向け全力で取り組むだろう。


このまま菅政権に外交のカジ取りを任せると、日本は世界中から見向きもされず、軽蔑される国になってしまう。経済問題でも守勢に立たされ、損をさせられるだけだ。国民はそれでいいのか。いま一度、小沢の剛腕に外交を託すべきではないのか。

傍観が許される時間は、もうとっくに過ぎてしまっているのだ。




※日刊ゲンダイはケータイで月315円で読める。
この貴重な媒体を応援しよう!
http://gendai.net/