菅不況で進む失業地獄 国民をどこまで犠牲にするのか  (日刊ゲンダイ2010/11/17)

大学内定率57.6% 長期失業者128万人…目玉なき補正予算が成立したところで焼け石に水

10年度補正予算案が衆院を通過。これで一応、成立することは決まったが、菅政権がモタモタしている間に、この国の経済は待ったナシの状況に追い込まれてしまった。中でも雇用の悪化は、目を覆いたくなるような惨状だ。
きのう(16日)総務省が発表した7―9月期の労働力調査によると、完全失業者336万人のうち失業期間が1年以上にわたる人は128万人に上るという。

これはバブル崩壊後の03年4―6月期を上回り、過去最多だ。前期(4―6月期)比でも10万人増えた。菅政権が発足後、雇用対策をまったく打ってこなかったことが数字にハッキリ表れている。「だいたい補正予算にしたって出すのが遅すぎるし、中身もヒドイ代物です。この国の経済状況を考えたら、5兆円規模のチャチな補正予算では焼け石に水。


ハッキリ言って何の役にも立ちません。骨折しているのに絆創膏を張って済ませようとしているようなものです。菅首相が本気で雇用問題に取り組むつもりがないことは、補正の中身を見ても分かります。経済が良くならなければ雇用も増えないのに、景気浮揚になるような目玉政策はゼロ。新規雇用を創出する具体策がないし、経済を立て直そうというメッセージもない。これで景気が良くなるわけがありません」(エコノミストの紺谷典子氏)


◆大卒者の3割が一生フリーター
雇用悪化の影響をモロにかぶっているのが若者世代だ。16日、文科省と厚労省が発表した来春卒業予定の大学生の就職内定率には言葉を失ってしまう。10月1日時点の内定率は、前年より4・9ポイント低い57・6%。ついに6割を切ってしまった。これは、調査を開始した96年以降で最悪の数字だ。
「例年なら、年度末にかけて内定率が上がりますが、今年は景気の冷え込みで採用を見送る中小企業が多く、期待できません」(就職情報誌編集者)
雇用環境と歩調を合わせるように、若年層の自殺も増加傾向にある。09年には20代の自殺者数が過去最悪を記録。理由は「就職の失敗」がトップだった。

若者の就職問題に詳しい作家で精神科医の和田秀樹氏が言う。
「大学生の就職内定率が6割というのは、非常に深刻な事態です。残りの4割近くは非正規雇用に走る可能性がある。新卒で非正規から正社員になれるのは、だいたい2~3割と聞きますから、大卒者の約3割が一生フリーターということです。そうなると、年金や社会福祉などの制度設計がすべて崩れてしまう。異常な社会になってきました。この不景気では、教育費だってバカにならない。数百万円かけて大学を出ても就職できないとなれば、親は教育にお金を使わなくなってくる。一般国民の教育レベルが下がれば、国力が衰え、経済は沈下、世界での競争力を失うという悪循環。教育と雇用がガタガタになった国は、先進国とはいえません」

それなのに、国のトップの危機感は薄い。大学生の就職内定率が過去最低だったことについて聞かれた菅首相の口から出たのは「心配している」と、まるで他人事のような感想だった。この男に任せていたら、日本は破滅に向かって一直線だ。

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