空しく滑稽 菅首相の志士気取り 国民生活のための政権立て直しのため小沢復権が必要

(日刊ゲンダイ2010/11/17)

このまま推移したらこの国は限りなく劣化する

―「開国だ」「黒船だ」「奇兵隊だ」と百年以上も時代錯誤。一体何をやってんのか

―古過ぎる頭の中、こんな人物を総理大臣に選んでしまった民主党の国会議員たちは余りにも無責任
民主党議員は、この落とし前をどうつけるつもりなのか。世紀の無能首相を選んだ重大責任である。

小沢一郎元代表を排除し、消費税発言でぶれ、マニフェストを軽視し、参院選に惨敗した菅は、誰が見たって、その時点でアウトだ。それなのに、小沢憎しの一点で菅続投に走った菅・仙谷・前原らの「排除の理論」に206人もの国会議員が乗っかったのである。

「首相をコロコロ代えてはならない」なんて、後講釈のようなものだ。要するに小沢の復権を許さない、そのための代表選であり、菅続投だったのである。その結果はどうなったか。「何だ、この様は」という惨状ではないか。
改造後たった2カ月で支持率は2割台の危険水域に突入。朝日の調査で菅外交を「評価しない」と答えた人が77%に達した。ふつう、APECなどの国際会議は政権浮揚につながる。だから、どんな無能首相も外交には血道を上げるものだ。菅も同じだったが、結果は完全に裏目だった。
APECのために中国漁船の船長を釈放したのに、胡錦濤国家主席とはたった22分間のドタバタ会談。中身も公表できないお粗末さである。ロシアのメドベージェフ大統領には国後島を訪問され、菅が文句を言うと「どこが悪い」と居直られた。完全にバカにされているのである。
こんな菅を見ていれば、誰が国会で協力するものか。当初は連携に協力的とみられた公明党も、衆院で自民党が出した仙谷官房長官と馬淵国交相の不信任決議案に賛成する事態になった。衆院で賛成で参院で反対は筋が通らない。野党多数の参院では、仙谷や馬淵の問責決議案が通るかもしれない。菅はいよいよ八方塞がりなのだが、これも自業自得だ。小沢を排除し、経験ゼロの大臣たちが権力を握って舞い上がり、お遊戯のような政権運営をするから、こうなるのである。



◆ママゴトのようなお子様大臣ばかりの菅政権

自民党の加藤紘一元幹事長がテレビでいいことを言っていた。
「国内世論がいくら怒っても同調しないことが外相の役割なのに、自分が英雄になろうとしている前原は外相失格だ」と切り込んだのである。
自民党の政治家がいいとは言わないが、民主党の未熟さを言い当てている。改めて、加藤元幹事長に聞いてみた。
「外務大臣の役割というのは、相手国の主張と国内の要望の板挟みになりながら、最良の結果を引き出すことです。その過程で批判を受けるのは当然です。日本中が中国はけしからんと怒っても、外相はそう言わないで耐えること。弱腰と袋叩きに遭っても我慢することが大切なのです。ところが、前原大臣は自分が英雄になろうとしている。外相失格、中国が怒るのも当たり前です。そもそも、外交は言うだけではダメで、実益を取らなければいけないのです」

言いたい放題の前原のせいで、どれだけ日中関係が損なわれ、経済的損失を被ったか。企業の中国担当者は怒り心頭に発している。
口先ナショナリストは、ひっこんでいてもらいたいが、無能、デタラメ大臣は前原だけではない。尖閣ビデオ問題で火ダルマの仙谷は言うに及ばず、首相の菅は胡錦濤の目の前でメモを読んで、世界の笑いものになった。菅はG20でもファイルを持ったまま李明博韓国大統領と握手し、その情けない姿が全世界に配信されている。
TPPの根回しもできず、参加国との会食では冷笑されている菅を見ていると、本当に情けなくなる。こんな首相が「平成の開国だ」「良くも悪くも黒船だ」などと、ひとりでコーフンし、幕末の志士気取りなのだからお笑いだ。
政権発足時にも「奇兵隊内閣」とか自画自賛していたが、この時代錯誤と言葉の軽さ、さらに言うと自己陶酔でいい気になっているところが致命的なのである。



◆小沢に頭を下げて仙谷を切る以外に道はなし

仰々しく大風呂敷を広げるものの、実行力ゼロ。国際交渉の準備もせずに、すべてが場当たり的で計画性なし。こういう政権だから、米国も突き放し、それを見た中国やロシアは今がチャンスと揺さぶりに出ている。こんな政権に任せていたら、日本は万事休すである。政治評論家の山口朝雄氏が言う。

「どの国も相手国の事情をしっかり分析し、緻密な戦略を立てています。菅政権にはそれがない。どこの国ともガタガタではないですか。だから外国から足元を見られ、やりたい放題、言いたい放題をされるのです。首相は幕末の志士を気取っていますが、日本がここまで追い込まれたのは、就任以来の無為無策のツケ。開国だ、黒船だと時代がかった発言を繰り返し、奇兵隊、有言実行内閣と抽象的なキャッチフレーズばかり並べるのは、これをやりたいという具体的政策がないことの裏返しです。これ以上、菅首相に任せていたら大変なことになりますよ」
外交が駄目なら、国内政治くらいきちんとやればいいのに、この政権はねじれ解消のために努力した形跡もない。公明党と話し合おうにもパイプはないし、案の定、岡田幹事長はデクノボーだ。だから、小沢がいなければダメなのである。

政治ジャーナリストの野上忠興氏が言う。
「このままでは菅政権はジリ貧です。やがて、もたなくなると思う。そのとき、ポスト菅は誰になるのか。さすがに小沢氏も裁判があるから動きにくい。だとすれば、菅首相は今こそ小沢氏に頭を下げて協力を仰ぐべきなのです。そのためには仙谷長官を切るしかない。そうやって挙党一致を申し入れ、小沢氏の知恵と人脈を借りるのです。それしか民主党政権が生き延びる方法はありません」



◆このままでは民主党は二度と政権につけないゾ

筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)は「小沢氏の復権がなければ、民主党政権ばかりか日本が沈没する」と、こう指摘する。
「国内外からソッポを向かれた菅政権は、ますます米国にすり寄ろうとしています。この状況を一番喜んでいるのは米国です。菅首相は『開国』と言うが、今のテイタラクでは『売国』になりかねない。そもそも小沢氏なら、尖閣も北方領土も今のように暗礁に乗り上げることはなかったし、中ロともうまくやれたでしょう。米国とも対等に渡り合えたはず。それより何より、菅政権になってから、『国民生活が第一』の公約はどこにいってしまったのでしょう。民主党議員はもう一度、原点に立ち返るべきです。このまま仙菅内閣を続けさせたら、日本は世界の食い物にされ、国民生活が沈んでしまう。国民は心底、民主党に愛想を尽かし、二度と政権に戻れないことを自覚すべきです」
民主党議員だって、現状認識くらいはできるだろう。直ちに小沢に詫びたらどうだ。そして、仙谷や前原、岡田みたいな口先無能の大臣や党幹部は、さっさと辞めさせるべきなのだ。それ以外、この難局を乗り切る処方箋はない。




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