政治家が率先して削減するんじゃなかったの?給与法改正案の呆れた中身

(日刊ゲンダイ 2010/11/22)

首相の給与カットたった5000円

またかよ……。菅・民主党の公約違反にはゲンナリしてしまう。
先週末(18日)、与党などの賛成多数で衆院を通過した国家公務員の給与法改正案。結局、今年度の国家公務員の平均年間給与は、人事院勧告通りの1・5%引き下げにとどまった。これじゃあ公約の「国家公務員の人件費2割削減」には程遠い。かけ声倒れもいいところだ。
改正案には「一般職」の公務員だけでなく、大臣や政務官など「特別職」の給与引き下げも盛り込んでいるが、中身をよく見ると、これがまたヒドイ代物なのだ。
例えば、総理大臣の給与は改正前の月額206万5000円から206万円に、たったの5000円減るだけ。カット率0・24%に過ぎない。こんなの誤差の範囲内だろう。痛くもなんともない。国務大臣の引き下げ額も、月額で4000円(0・27%)ぽっち。公務員の削減水準に合わせたつもりだろうが、こんな形だけの削減で国民の目をくらまそうという魂胆がこすっからい。菅内閣には、お手盛り法案に異議を唱える閣僚もいないのか。
民主党は参院選のマニフェストで「政治家、幹部職員が率先して」給与を削減すると約束していたが、〈表〉を見れば分かるように、一般職の地方機関課長など末端の人ほど下げ幅が大きいのだからアベコベだ。
9月の代表選でも「人勧を超えた削減を目指す」と勇ましいことを言っていた菅首相は、「次の通常国会で給与をさらに削減できる法案を出す予定」とか言い訳し始めている。それなら、まずは自ら身を切ってみせたらどうだ。本気で公務員の人件費に切り込む気があるのなら、閣僚の給与10%自主返納とかでお茶を濁している場合じゃないだろう。
「民間企業だって、業績が悪ければ、まず経営陣の報酬を下げるのは当たり前。菅首相は消費税増税にまで言及したのだから、国民に痛みを押し付ける前に、率先して自分の報酬を大幅カットするのがスジです。だいたい、大臣や副大臣や政務官は人事院勧告の適用範囲外だから、一般職公務員の水準に準じる必要性はまったくない。それこそ政治主導で、2割でも3割でも、自分たちで決めてカットすればいいのです」(政策研究大学院大学客員准教授・原英史氏)
“良識の府”というのなら、参議院はこんなデタラメ法案は絶対に通しちゃダメだ。

◆内閣総理大臣
改正前(月額):206万5000円
改正後(月額):206万円
引き下げ額:5000円
カット率:0.24%
◆国務大臣
改正前(月額):150万7000円
改正後(月額):150万3000円
引き下げ額:4000円
カット率:0.27%
◆副大臣
改正前(月額):144万4000円
改正後(月額):144万1000円
引き下げ額:3000円
カット率:0.21%
◆大臣政務官
改正前(月額):123万1000円
改正後(月額):122万8000円
引き下げ額:3000円
カット率:0.24%
◆事務次官
改正前(月額):142万4260円
改正後(月額):142万720円
引き下げ額:3540円
カット率:0.25%
◆局長クラス
改正前(月額):108万4420円
改正後(月額):108万2060円
引き下げ額:2360円
カット率:0.22%
◆地方機関課長(一般職)
改正前(月額):48万3000円
改正後(月額):47万6000円
引き下げ額:7000円
カット率:1.45%




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