●法相更迭前夜、首相公邸で議論紛糾2時間
(読売新聞 2010年11月22日23時12分) http://p.tl/Yk3O

 

21日夜、首相公邸には険悪な雰囲気が漂った。

 政府から菅首相、仙谷官房長官、民主党から岡田幹事長、輿石東参院議員会長ら計6人が、柳田法相(当時)を更迭すべきかどうかを協議した。しかし、議論は2時間にわたり紛糾した。

 輿石氏は「続投」を主張した。

 「野党が参院に問責決議案を出してきたって、そのままやらせればいいじゃないか。辞めさせて(2010年度)補正予算案をちゃんと通してくれる保証があるのか。それもないのに辞めさせる必要はない」

 野党と十分な腹合わせが出来ていないうちに更迭を決めれば、野党を勢いづかせるだけだ、との思いからだった。

 だが、この時点で菅首相の腹は「辞任やむなし」で固まっていたようだ。「続投」「早く辞めさせた方がいい」の両論に耳を傾けていた首相は、最後に「明朝、官邸に柳田さんを呼んで話をする」と発言し、辞任の流れが決まった。一夜明けた22日朝、首相は柳田氏を首相官邸に呼び出し、柳田氏を更迭した。

 輿石氏の予感は的中した。問責決議案を出す構えだけで法相のクビを勝ち取った自民党は、仙谷長官、馬淵国土交通相への問責決議案を提出する構えを強め、政府・与党が目指した24日の2010年度補正予算案の採決も野党の反対で先送りになった。

 苦し紛れに繰り出した「更迭カード」は不発に終わり、菅政権の苦境は続く。



●前法相辞任でも展望開けず=首相決断に異論くすぶる-民主
(時事通信 2010/11/22-23:32) http://p.tl/QzjZ


 柳田稔前法相の辞任を受けて、与野党の攻防は2010年度補正予算案の成立時期と仙谷由人官房長官らへの問責決議案の対応に焦点が移った。民主党は法相辞任と補正成立との「引き換え」を狙ったが、自民党は応ぜず、展望は開けていない。民主党内からは、法相を更迭した菅直人首相の判断に「官邸の完敗だ」(参院幹部)などと反発も広がり、首相の窮地は当分続く見通しだ。
 首相が前法相を更迭したのは、進退問題が長引けば世論の一段の離反が避けられないと判断したためだ。また、野党が前法相の問責決議案を提出、可決後に結局、辞任に追い込まれた場合、仙谷長官や馬淵澄夫国土交通相らの「辞任ドミノ」を止めきれなくなることへの強い懸念もあった。
 民主党執行部は、前法相更迭で事態の幕引きが図られ、補正予算案採決の環境が整うと期待していた。民主党は24日採決を提案したが、自民党が反対したほか公明党も同調。民主党の読みは外れた形となり、ある閣僚は「柳田氏がこのタイミングで辞めたのが結果的に良かったのか。まだ分からない」と疑問を呈した。
 首相の決断に対しては、民主党の参院側に不満がくすぶる。「参院で数が足りないことをおびえすぎている。与党なのだからうろたえるんじゃない」。補正の採決日程の確約が得られないまま「辞任カード」を切ることに反対していた輿石東参院議員会長は22日の党役員会で、こう怒りをぶちまけた。
 前法相が参院出身ということもあり、輿石氏は当初から擁護。役員会では「仲間を守る文化が乏しい。世論に迎合している」と語気を強める場面もあった。
(続)




●法相兼任の仙谷氏「閣僚で最も答弁がこなれている」と自賛!?…
(産経新聞 2010.11.22 21:12) http://p.tl/yBNz


事実上の更迭となった柳田稔前法相の後任は、仙谷由人官房長官が兼任することになった。仙谷氏は22日の記者会見で、菅直人首相の人事の理由について「まだまだ国会での質疑応答も続くのではないか。それならば、今の閣僚の中で(私が)まあまあ一番こなれがいいのではないかと(首相が)判断されたんじゃないか」と述べた。

 しかし、今国会の質疑応答で、最も答弁が「こなれていない」のは、ほかならぬ仙谷氏だと言わざるを得ない。

 「この新聞記事は本当かどうかなんていう国会質問は聞いたことがない。最も拙劣な質問方法だ」

 「(政府参考人のキャリア官僚に)上司として話すが彼の将来を傷つける」

 「あの辺から望遠レンズで盗撮されたようだ」

 「暴力装置でもある自衛隊」

 いずれも今国会での仙谷氏の答弁だ。仙谷氏が委員会で発言を撤回し、謝罪するシーンはもはや珍しくなくなった。

「2つの答弁」で国会を乗り切ろうとした柳田氏は論外だが、多種多様な失言を繰り返す仙谷氏も野党が問責決議案のターゲットにしている。

 22日の参院予算委では、自民党の丸川珠代氏が、「柳田氏の資質に問題はない」としてきた仙谷氏の答弁を念頭に、こう追及した。

 「柳田氏の暴言は問題ないという立場を引き継いで(仙谷氏が)法相になるということは、まじめに答弁しなくていいと言っているのと同じ。問責に値する」

 これに対し首相は「なぜ任命したばかりの仙谷さんも、私が罷免しなくちゃいけないのか」と擁護した。

 「この20年近い間、実は法務関係は一回も触れたことはない」と話した柳田氏よりは、弁護士資格を持つ仙谷氏のほうが法相の任には堪えうるだろう。

 だが、国会軽視発言が事実上の更迭の引き金になった柳田氏の後任に、今の閣僚で最も失言率の高い仙谷氏を充てるのというのは、これこそ国会軽視も甚だしいのではないか。(船津寛)