改革案が骨抜きにされた改正放送法
(日刊ゲンダイ2010/12/1)
メディアの高笑いが聞こえる

◆電波オークションもどうなるか
メディアの高笑いが聞こえそうだ。先月26日の参院本会議で成立した改正放送法。特定資本が新聞、テレビなど複数メディアを持つ「クロスオーナーシップ規制」などの“改革案”がごっそり削除され、逆にメディアの権力を強化する法律に衣替えしていたのである。
原口前総務相は1月の会見で、同じ資本が新聞、テレビを支配している現状について「言論の多様性から見て問題。分科会で議論する」と発言。「クロスオーナーシップ規制」は、改正法の目玉となるハズだった。それがなぜかきれいサッパリ削られてしまったのだ。
「3月に改正案に盛り込まれる方針が打ち出されると、大新聞テレビは戦々恐々となり、直後から、鳩山前首相に対する“集団イジメ報道”が始まった。既得権益を守るには『倒閣だ』と考えたのでしょう。その後も水面下で野党議員をけしかけ、法案から外すよう運動を繰り広げたとみられます」(経済ジャーナリスト)
で、あえなく「クロスオーナーシップ」規制の文言は削除。しかも、チャッカリと権益強化に動いていたのである。
「改正法では、複数の放送局に対する出資比率の上限が『5分の1未満』から『3分の1未満』に緩和され、地デジ対応や広告減でヘロヘロの地方局をキー局が救済できるようになった。これだと同一資本の依存度が今以上に強まるのは確実。クロスオーナーシップは、規制どころか強化されたのです」(前出のジャーナリスト)
この調子だと、9月に閣議決定された「電波オークション」だってどうなるか分からない。
「『電波オークション』は、タダ同然で電波を使っているテレビなどが猛反発。総務省の検討会でも反対意見ばかりクローズアップされて潰される寸前だったが、当時の原口総務相が閣議決定にねじ込みました。来年度から携帯電話の周波数をめぐり導入される予定ですが、テレビでもやるのか不明です」(放送界事情通)
電波オークションの導入を求めてきた阪大名誉教授の鬼木甫氏が言う。
「せっかく前進した情報通信の改革案が後退した感は否めません。21世紀の経済の牽引役になる情報通信分野で、総務官僚やメディアの既得権益化が続けば、新規産業は育たず、国民も不幸になるだけです」
権益まみれのメディアを改革しない限り、この国の将来はないのだ。



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